ep88 呪神戦 其の三
美しいエルフの都市ニウゴマカ、その清廉な街中で悲鳴と破壊音が鳴り響く。
「な…………ま、まずい、まずいぞフカセツさん!?」
「え、ええ。これは………」
「これは随分な体たらくですね」
ふいに背後から声がかかる。
「それとも、やはり私たちを滅ぼそうとしているのでしょうか」
振り返ると武装した集団とリーシャさん。
「いや、申し訳ないね。最善を尽くして……いや最善ではなかったにしてもかなり頑張りはしたんだけど」
若干以上に棘のある言葉に気持ち程度の反論をし、構える。
「それで、もしかしなくても私たちの失敗の尻拭いを手伝ってくれるのかな」
※
《四大特異点「呪神」を討伐しました》
《白神は微睡みの中にいます》
『レベルが上昇しました Lv.125→129』
「つ、疲れた……」
さて、無事に呪神を…………いや、無事ではないな一度死んだし。そして何より、半壊した街と少なくない犠牲がエルフ側から出ている。一部のNPCたちが目線でこちらを責め立ててくるのが伝わってくる。彼らはリーシャさんと一緒にいた騎士的な人たちかな。
「さて、話しをしようか」
「ええ」
リーシャさんに向き直る。
「まあまず前提の話だけど、今回この街に被害が出たのは私たちのミスだ。予想外のこととはいえ、申し訳ない」
「ええ、まあ。そうですね、呪神討伐のはあなた達の助力が不可欠だった事実もあります。後ほど騎士たちにもきちんと言って聞かせましょう」
「なぜですか!この異邦人たちのせいで、俺たちはッ!!」
私がリーシャさんと話していると、そんな風に横から怒鳴られる。残念ながら知らない人だ。
「呪神討伐のための必要な犠牲であったと割り切りなさい」
「まあ、重ねて言うが申し訳なかったよ。じゃあ」
なんとなくこの空気にいたたまれなくなってその場を後にすると、今度はフカセツさんに声をかけられる。
「アヤさん、今回の戦いどう思いますか?」
「ふむ、どうって難しい聞き方をするね。それは呪神の設定的なものに対して?それともまさか、この被害に対して?」
「両方聞いてもいいですか?」
…………ふむ、少し真面目な顔でそんな風に答えるフカセツさんに少々驚く。絶対前者だけを聞いていると思ったのだが。
「そうだね、まず後者についてだけど、まあよくやった方だと思うよ。エルフの最終進化段階かなんかであろうリーシャさんが想像以上に強かった。それは呪神が三度目の変化の際に魔法を使いだしたことからも明らかだね。私的には、街中でアレと戦ったにしてはかなり頑張った方だと思うね」
「…………いえ、そうではなく」
私が意見を述べてみると、どうも不服そうな顔のフカセツさん。まあ、うすうす何を聞かれてるかは察していたけど。
「精神の方ならあいにく特に何も思ってないね。人間と大差ないレベルの受け答えができると言っても所詮NPCだし、まあ仲のいいNPCでもいたならまだしも、今回は他人だからね。…………どう?」
満足したかと問いかけると、フカセツさんは少し笑って、そうですかとだけ返した。
「で、呪神関連のことだけど、あいにくこっちはさっぱりだ。鬼神と戦った大陸でも聞かなかったね私は。というか、これに関しては多分フカセツさんの方が詳しいでしょ。クラニィだっけ?さっきも言ったけど、その名前に聞き覚えすらなかったからね」
「そう……ですよね。ありがとうございます」
よかった、どうやらこの答えで納得してくれたようだ。
「さて、じゃあ私は──」
引き続きこの大陸の探索を、と言おうとした瞬間一つのアナウンスが鳴り響く。
《四大特異点「竜神」を討伐しました》
《賛美しましょう。白神は目覚めようとしています》(19:23:59:59)
「なっ……」
「…………は?」




