ep91 やりたいことは気分で、ノリと勢いを添えて
「それで……どうするの?アヤ」
「どう……ねぇ」
竜神討伐のアナウンスが流れた次の日、私はリュティとレベリング兼雑談に誘われたのだがそこでそんな風に切り出された。
「白神は正直情報が無さ過ぎてどうとも言えないんだよね。あのカウントダウンで何か起こるのは確かなんだろうけど、なんとも。ゲーム的に解釈するなら、あのカウントダウンがゼロになり次第全プレイヤーを巻き込んだ白神討伐イベントとかが発生するとか?」
「むぅ……そっか」
最近は、より仲良くなったからなのか、この子のコミュニケーション能力が向上したのか、別人のように割と色々話してくれるようになったのだが、このような態度を見ていると以前と変わらない部分もあるのだと思う。
そこからまたしばらく軽く話しながら黙々とモンスターを狩り、再びリュティから話題が振られる。
「そういえば、最近リア友がこのゲーム始めたんだけどさ、アヤはそういうの無いの?友達がー、とか」
リアルの話題が飛んできた。というか、リュティ友達いたのか。私はいないのに…………まさかこの類の分野でリュティに敗北感を覚えるときが来るとは……。
「あー、友達ねぇ。あんまりいないんだよね、リアルに仲いい人。家族とも上手くいってないし」
ここまで口に出して、言わなくていいことまで言ってしまったと若干の後悔を覚えた。
「そうなんだ?アヤはそういう面倒な事、全部破壊すると思ってた」
「いやいや、私をなんだと思ってるの?さすがに現実とゲームじゃ話も変わってくるでしょ」
どうやら、リュティの目に私はかなり頭のおかしい女のように映っていたようだ。まったくもって心外である。
「そうなの?そんなに違う?」
「え?いや、そりゃあ…………」
そこまで言って、ふと思う。これはもしかして、すごく深いことを聞かれているのではないだろうか。ゲームと現実は違う。そのはずだ、しかし今の時代においては………こと人間関係においてはその限りではないのではないだろうか、という問いなのか?
「…………ねえ、アヤ。なんだかすごく考えているようだけど───」
「……なるほど、それもそうか」
「え?」
「ごめんリュティ、ちょっと落ちるね」
うん、そうだね。私は私の好きにやろう。なんだか、ひどくむずかしく考えていた気がするし、逆に急に考えが飛躍した気もするが、そんなことは今私の頭に浮かんだ案の前には些事だ。実行してから考えるとしよう。
※
「え、えぇ……ログアウトはや…………」
さっさとログアウトしてしまったアヤのいた方向を眺めながら、私はとんでもないことをしちゃったんじゃないかと若干の後悔が襲ってきた。
おそらく、さっきの質問が原因なんだろうけど、急に何か思い立ったような顔でログアウトしたアヤは、何かを思いついたような、何かに気が付いたような、吹っ切れたような……?
今までの会話的にどうやらアヤが大学生らしいことはわかってるけど。
「まさか、大学破壊……とかしないよね??」
もしそうなれば普通に犯罪だ。
いやいや、流石にそんなことはしないだろう。アヤは普通に常識のある人だし、そのあたりの分別はついているはずだ。
そもそも、あんな質問一つでそんな……。
「でも………」
あの顔……ちょっと怖くなってきたんだけど。まさかこれ、犯罪教唆とか………ならないよね?
※
紋は準備もそこそこに居心地のいい我が家を飛び出し、自らの実家である纐纈家に来ていた。こういうのは衝動と勢いが大事な気がする。そして、これによって変化するものが必ずある。それがいい変化か、悪い変化かはわからないし、私に公開と自己嫌悪を植え付けるだけかもしれないけど。
「え?」
「ちょっと…」
急に帰ってきて、挨拶もせずにどかどかと廊下を進む私に何人かが声をかけるが、勢いのままに進み、やがて一人の男の前につく。
「師範……いや、父さん。ちょっと喧嘩しようか」




