ep87 呪神戦 其の二
「えと、倒し………たか?」
目の前には体の一部が消し飛んだ呪神。
「これは………」
体の半分が消し飛んだ呪神に若干の警戒を向けながらフカセツさんに意見をあおごうとすると、傷口……傷口?削れた部分からボコボコッと呪神の体が盛り上がる。
「え、なに………きもっ」
そのボコボコはやがて呪神の全身を包み込み。
「………ドラゴン?」
「ドラゴン、ですね。いえ、というよりこれは…………アヤさん」
「は?」
急に悪口を言われた。私のどこがあのドロドロだというのか、まったくもって失礼な話ではないか。
「いえ、あの…………形といいますか、なんといいますか」
「かたちぃ?」
妙なことを言い出すフカセツさんを怪訝に思ってもう一度、自分の姿を踏まえて見てみると。
「ああ、なるほど」
その姿………というかシルエットは、未だ自分でその全貌を見れたわけではないにしても「龍化」した私の姿ですよーといわれても納得できないでもない。となると
「撃破要因の模倣が呪神の能力……ってこと?」
「まだわかりませんが、その可能性もあるかと」
「なるほ……どッ!」
そんな話をしているとこちらに突っ込んでくる呪神。先ほどとは違い翼をはためかせ、少し浮かび上がりながらの突進だがこの体格を生かすことにし、少し気合を入れて受け止めてみることにした。
「っぐ…………ふ、んッ……!!!」
勢いを殺しきれずに少し後ろに押されこそしたが、意外と受け止められた。この形態は想像以上に強いかも───
「ッ!?やっ、ばい!」
「アヤさんッ!」
ちらっと視界の端に移ったHPゲージがゴリゴリと削れているのを見て、理由を理解する前にとりあえず全力でその場を飛びのき、一応「龍化」を解除しておく。
「呪いデバフ…………スタック30!?」
やばいやばい、体力の減少が止まらない。「龍化」を解除しても止まらないということは呪神由来の、この呪いのデバフの効果なのだろう。そしておそらくその効果は重ね掛けされる。とりあえず回復を。
「ッチ……」
回復を中断し、呪神の追撃をなんとか躱しながら隙を伺う。
それにしてもまずい。もう体力が一割を切った。これどうやれば止まるんだ。さっきからフカセツさんが回復の呪文をかけてくれるが間に合っていない。
「マズッ……」
やがてその巨体による攻撃を完全には避けきれず、カス当たりを許してしまい私のわずかな体力をあっけなく全損させた。
「はあ、クソ。そういう感じか」
エルフの町でリスポーンし、先ほど得た情報を脳内でまとめながら町の出口に向かう。
まず、厄介なのはスタックするあの呪いデバフ。気がついたらすごいことになっていたが、条件は何だろう。接触か……?戦闘中は無条件にデバフとかならすごくめんどくさいんだが…………いや、本体性能はそこまで高くないようだったから、むしろデバフの攻略がメインという線も十分考えられるか。
そして次にあの変化だ。私とフカセツさんの予想では、ある程度のダメージを与えるとそれに対応した変化をするというものだったけど、その場合討伐条件はなんだろう。ある程度の回数変形させればいいとか?変形中に何か特殊なアクションをするとか?
「アヤさん」
と、そこで声をかけられる。目を向けると……まあ、声からしてわかっていたんだがフカセツさんだった。
「フカセツさんもやられたのか」
「なすすべなくボコボコにされましたね」
「ははは、まあ仕方ないよ。さて、じゃあ作戦を立てようか」
「ええ、そうですね。ひとまずあのデバフについてですが───」
ドゴォン、と凄まじい破壊音が鳴り響きフカセツさんのセリフを遮る。
「うわっ、びっくりした。急になん………の……え?」
私は呪神対策を考えるために軽く歩きながら町の出口に向かっていた。そして、私がデスしたすぐ後にデスしたであろうフカセツさんがそんな私を追いかけ、合流したこの場所は町の出口からはまだ少し離れている。いや、仮にここが町の出口だとしてもあり得ない。なぜ…………いや、このゲームの特性を少し考えれば決してあり得ないことはなく、私の考えが及ばなかっただけであることは自明なのだが。しかし言わずにはいられない。
「なんで………呪神がここにいる…?」




