ep94 竜王戦 其の三
あー、マジか。思いのほかあっさりと死んだ。まあ蘇生できるんだけどさ……「再生の命石」これか。使用……と。
瞬間、ポリゴン片になり散りかけていたアバターが急速に形を取り戻していく。少なくとも、私の手元には一つしかない蘇生アイテム。正直、こんなところで使うはずではなかった………というか、さっき使われるまで存在を忘れていた。まあ、ともかく第二ラウンドである。
「「龍化」「竜化」ユーケイ、「STR」だ」
一度デスしてしまったためか、「憤怒」の効果は切れてしまっているようだが、まあいい。さてさて、油断していた………とは違うな。何か信念や戦う理由………も別にないな。違う違う。自分に素直になろう。そう、冷静に相手に敬意を払おう。というか、この感じで負けたら恥ずかしいよな、私。ともあれ、さあ─
「第二ラウンドだねぇ!!」
「ど、ドラゴンッ!?」
「はぁぁッ!?!?!」
「第二形態とかラスボスかよッ!?!?」
そのまま、巨体とSTRを活用しプレイヤーがまとまっている場所めがけて突進する。聖剣使いと片手剣使いを含む何人かのプレイヤーが吹き飛び、そのままポリゴン片になるものもいる。いつの間にかリュティと奴隷の姿が見えなくなっているが、敵集団の人数もだいぶ減ってきた。最初に比べると半分以下であることは間違いない。「竜化」の効果で体力が継続的に減少し、「龍化」の効果でMPもどんどん減っていくが、これが尽きる前に殲滅して見せよう。
「はっははぁ!このまま皆殺しだねぇ!!?」
※
今回、竜系のボスモンスターと戦闘するために、【聖女たんを愛でる会】という組織に所属している妹好というプレイヤーはアルタ大陸の森林奥まで来ていた。一応作戦は先ほどハニョリから聞いたが、参加は自由とのこと。まあ、特に断る理由もないので妹好も作戦に参加し、ついでにドロップアイテムの一つでも取得できればうれしいな、くらいのテンションであったが……そこで妹好は、怨敵と邂逅する。
聖女たんを殺した極悪人。見間違うこともないその凶悪なロリっ子に飛び掛かりたい衝動を必死に抑え、討伐メンバーの輪から外れ、【聖女たんを愛でる会】のメンバーに連絡を取る。なにも復讐を果たしたいのは俺だけではない。故に、すぐに集合されたし、アルタ大陸の同志諸君。
ちなみに、【聖女たんを愛でる会】はギルドではない。心が通じたときに自然と入会している愛と友情の組織である。
メッセージを飛ばすと、3人の同志たちはすぐに到着してくれた。だが、そうしている間にも戦況は動く。怨敵が死を迎えてしまったのだ。復習が果たせないのではと肝を冷やしたが、大きなドラゴンのような姿になって甦ってくれた。これは嬉しい誤算である。正直、あのロリ形態では攻撃しにくい、むしろかわいい、捕まえたいというメンバーが一定数いるのだ。
「さあ、往こうか」
「「「おう!!!!!」」」
ドラゴン形態の怨敵に吹き飛ばされていくプレイヤーを見ながら、妹好は怨敵に狙いを定め、スキルを構える。聖女たんを失い、復讐の炎に燃えた妹好は激しい修行と愛の先に、神聖武器「神剣ゲイド・デレ」と───ユニークスキルを獲得していた。
「嫉妬」
「よし、準備オッケーだ。よろしく頼む、激辛」
「了解」
激辛トランプにバフをかけてもらうと、神剣を構える。他の三人──激辛トランプ、緑のコパス、七と三分の八の三人も武器を構える。突撃の構えだ。
「では!!」
「同志たちよ!!」
「ヴァルハラで!!」
「会おう!!」
全力で地面を蹴る。凄まじい速度だ。俺のユニークスキル「嫉妬」は、指定した1キャラのステータスを1つ真似する。今回はAGIを指定し、その上から激辛のバフをかけたため、少なくともAGIだけで見ればこのドラゴンを超えている。チラと、生存しているプレイヤーを確認する。どうやら聖剣使いのカイトはデスしてしまったようだ。さっきの突撃に巻き込まれたのだろうか。かわいそうだが、これに関してはラッキーだ。聖剣が近くにないことにより、神剣の力をより引き出せる。
「神剣よッ!!!」
力強く振り下ろした神剣が輝き、斬撃が煌めき、飛翔する。




