ep68 急な出会いはテンション上がるものかな?
「うーん、思ったより気が遠い作業だな」
やっとのことで3つ目の滅びた村に到着した私はそう愚痴をこぼす。半分直感のようなものにつき動かされ、鬼神やドゥルグ村の手がかりを探すために新大陸を探索していたのだが、既に似たような状態の村だったものを発見するのはこれで3つ目だ。
もし、私の仮説が正しいのであれば鬼神がこの辺りの村を無差別に破壊していって、その中にドゥルグ村もあったということになるのだが、どうなのだろうか。
……………そういえば、鬼神が村に来た時、皆は当然のように鬼神のことを知っていて、さらにそれと相対しようとしていた。近くにこんなのがいたなら逃げればよかったんじゃないか?
うーん、わからん。かれこれ探索を始めてから2時間ほどが経過したが、これで結局私の見当違いでした。この崩壊した村は鬼神ともドゥルグ村とも関係ありません、というオチだったならかなりショックだな。
「……………よし、あと1時間探索して何も見つからなければ一旦この件は放置しよう!」
とりあえずそう心に決め、走り出す。無駄な努力はこりごりだし、こういうのは引き際が大事なのだ。何も見つからなければ………そうだな、本格的にレベリングでもしてみようか。
そんなことを考えていると、目の端に建造物の影が映る。
「あれは………祠?」
ひときわ大きな荒野の岩陰に佇む日本風の祠……のようなもの。あまりにも場違いなそれに思わず視線を奪われる。
好奇心の向くままに祠に近付き、よく見てみてもやはり日本風の祠にしか見えない。石の台座に乗ったミニチュアな建物。切妻造というんだったか、本を開いて逆さにしてのっけたような屋根と、おそらく木製の、小さな扉が付いた建物にしめ縄やら紙垂やらで装飾されている。紙垂が黒色なのは気になるな、こういう場合、白い紙をつけるのがポピュラーだと思うのだが。
紙垂を手で軽くどけながら、祠の扉を開けると、きれいな黒い玉が祀られるように置かれていた。
「ほう、これは……………」
相当なお宝であることは一目でわかる。神聖武器だったりしないかな?そんな希望を胸に黒い玉に手を伸ばし、触れる。
『「遺恨の果て」に移動しますか?《yes》《no》』
どこだよそれは。遺恨の果て?聞いたことないものが出てきた。文脈的に恐らく地名を指すものであるんだろうけど………。
あと、あれだな、この黒い玉はお宝でも何でもなく、遺恨の果てとかいう場所に飛ばすためのオブジェクトであるようだ。さっきからグイグイと引っ張ってるんだが、取れる様子が無い。
まあ、行ってみるか。
「イエス」
答えると、赤黒いオーラが玉から迸り玉に触れていた私の右手に絡みついていく。
「うおぉ、これはまた………ちょっと」
若干の気持ち悪さを感じながらしばらく待っていると、やがてオーラが全身を包み込み、視界が暗闇に包まれる。しかしそれも一瞬のことですぐに視界が開かれると。
「ほう、これはまた………」
一言でいうならば、昔の日本みたいな場所だ。こう、江戸時代の都会な風景………といった感じだ。まあ、私は歴史に詳しいわけじゃないし、江戸、というのも適当にパッと思いついた年号を言ってみただけなんだが。
まず、私は今道の上に立っている。地面はコンクリートや石などで舗装されているわけではなく、むき出しの…………砂?土?そして、右手にはずらっと昔ながらの日本家屋っぽいものが立ち並び、左手には少し大きめの川が流れている。川には少しむこうで橋が架かっており、川のむこうにはこちらと同じような光景が広がっている。
そして、何よりも異質なのは………というか、おそらくここに来た目的は私の前、20メートルほどむこうに目を瞑り、正座で座っている推定鬼神だろう。頭部から大きめの角が生えた美女、その風貌には見覚えがある。
と、するとここは鬼神と戦うためのフィールドだったのだろうか。まずいな、特に準備をしてこなかったぞ。というか、些か急展開が過ぎるだろう。ここに来るまでの重要な手順をいくつかすっ飛ばしたりしてないよな?
やがて推定鬼神がゆっくりと瞼を持ち上げ、横に置いてあったロングソードを手に取り立ち上がる。
というか、ロングソードなのか。武器にケチをつけるわけじゃないが、この場合刀とか持ってた方がこう、雰囲気に合ってるんじゃないだろうか。ほら、日本風の祠に、江戸時代風の街並みだからさ。
そういえば、前に鬼神の分身Bとかいうのとエンカウントした時には何も持っていなかったっけ。
鬼神がこちらを見据え、目が合う。
『四大特異点:鬼神とエンカウントしました』
そのアナウンスを聞き、興奮が少しの困惑を押しつぶした。
「よし、やるか」




