ep74 PKKK
「ここで君をキルする」
そんなことを言っているプレイヤー集団に囲まれた。いや、その中の数人には見覚えがある。私が以前キルしたプレイヤー。ということは、復讐とかそんなところかな。
「…………誰?」
一応名前を聞いておくために、周りのプレイヤー達に声をかける。ざっと数えた感じ、プレイヤーは8人。うち近接職らしきものが5人、魔法系の職業らしいものが3人。どこかに隠れてたりしない限りこれで全員だと思うが、こいつらは全員で私を待っていたのか?だとしたらすごく暇な人たちだ。
「名乗る必要はない」
そういって全員が武器を構える。まったく、女子高生を取り囲んで物騒なことだ。
「そう、でも残念ながらキルされてあげるのは難しいかな」
真面目な話、私はPKをし過ぎているためデスペナルティがちょっと怖い。だからここでこいつらにキルされるのは極力…………というかなんとしても避けなきゃいけない。
大剣を構え、集中する。相手の方が人数が多く、周りを囲まれている以上このままでは不利だ。その上魔法職らしき3人が魔法の準備のようなものを初めた。ならばどうするか。
大剣の切っ先を正面に向け、強く踏み込んで突撃する。多少のダメージは許容して、とりあえずはこの包囲を抜けなければ。私はアヤほど強くないから、このままではかなり面倒。
「ふんっ!」
全力で地面を蹴って包囲を抜ける。ラッキーなことに、包囲していたプレイヤー達にすれ違いざま攻撃されることは無く、ノーダメージで抜けられた。ここまでくると簡単かも?
魔法の準備をしている魔法職が気になるけど、多少の攻撃なら大剣の腹で受けて防げる。
くるりと身をひるがえし、さっきまで私を囲んでいた8人を見る。魔法の準備が終わったのか、杖を振りかざす3人の魔法職。避けようか、防ごうか。そこまで考えたところで、近接職の5人が皆軽装備であることに気付く。重戦士のようなナリのプレイヤーが一人もいない。
これは……………そういうコンセプトのパーティーなのだろうか、あれかな?もしかして魔法でけん制しながら距離を詰めて戦う的な。いや、たまたま私に恨みを持ったプレイヤーを集めたらこんな感じになった可能性もあるのか。
「ふふふ」
そこまで考えて、魔法を防ぎきることに決めた。私にはその程度の魔法、効かないということを教えてやるとしよう。しょせん相手は弱いプレイヤー。まあ、致命傷を受けることは無いだろう。
飛翔する魔法に合わせて大剣を構え、その魔法が攻撃系のそれではなさそうなことに気付く。だがしかし、そこから先を思考する前に3つの魔法が大剣に当たり────体がズシっと重くなる。
「!?」
デバフ魔法か!効果は?体が重くなったのは感じるが、それ以外に何かある?どのくらい動ける?
私に魔法が着弾した瞬間駆け出した5人の軽戦士を睨みながら大剣を構える。大丈夫だ。多少体が重いが、まったく動けないってほどじゃあない。大剣を持ち上げ、横薙ぎに払う。だが、その速度が明らかに遅く、全員に回避される。
「ッチ」
思わず舌打ちをする。これはちょっとよろしくない。最悪近づかれても対処の手段はあるが、前提大剣を使っているので、軽戦士相手に距離は遠い方がいい。重い体を操って後ろに跳ぶ。
「逃がすかッ!!」
「待て!合わせるぞ!」
そんなことを叫びながら私との距離を詰める5人。デバフのせいで相手の方が早い。あっという間に懐に入られる。
「パワーウェイブッ!!!」
咄嗟に衝撃波を放つ。すぐそこまで近づいていた1人のプレイヤーが衝撃波により吹き飛ばされ、3人が少し後ろに下がるが、それでも私に辿り着いた1人のプレイヤーが手に持った短剣で私を切りつける。全力で身を捻ることで浅く切られるだけにとどめ、ダメージは最小限に抑えられたが、とにもかくにも体が重い。動きにくい。今の一撃も、普段のコンディションなら十分回避できたんだ。
言い訳がましいことを考えながら、体を捻った勢いを利用してちょっと無理やり蹴りを放つ。あんまりいいダメージが入ったとは思えないけど、多少のダメージは入っただろう。ここから───
「ッ!!」
ドガンッ、という爆音とともに私の体が爆炎に包まれる。後衛の魔法職が何か攻撃魔法を放ってきたのだろう。完全に意識から外れてた。
「っぐぅ………」
2度、3度と地を蹴り、後ろに跳んで全力で距離を取る。このままじゃマズい。横目でちらりと見た体力は残り6割程度。さっきの魔法をモロに食らったことで随分と削られてしまった。
しかし、残念ながら今の私はデバフにより足が遅い。あっという間に追ってきた軽戦士に距離を詰められる。いつもより数段速度とキレの無い大剣の一撃は簡単に避けられる。それでも何とか1人を大剣で吹き飛ばし、「パワーウェイブ」でけん制しながら間合いに入った奴に殴り掛かり、蹴りを放ち。
「………ッ」
捌ききれない斬撃が私のヒットポイントをじりじり削っていく。
ダメだ。まずいまずいどうしよう。とりあえず対処を簡単にするためにこいつらの頭数を減らして────。
「!!」
目に端で飛翔する攻撃魔術をとらえ、後ろに飛びのく。
「あぐっ!」
避けきれず当たった爆炎が私の体力をさらに削る。クッソ。クソクソ動きが遅い。まずいまずいまずい。どうする?どうすれば。
……………………逃げる、か?キルされるよりもそっとの方がマシだろう。
「…………っは」
ナシでしょ。ここは現実じゃあない。ゲームだ。だからこそ自分を出さなきゃ。押し通さなきゃ。こいつらにはイライラする。先に私がPKしたとかいうのは一旦おいておいて、こんなか弱い女子高生をよってたかってボコボコにしやがって。明らかに作戦とか立てて来てるでしょ、コレ。
「……っふぅっ!!」
深呼吸をし、気合を入れる。このイライラを乗せて、ついでに学校とかリアルのイライラものせてッ!!!
「…………こい。全員潰してやる」
1人でも多くキルする。デスペナルティを浴びせてやる。




