ep63 混沌のNブロック 中編
ラノベ主人公が私の大剣を受け止めていた。なんなんだろうこの男は。誰かのピンチじゃないと登場できないの?というか、防ぐなよ。これはバトルロワイヤルだぞ。他人を守る理由なんてないでしょ。
しかも、こいつはさっきなんて言った?スラッシュって言ったの?私の大剣を使ったパワースラッシュが、片手剣のスラッシュで受け止められたの??
「…………ッチ」
イライラする。そのイライラのままに私は大剣を構えなおし
「パワーウェイブ」
大剣から衝撃波を放つスキルを使用する。
「ッ!?」
放たれた衝撃波で少し怯んだすきに大剣を強引に振り抜き、ラノベ主人公…………カイトを吹き飛ばす。
しかしそこで態勢を整えたのだろう、鞭の女が私に鞭を打ち付ける。何やらスキルが乗っていたのだろうその鞭は、私の体力をゴリっと削る。さらに追撃を加えようと振るわれた鞭を大剣の刀身で防御する。
二度、三度と打ち付けられるそれを刀身で防御し、鞭女が次なる攻撃を繰り出そうと鞭を振りかぶった瞬間、私の射程範囲内まで近づくべく駆け出す。少し驚いた鞭女の顔を見ながら、私は横に吹き飛ばされた。
横に吹き飛ばされた?
「…………………は?」
吹き飛ばされてた。横から。鞭女の攻撃?
廃屋の一つに激突し、視線をあげればさっきまで私がいたところに、聖剣を手に持ち立っているラノベ主人公が目に入る。
つまり、私はあいつに横から攻撃されてここまで吹き飛んだのだろう。まったくもって邪魔な男だ。
ちらりとHPを確認すると残り四割ほどになっていたので、どこかでチャンスがあればHP回復薬を使いたいところだが、あいつらが邪魔してくるだろうか?
…………めんどくさ。ため息交じりにポーション型のHP回復薬を一つ取り出し、目線は奴らから外さずに、素早く呷ってみる。
なんと飲みきれた。それどころかどうやら奴らは戦闘を始めたみたい。そりゃそうだ、バトロワなんだから。むしろ何故か鞭女を庇ったラノベ主人公が頭おかしい。
しかし、そうなれば少し余裕ができる。私はもう一本のHP回復ポーションも飲み干し、ほとんど全快した体力を横目で見ながら残りのHP回復ポーションの数を確認する。残り三個。
眼前では鞭女の例のスキル…………たしか「色欲」という名のそれを食らったラノベ主人公がかなり戦いにくそうで、防戦一方といった感じだった。というより、ラノベ主人公の動きが明らかに鈍い。もちろんデバフを食らっているのだからステータスが下がっているのは当然なんだけど、それにしても鈍い気がする。
私の時とはデバフの強さが違うとでもいうのか……………ありえるな。
うん、ありえる。となると、何がデバフの強弱を決める条件なのか……………うぅん……………。
わかんないな。忘れかけていたけど、私はあまり頭がいい方じゃないんだった。アヤかフカセツなら何か答えが出たかもしれないけど、私じゃあこれ以上考えてもわからない。
となると、答えは一つ。
今のうちにより面倒な方を横から叩く!そしてそれは
「おま、えっ!」
「なっ!?」
鈍い剣筋で何とか鞭女の鞭をいなしていたラノベ主人公の横腹に大剣全力のフルスイングをぶち込む。すさまじい音とともにラノベ主人公が廃屋の一つに激突し、壁をぶち破る。
ラノベ主人公は必死だったのか、こっちから意識が完全に逸れていたので思いっきり叩き込めた。
うん、それにしても気持ちよかった
「ッ!」
想像以上に良い一撃が入ったことで、私が軽く余韻に浸っていると、目の端に飛来する鞭が映る。
慌てて体を捻るが、反応が少し遅れて少し掠った。
「リュティちゃん。あなたから殺してほしいの?」
「しぬ……のは、おまえ」
なんだ、私から殺してほしいのかって。可愛い声で言えば何でも許されると思うなよ?
また鞭が飛来する。これを大剣で防いでいたらまたあのラノベ主人公が参戦してくるかもしれない。だいたい、三つ巴なんてめんどくさいことはせずに一度二人が戦い終るのを待って、弱っている方に仕掛けたらよかったものをなんであいつは首突っ込んで来たんだ。
飛来してきた鞭を大剣を振ることではじく。そしてその勢いのまま大剣を振りかぶる態勢に移行し大剣の持ち方を少し変え、重心を移動させながら────力の限り大剣をぶん投げた。
「怠惰」の効果もあり、おそらくプレイヤーの平均レベルよりもかなり高いであろうレベルの、ステータスポイントの大部分をSTRに振ってきた私の筋力を乗せた大剣が、唸り声をあげながら直進すし、ヒャアともキャアともとれるようなかわいらしい悲鳴を上げた鞭女に突き刺さる。
大剣の勢いを受け止めきれず、そのまま吹き飛んだ鞭女に追撃を加えるべく、駆け出す。
大剣を持っていないことによる動きやすさを再確認しながら吹き飛んだ鞭女のところに行くと、体に大剣が突き刺さったまま必死にHP回復ポーションを飲んでいた。
なんだか、滑稽だな。ちょっと面白い。ギャル風にいうならばアゲって感じだ。
「ねえ、あなたから、殺してあげよう………か?」




