ep79 始めて(笑)の新大陸
第二回イベントが終わったが、アヤのやることは変わらない。レベル上げ兼ルド大陸の探索だ。鬼神やドゥルグ村のためにこの大陸に渡ったわけなのだが、この大陸深部の敵はなかなか強くていいレベル上げになる。大陸の港周辺こそそこそこのモンスターばかりだったのだが、鬼神の祠よりも奥に進んだあたりからモンスターの強さが油断できないものになっていた。
『レベルが上昇しました Lv.123→124』
「よし」
正直、少し前から「竜化」とユーケイをふんだんに使ってなんとか倒せるレベルのモンスターばかりなのだが、故にレベルもサクサク上がる。そんな時、ピロンと通知の音が鳴った。
「ん?これは………」
見ると、フカセツさんからのメッセージ。内容は、ついに他プレイヤーが造船に成功し、アルタ大陸に渡ろうとしているとのこと。
「ほほぅ」
これは面白いことになってきた。正直、アルタ大陸に関しては情報が一切と言っていいほどない未知の領域だ。もちろん、手を出さないなんて選択肢は無いのだが……………さて、どうしようか。
※
プレイヤークラン「自警団」、その拠点にして本部と銘打った施設にある一室。壁に秋月の大剣がシンボルとしてかかっているその部屋にて、クランリーダー、グズゴズメズはクランメンバーと会議を行っていた。
「さて、皆今日は集まってくれてありがとう」
「いいぜ」
「新大陸の話か?」
口々にそんなこと言う仲間たちを軽く制し、続きを話す。
「ああ、まさしくその新大陸のことだ。俺たちはこの自警団を設立し、PKを取り締まるべく活動を行ってきた。だが、いかんせんまだ設立から日が浅く、所属プレイヤーもやっと30人に届く程度。新大陸どころか、この大陸のPKすらまともに取り締まれていない。故に、ひとまず目標を初心者救済のみに絞り、ツヴァイの町のこの本部を作ったわけなのだが………」
確認のため、現状を一通り口に出すと、少し息を吸い込み今回の議題を発表する。
「───幹部を含む数人でアルタ大陸に渡ってほしいと思う」
「…………ほう」
「人が足りない話を今しなかったか?」
「楽しそうではあるが………」
当然の疑問が投げかけられるが、グズゴズメズがそれに答えていく。
「まあ、当然人は足りん。だが、新大陸が解放されればそこがこのゲームの最前線だ。それに食らいつき、情報も戦力も手に入れたい。もちろん、新大陸に渡れるのはごく一部だ。船の乗客には限りがあるしな。というか、もうその乗客の枠を3人分ほど確保しているんだ」
「ま、マジか……」
「もうチケットとってんのかよ、行く気満々じゃねぇか」
「そう、行く気満々なんだ。ということで、今日はその3人を決めようと思う……………とりあえず挙手でもしてみるか?いきたい奴は手をあげてみてくれ……………多いな、よしくじ引きにしよう」
そう問いを投げた瞬間、部屋に集まった19人の内、10人ほどが手をあげたことで挙手で決まらないことを悟り、すぐさま別の方法を提案する。
「さて、じゃあ順番に引いていくぞ」
※
リュティはノインの町からツヴァイの町へ向かう道すがら、アヤから貰った神刀ヤシオリの試し切りをしてた。
「これ、つよぉ」
自らの意思で自由にサイズを変化させることができる刀。まあ、自由にといっても最小サイズと最大サイズは決まっているようだけど、それでもかなり自由度の高いそれはサイズによって質量も変化するようで、振る瞬間巨大にするだけでもかなりの破壊力だ。
「さて、どうやって皆殺しにしよう?」
このゲームでは基本的に死んでも武器や防具がロストすることは無い。前回秋月の大剣をドロップしたのは、積もり積もったPKによるペナルティだろう。ならば、今の私が仮に誰かにキルされてもこの武器が落ちることはまず無い。というか、フカセツいわく神聖武器はドロップしないらしいし。
とはいえ、そう何度もキルされるのは面白くないよね。というわけで、できれば一度も死なずに奴らを蹂躙したいけど………どうしよ?正直正面から行っても………ううん。
「いや、せっかくだし雑に奇襲でもかけてみようかな」
ゲームだしね!!




