ep64 混沌のNブロック 後編
鞭女をキルし、顔を上げる。次はラノベ主人公だ。私のフルスイングによるダメージが残っているうちに仕留めたいんだけど、随分離れてしまった。大剣を担いでラノベ主人公を吹き飛ばしたあたりまで戻と、頭上から声がかかる。
「一つ聞きたい。君は先日聖女様を襲っていたようだが、なぜそんなことをする?一緒にいた、竜の翼のようなものを背中から生やした女は君の仲間か?」
声のした方に目を向けると、廃屋の屋根の上からラノベ主人公が見下ろしていた。
なんで屋根に上ったのかとか、一つといいながら二つ聞いてるでしょとか、そのあたりはツッコんでいいのだろうか。
「…………なんで?」
いろいろ考えはしたけど、結局私が発した言葉はその一言だった。だってなんかこいつめんどくさそうなんだもん。長々と会話をする気が起きなかったのだ。
「なんでって………それは」
何やら喋っているラノベ主人公を無視して、近くに置かれていたぼろい木箱を足場に屋根の上まで飛び上がる。これがアヤならきっと足場がなくでも屋根の上まで乗れるのかもしれないけど、私には無理そうだったから、手ごろな足場を使ったんだけど、ダンッっと力いっぱい踏み込んだ木箱が壊れてるのは気のせいだと思う。
私はそんなに重くない。いや、あれは木箱が脆すぎるのかも…………いやいや、というか大剣が重いんでしょ、うん。
屋根の上に飛び乗り、ラノベ主人公に向けて体重を乗せた突きを放つ。
ラノベ主人公はそれを避けずに剣で受け止めると、抗議するように声を上げた。
「君はッ……!」
ラノベ主人公の動きが戻っている。やっぱりさっき動きが悪かったのは鞭女のデバフの効果だったみたいだ。
こうなると鞭女から先に始末したのは少し後悔のポイントかもしれない。しかし、私の大剣を受け止めたのはミスじゃないだろうか。
間髪入れずに「パワーウェイブ」を使おうとするが、それよりも早くラノベ主人公が動く。軽く体と剣をずらし、私の懐に滑り込んでくる。でもまだ大丈夫だ。「パワーウェイブ」で反撃できる。
「パワーウェイブ!」
「エックスキャニバーッ!!」
そう叫んだラノベ主人公の剣が輝き、私の大剣をスキルごと弾き飛ばす。
「!?」
そのまま私の体を聖剣で切り裂き、私の体力が一気に二割ほど減る。
「なに、それ………ッ!ずる、でしょ!?」
「何もズルいことは無いさ。それより、俺としては君のスキルの方が気になるな。なんだ、あの刀身から衝撃波?を出すスキルは?見たことが無い。というか、さっきの俺の質問に答えてくれないか?」
追撃を加えて私をキルすることもできただろうに、どうやら話をしてくれるらしかった。まったく、ムカつく奴だ。バカにされてるみたいでイライラする。ギャル風にいうならサゲ。
弾き飛ばされた大剣は屋根から落ちてしまった。取りに行くか?いや、取りに行けるか…………?
