ep85 海釣り??
さて、やってきたのはエルフの都市ニウゴマカから少し離れた森の奥にある呪神封印の地。そこは地面が少しくぼんでいるというか、闘技場みたいというか、あれだ、古代ローマのコロッセオの、観客席が無いバージョンだ。森の中に急に円形にくぼんだ土地が現れる感じ。その中心に何やら大きな棒………いや、杖か?まあ、そんな感じのものが刺さっていて、あれが封印になっているらしい。
「じゃあ、行こうか」
一応隣にいるフカセツさんに確認を取る。
「まあ、もう、いいですけど……………どうしてまた、こんなに急いでるんです?」
「急ぐ?別に急いでるつもりはなかったけど………ふむ。たしかにそう見えるかも。いやなに、ゲーマーとしてこういうのは普通に楽しみじゃないかい?おそらく私たちが初めてだよ?とりあえず挑んでみたくない??」
「人によると思いますけど…………なるほど、確かにそうかもですね」
「でしょ?」
「ですが………準備する時間くらいは欲しかったです。ポーションも最低限しか持っていませんし……」
「…………ポーション」
ああ、そういえばあったなポーション。ろくに手に入れる機会がないものだからうっかり忘れていた。最後に使ったのはいつだったか…………。
「なんですかその、ポーションという単語を初めて聞いた人みたいな反応は」
「ま、まあいいでしょ。最悪死んだとしてもリスポーン…………あれ?私たちって死んだらどこでリスポーンするっけ?」
「あ…………ええと、恐らく私はこの大陸に来た時の船でのリスポーンになると思います」
「…………ふぅ」
そのフカセツさんの言葉に、正確にはその数秒前からうすうす頭によぎっていた考えに、一つ息をつきたっぷり数秒溜めた後。
「よし!一度あのエルフの町…………名前なんだっけ?ゴマニ………ゴマなんとか?に戻ろうか!」
すごく合理的かつ状況を踏まえたうえでの素晴らしい判断を下した。
「…………了解です。あと、ニウゴマカです。」
※
中央大陸の西側に位置する海域にて、プレイヤーネーム無限の性癖、最近は奴隷と呼ばれることの多くなってしまっている彼は眠れる神を発見しようとしていた。
元をたどるのであれば、彼が釣り好きをウリにしているとあるバーチャルアイドルを見始めたことだろう。彼は元来影響を受けやすく、今回もそのアイドルに影響され釣りを始めようと思ったが、いきなり始めるのは難易度が少し高いということでこのゲーム内で少し触ってみた訳であるが、そんな彼が選んだ釣りの形態とは船釣りであった。ちなみに、アヤらには誤解されていることであるが彼はロリが好きなのではなく、ロリ「も」好きなのであり、そのプレイヤーネームが示すようにその性癖は多岐にわたる。実際、今回影響を受けたバーチャルアイドルはお姉さんキャラをウリにしている。
さて、行動力があるのかないのか、川釣りがメインである例のアイドルのどこでどう影響を受けたのかわからないが、なんと彼は制作スキルを伸ばし、なんとか、人が三人も乗れば窮屈そうな小舟を作成すると意気揚々と海へ漕ぎだし釣りを開始した。しかしすぐに集中力が途切れ、素潜りをして直接魚を捕まえようとした彼は、想像よりも強い海中のモンスターから時に逃走し、何とか数匹撃破しながら謎の海中神殿に到達した。好奇心からそれに近付いた彼に出てきたウインドウは。
『竜神サーガラの神殿に近付きました。竜神を目覚めさせますか?』
その文字を読み、驚きに目を見開いたところで彼は死亡した。溺死である。
大陸最西端の町、船を出した町であるズィーベンの宿屋にてリスポーンした彼は先ほど見たウインドウの文字をよく反芻し、かみ砕き……………切れずに一言。
「は?竜人??」




