ep92 竜王戦 其の一
実家での激戦を終え、Cko内のいつものグループでメッセージを送ったあと私が訪れたのはニウゴマカのリーシャさんのところであった。
「…………それ、本気で言ってるんですか?いえ、本気だとしてもいったいあなたに何の得が?」
薄っすら光るエルフは首をかしげ、私の発言に困惑をあらわにする。
「得ならあるさ、どちらにもね。君としても、プレイヤー……というか、外の人たち全員を敵に回す気はないんだろう?私を共通の悪に仕立て上げれば、民の溜飲も下がると思うんだけど」
「そんなにうまくいきますか?」
「まあ、いかなかったとしても試してみるのに損はないでしょう?強いて言うならあなたが少し動かないといけないくらい?」
「そうですが……はぁ、まあいいでしょう。わかりました」
「ありがとう、じゃあよろしくね」
未だ納得しきれていない様子のリーシャさんを置いて、さっさと城を出る。ここからは準備のフェーズだ。
※
その日、アルタ大陸を探索中のあるプレイヤーがエルフの王、リーシャとの邂逅に成功し、依頼を受ける。
曰く、今エルフの街たるニウゴマカの民は外のものに対し非友好的である場合が多い。その最たる理由は、最近近くにやってきた竜人であるとのこと、故にそいつを退治できればエルフとの仲は改善できる……らしい。決戦は15日後、ニウゴマカの近くの森の中にある祭場跡地であるということだ。この話はCkoトッププレイヤーの中で瞬く間に広がり、エルフの王いわくそれなりに強大な相手であるということなので、掲示板で情報を受け取り、アルタ大陸の祭場跡地まで到達できるほどのプレイヤーが合計52名、当日その場に現れた。
「さて、行こうか」
リュティ、奴隷、フカセツさんの三人に声をかける。これからは始まるのは特に深い意味も意義ももたない、私の自己満足のための戦い。ただ単純に他のプレイヤー……それもトッププレイヤー相手に喧嘩を売ってみたかったからというだけで始まる戦いだ。クエストか何かのボス戦のつもりで来るであろう、リーシャさんの情報をもとに集まったプレイヤーはそもそもこの戦いに付き合ってくれるのかもあやしい。それでも、ふと自分の力を試したくなってしまったから仕方がないのだ。やりたくなったからやるのである。
「うん」
「本当に…………やるのですね」
「腕が鳴りますな!」
三者三様の返事を受けて、私は最後の確認をとる。
「嫌なら今だよ?特にフカセツさんとか、他のプレイヤーと関係を悪化させる可能性が大だけど大丈夫?」
唯一の懸念点であるフカセツさんに最後の確認をとる。
「ええ、大丈夫ですよ。もうせっかくなので、普段のゲームでは行わないようなプレイスタイルを通してみようかと」
「そう、じゃあ…………そうだね、楽しもう……いや、違うか、ボコボコにしようね!!」
やがて、指定した時間になり祭場にある程度人が集まっていることを確認すると、その集団に近づき「隠密」を解除する。私に続いてリュティと奴隷も姿を現す。
「やあ、皆さんこんにちは」
「……!?」
「なっ!?」
「お前は……」
近くにいたプレイヤーが様々な反応をする中で、私は少し大きな声で続ける。
「まあ……なんだ、君たちにとっては急……というか予想外だろうけど、やろうか」
混乱を全面に出しているプレイヤー達の一人に近付いて、切りかかる───が、ガキィンッと甲高い音とともに防がれる。
「……ふむ」
適当に振った攻撃とはいえ、不意打ちのようなものだし当たると思ったんだけど。そう簡単にはいかないらしい。
というか、こいつはあの時の聖剣使いじゃないか。剣と顔のセットでようやく思い出せた。常に剣を掲げていてくれないとわかんないな、これ。
「切り替えるぞ!敵は聖女殺しのPKだ!当初の目的とは違うがチャンスだ!みんな作戦通りに!!」
急に別のところからそんな叫び声が聞こえると同時に約50名のプレイヤーのうち、大多数のプレイヤーが動き、若干フォーメーションが変わっ…………ん?後ろの方に複数の後衛っぽい装備を着たプレイヤーが集まっていくのはわかるのだが、数人があからさまに距離をおいた。そういう作戦か、それとも仲間外れか……。
奴隷やリュティが睨みつけている人もいるけど知り合いかな?
「まあ、、とりあえず後衛を潰すのが基本かな」
「させるかッ!!」
「するんだよ」
私を軽く囲むように数人のプレイヤーが展開するが、正直そんなものは関係ない。「憤怒」を発動し飛び越えると、後衛職集団の中心に降り立つ。
「マジかよ……」
そんなことを呟いた男にナイフをくりだす。流石に後衛に「憤怒」込みの攻撃は対処しきれなかったようで、あっさり首に突き刺さり、男はポリゴン片となった。
「さあ、どんどんいこう」