「…………はぁ」
依然ラノベ主人公は剣を構えているだけだが、いつしびれを切らして襲ってくるかもわからない。…………どうしよう。かなり詰み、というかめんどくさい状況だ。気分は下がる一方。
「言っておくが、君が次に動き始めたら対話の余地はないと判断する」
これに負けたらどうなるだろう。今何人生き残ってる?私は今何位なんだろう。トーナメントに出られなくなるのは嫌だな………。
「おい!聞いてるのか?」
なんだよ、もう。うるさいな。
……………………そうだ。そうだよ、そうじゃん。
こいつを殺せば一旦は解決するんじゃん。そう、例えば大剣が無くても。
※
俺に向かって駆けてくる少女。それを見て、油断なく聖剣を構えなおし、少女の大剣の落ちた位置を横目で再確認する。この少女にはいろいろと聞きたいことがあったのだが、どうあっても対話はできないらしい。であるならば俺も相応の対応はしなければならない。
少女と俺の距離が近づく、しかし少女は聖剣の間合いに入る直前で身をかがめ、地面…………この場合廃屋の屋根を殴った。
「なッ!?」
そして驚くべきことに、その少女の一撃によって俺の足元がガラガラと崩れる。
そうだ、可憐な少女だからと油断していたが、彼女はつい先ほどまで身の丈ほどもある大剣を振り回す怪力を披露していたじゃないか。
落下しながらも極力態勢は崩さないようにする。上を見ると、少女が屋根にぽっかりと空いた穴の淵から俺を見下ろしていた。どうやら屋根を殴った後すぐに少し下がったらしい。
両足でしっかりと着地する。鍛えたステータスにより衝撃を殺すことは考えなくてもいい。
落とされてしまった、が。少女のねらいははっきりとしている。おおかた、こうして俺を足止めしている間に自身の大剣を回収するつもりなんだろう。だが、そうはさせない。さっき大剣の位置は確認してある。
俺は大剣の落下地点に向かうため、廃屋の壁を破壊し外に出る。眼前には記憶通りの場所に大剣が横たわっている。少女はまだ大剣を確保できていないみたいだ。となると来るのは上からだろうか。そう考えて警戒を上に向けようと思ったとき、世界がぐるりと動いた。
「…………え?」
次いで、凄まじい衝撃。地面に倒れている自分と、その上に載っている大剣の少女を認識できなければ、何が起こったかすらわからなかっただろう。
関節技を決められてるような形で、体が動かせない。そんな俺の聖剣を持った右手を彼女がギリギリと捻り上げる。いや、捻るというより、これはッ─────
「ッ!!」
ボキボキボキ、ともグチャグチャグチャともとれるような音とともに右手に力が入らなくなり、少しの不快感が残る。部位破壊判定を受けたのだろう。
「く……君ッ!」
ドズンッッという音とともに、頭を地面に再び打ち付けられる。
「ッグ!」
右手のことといい、かなりえぐいことをしてくる。これは認識を改めなければいけない。大剣だけでなく、柔道のようなことまでできたとは予想外だった。いや、というより雰囲気が変わっただろうか?先ほどまでのどこか気怠そうな雰囲気が薄くなっている気がする。
というか、どこから現れたんだ彼女は。外にはいなかったし、上も警戒できていたはずだ。考えられるとすれば、廃屋の中…………
「まさか……ッ!」
俺が廃屋の中に落ちて、壁を聖剣で破壊してる間に彼女は俺が落ちてきた穴から廃屋に降り、背後を取って攻撃してきたのか?
そんなことを考えているうちに左手も破壊され、体力が四割を切る。
思考を働かせながらも依然全力で抵抗はしているのだが、彼女の技術か、それとも単純にSTRのステータスの差か、有効な反撃らしいものはできていない。
「こ……のっ!!」
両手を破壊して余裕ができたのか、それとも体勢を少し変えようと思ったのか、少女の力が少し緩んだ瞬間に無理な体勢からそれでも無理やり地面を蹴って脱出を試みる。しかし
「ッ………」
少女にその足を掴まれた。両手がすでに潰された以上、俺に抵抗のすべは…………無かった。
※
「ふ、う…………」
ポリゴン片となったラノベ主人公からドロップした回復アイテムを回収する。
めんどくさい相手だったな。ん、というか今何位だろ。
ウインドウを操作して、現在の順位を確認すると8位とある。これでひとまずトーナメントには参加できるだろう。頑張った甲斐があった。
「アゲ………」
うぅん。自分で口走っておいてなんだけど、ちょっとギャルっぽすぎるかな?少なくとも私のキャラじゃないな、これは。誰かから影響でも受けた?
…………う、心当たりがある……。
前編と後編にするつもりが、中編が生えてきました。
正直、私の作品は一話の文字数があまり多い方ではないので、まとめて投稿しろと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、この程度の文字数が限界なので大目に見てください。
そうですね、テンポ、というか読みやすさを重視しているということにしましょう。
そして大変急ですが、X(旧Twitter)における私のアカウントをのせておきます。
https://x.com/4Eq7C0C1Ll75027
私はこういうものに疎く、正直何を投稿すれば良いのかさっぱりわからないし、今現在も何一つ投稿はしていないのですが、気が向いたらその辺りを教えていただけると幸いです。ちなみに、アカウントののせ方がこれであっているのかもわかりません。こういうの、ひょいひょい使える人って何なんですかね?何らかの知識が本能に刻まれて遺伝でもしているのでしょうか?
あと、気が向かなくても拙作の評価はしてください。私が喜びます。私を喜ばせることで皆様に徳が積まれるので、きっとそのうちいいことが起こります。




