ep66 上陸したのはルド大陸
火山と職人の町、アハトゥ。そこから出る船に乗ることでルド大陸に行く事ができる。今回アヤはその船に乗り新大陸への上陸を試みた訳だが、幸いと言うべきか拍子抜けしたというべきか、その船旅の途中で巨大クラーケンに襲われたり幽霊船に襲われたりだとかいったイベントは起きず、普通に上陸できてしまった。
「おお、ここがルド大陸………」
船が到着したので降りながら周りを見回す。船の上からも見えていたのだが、この港町は荒野の中に突然舗装された町があるような様相で、このあたりはやはりゲームだなと思える。
「新大陸、といってもそんなに変わんないな…………いや、竜人が多い……?」
ドワーフの多い街もあったことだし、ここは竜人の多い街なのだろうか。というか、種族って何があるのだったか。
「エルフにドワーフに竜人に……………あ、普通に人類種もあるか………」
そんなことを考えながら町を軽く歩き、いつも通りRPGの伝統にのっとりそこらの人に話しかける。
「ああ、この街はテルボルグというんだ」
町の名前が、ドイツ語の数字の法則から外れた。ドゥルグ村と同じだ。
疑っていたわけではないが、これで別大陸に来たことが現実味を帯びてきたな。
さて、本来ならばここで新大陸の情報を集めるのだろうが、正直私のスタンスではないし、うちには情報収集がもっと得意な人がいることだし、いつものようにさっさと町を出る。
「新大陸のモンスターはどんなもんかな?」
港町を離れ、荒野にくり出す。
実はこの大陸に来て…………正確にはこの大陸の荒野を目撃してから少しの既視感を感じている。まあ、荒野なんてどこも同じようなものだし、新大陸ということでそういうバイアスがかかっているのかもしれないが、どうもドゥルグ村を思いだす景色なのだ。
これでやたら強そうなイノシシでも出てくれば確証も持ちやすいのだが、どうだろうか。
町を出て荒野を歩くとさっそく魔物の影が差す。
人間の成人男性より一回りも二回りも大きなサソリのようなモンスターが一匹こちらに向かってくる。先っぽに針がついた尻尾をゆらゆら揺らしながら私に迫ってくる大サソリに正面から向き合うと、力強く地を蹴り私の方からもサソリに向かって走り出す。一人と一匹が走ることで彼我の距離はあっという間に縮まってサソリと激突する寸前、私は軽く飛び上がりサソリの頭にナイフを突き立てる。
頭…………頭でいいのかここは。サソリって節足動物だよな、なら頭胸部とか言った方がいいのか?いや、前体というのだったか…………?
そんなことを考えていると、大サソリが頭をぶんぶんと振り回し、上に乗ったままだった私を振り落とす。
「ッ!!」
これには少々、驚いた。
いや、本来は驚くほどのことではないのだが、なんといっても私が最近戦ったモンスターはほとんどクリティカルでワンパンだったのだ。今回も頭とかいう明らかに弱点っぽそうな部分を一突きしたのだし、いつもの感覚で勝手に戦闘が終わったと判断してしまっていた。
しかし、こいつはまだ生きている。元気にこちらを威嚇している。
「ふふふ…………」
笑いが漏れる。やはり別大陸のモンスターはレベルが高いのだろうか。歯ごたえがありそうで大変結構。
くそ、こんなことなら今日の分の「暴食」を残しておくんだった。最近旧大陸のモンスターを食べてもステータスが全く上がらないこともあったし、意味があるのかわからなかったんだがなんとなくソシャゲのデイリーミッション的なノリで消費してしまった。
「まあ、いいか」
とりあえず、目の前で殺気立っているこいつ。命名「大サソリ君」を殺すとしようじゃないか。




