ep73 近代的ロボ
「ふぅ、これで四階っと」
リュティは正直、ここ───最果ての塔の四階まで割とサクサクこれたことに拍子抜けしていた。二階で苦戦していた彼らは何だったのだろう。
「ん………?」
そこまで、このダンジョンは迷路のような構造を攻略しながら上の階へ続く階段を探すものだった。しかし、ここにきてパターンが変わったようで、まず階段から上がってすぐ正面に開けた空間があり、階段のすぐ横には青白く光る魔法陣が床に敷いてあった。
「なにこれぇ………」
ひとまず、近い方から触れていくことにして、この魔法陣は何かなと思い触れてみる。
『ワープポイントを開放しました』
「……………」
え、続きは?終わり?
「うーん」
若干説明不足な気がしないでもないが、まあつまりあれか?ゲームによくある、次にこのダンジョンに挑むときはここから始められる的な……………やつかな?
詳しい説明が出ないかと二度、三度魔法陣をテチテチ触ってみるが、何も起こらない。不親切だね。まあ、何も起こらないものは仕方ない。そう考えることにして開けた空間に足を踏み入れる。
障害物らしい障害物はない石造りの広い空間。いや、正確には石造りのように見える広い空間かな、これはこの塔全体に言えることなんだけど、この石の壁、明らかに石じゃない硬さしてるんだ。
まあ、それはおいておいて、そんな広い空間の奥にちょうど私が出てきたのと同じような、奥へ続く通路がある。まあ、ここまであからさまだとわかりやすい。
今からボス的なモンスターと戦うのだろう。私は。
少し進むと、目の前の空間がひび割れ足が現れる。次いで逆の足…………最初に出てきたのが右足なので、左足が現れ、下半身が出そろった後に上半身、顔と出現し、現れたのは五メートルほどの大きなロボットだった。
二階のゴーレム、三階の主要モンスターである防具をつけたスケルトンと比べるとえらく近未来的なみっためであるように感じる。
「しまった……今攻撃すればよかったんじゃない?」
思わず登場終了まで見入っていた。このゲームだとなかなかいないよね、こういうロボ。ミサイルなんか飛ばしてくれればもっとテンション上がるんだけど………どうかな?
じーっと観察していると、ロボが手のひらをこちらに向ける。お、この構えは………。
予想通り、手のひらがガシャッと開き、ビームが打たれる。
「ふふふっ、いいね」
後ろに飛びのいてビームを避ける。そのまま踏み込み、全体重を乗せた大剣の切っ先がロボの体に突き刺さろうとして。
ギンッという音とともに弾かれる。鈍い衝撃を手に感じながら驚きに目を見開く。武器や拳で弾かれたのではなく、単純にこのロボの体が硬すぎて、刃が通らなかった。
一歩、二歩と距離を取りながら体勢を整える。傷ひとつついていないロボのボディを睨んでいると、拳を振り上げたロボの追撃がやってくる。繰り出される拳をひらりひらりと避けて飛び上がり、ロボの頭に大剣を振り下ろすがこれも弾かれる。
「っは、なにこれ」
予想以上の狂的に乾いた笑いが漏れる。さて、どうしようかな。
※
「クソ………」
リュティはリスポーン地点として固定していたノインの町をとぼとぼ歩いていた。
「あのロボ。武器で殴ってるんだからダメージ受けろよ。ゲームとして」
結局、始終あのロボの装甲を突破できずに疲労だけが溜まり、ビームの餌食となってノインに叩き返されてしまった。どうにかしてあのロボを鉄くずに変えてやりたいところだが、現状の装備では火力がどうにも………。火力ぅ………やっぱりレベル上げが一番なのかなぁ?
「うーん……」
「おい、見つけたぞプレイヤーキラー」
「………ん?」
腕を組みながらうんうん唸っていると、周りをプレイヤーに囲まれる。
「ここで………君をキルする」
「うぇ………」




