ep75 「自警団」
「…………こい。全員潰してやる」
大剣を構える。迫りくる5人の軽戦士を見ると、たまたま1人と目があった。
「よし、おまえだ」
一旦勝利を頭から外す。とりあえず全力で嫌がらせをするためにこいつを集中狙いして全力で殺す。理由はたまたま目が合ったから、だ。狙いを悟られないように全体を見ながらどっしり構える。そんな私に5人がぶつかる直前、大剣の切っ先を自身の正面に向け、狙いをつけていた人族の男のアバターめがけて突進する。もちろん他のプレイヤーに剣で切り裂かれ、突かれるがそれはいったん無視だ。ゴリゴリ削れる体力を無視しながら自分を一本の大剣に見立てて突撃する。狙われた男は私の予想外の行動に驚き、目を見開く。そのせいで一瞬遅れた男の行動の隙をつき、私の大剣が男の体に突き刺さった。
しかし、まだ殺せていない。私が大剣を突き刺した男が手に持ったナイフを振り上げる。でももうそんなことどうでもいい。男が突き刺さったまま大剣を振り、一番近くにいたこれまた人間の男のプレイヤーめがけて振り抜く。
「ふ……んっ」
「マジかよ!!」
大剣を直撃させたプレイヤーが吹き飛び、さっきまで大剣に刺さっていたプレイヤーが体力を全損させポリゴン片となって砕け散る。きらきらと宙を舞うきれいな破片を見ながら追撃すべく足に力を入れると。
ドスッ、と音がする。
次いでドスドスと鈍い音。
「あっ、ぐ…………はっ」
背中にジーンと不快感が広がる。ゲーム故にマイルドになっている痛みの感覚だ。後ろから刺された。つい先ほど吹き飛ばしたプレイヤーがむくりと起き上がり、こちらに向かってくる。
振り向きざまに大剣を振ろうとするが、ドスドスと追加の衝撃。
ああ、もうさいあく。死んだじゃんこれ。視界の端でどんどん減ってくHPが止まらない。まだ一人しか倒せてない。なんでこんな…………クソ。
リスポーンしますか?
はい
→いいえ
ゲームを終了します。
※
「よしっ!!」
「ナイス!」
「さすが!!」
「いや、一時はどうなることかと思ったけどな!!」
ノインの町やその周辺のダンジョン、「最果ての塔」でPK行為を繰り返していた悪質な大剣の少女アバターのプレイヤーを討伐し、討伐メンバーたちは口々に喜びやお互いの健闘を称えあう。
「おい、見てみろよ!ドロップアイテム凄いぞ!!」
一人のプレイヤーの発言で、みんなが少女のドロップアイテムを吟味する。魔物の素材からいくらかのお金、回復アイテムなどあるが一番目を引くのはやはり。
「これは……彼女が使っていた大剣か」
彼女の装備品である大剣だ。
「こんな大量にアイテムが落ちるのなんて見たことないぜ!」
「普通、武器はまず落ちないはずだか、それだけPKを重ねていたんじゃない?」
仲間たちがそんな風に言っているが、恐らくこれが事実だろう。そう納得できるほどには彼女は我々にとって恐ろしい相手だった。
「なあ、おまえら少しいいか?」
今回、このメンバーを集めた俺────プレイヤーネーム「グズゴズメズ」はみんなに一つの提案をする。
「俺たちで、クランを作らないか?」
「ん?」
「クラン?」
急な提案にメンバーたちは疑問の声を上げ、俺は説明を続ける。
「ああ。今回、みんなで協力して悪質なPKを討伐できたわけだが、このゲームの自由度からいってPKはまだまだいるだろう。だから、PKを狩るクランを作りたいと思ってな。どうだ?一緒にやらないか?」
「なるほどねー」
「俺はいいぜ!」
「私はパスかなー」
そんなことを口々に言うメンバー。最終的に俺を含み6人のプレイヤーがクランのメンバーになることになった。
「これからメンバーはどんどん増やそう。俺たちがこの世界の秩序を保つんだ」
「うへ、秩序って大げさだねぇ」
「それで、リーダー。このクラン名は?」
そう問われ、俺は答える。
「正直、ネーミングセンスなんてものはないから、そのままだが───「自警団」、とする!!」




