ep6 イノシシ……
ドゥルグ村に来てから、つまりリリース日から三日ほど経過した。その間私は他のプレイヤーと出会っていない。いや、初日に一人出会ったがあれ以来他プレイヤーとエンカウントしていない。このゲームは意外とプレイ人口が少ないのだろうか?
そしてやっとこの村の人たちに顔を覚えられ始めた私は、ドーラの狩りによく連れて行ってもらっている。このゲームは戦闘に参加したもの全員にその活躍度に応じて経験値が振り分けられるのだが、どうやら初日に出会ったロックドラゴンはレベルが100近くあったらしく、ドーラが横から殴るまでのヘイトを取り続けたことで本来はほんの少し私に入るはずだった経験値もそのレベル差から結構な量になってしまったようだ。
「ここにいたのかアヤ。今から狩りに行くけど、今日もついてくる?」
「うん、お願い」
まあ、うん。これは完全に寄生プレイだ。ゲーマーとして何も思うことがないのかと問われれば言葉を濁すが、幸いここには私を咎める者など一人もいないのでせいぜいレベルを上げさせてもらうとしようじゃないか。それに………ほら、最近はレベルが上がって狩りもほんの少し手伝えるようになってきたし………うん。
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アヤ (♀)
Lv.46
0ゴルド
スキルポイント:3
ステータスポイント:0
………
スキル
・スラッシュ(Lv.5)
・パワースラッシュ(Lv.3)
・隠密(Lv.8)
・不意打ち(Lv.3)
・ヒール(Lv.5)
ユニークスキル
・憤怒
装備
武器:岩竜のナイフ
頭:なし
胴:布の服
足:布のズボン
アクセサリー:なし
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レベルが上がるとスキルポイントとステータスポイントが貰える。スキルポイントをすでに持っているスキルに使用することでそのスキルのレベルが上がり、新たなスキルのスキルの獲得に使用することでスキルが増える。ステータスポイントは各種ステータスに割り振ることでステータスを強化できるのだ。そこで私はとりあえず適当に「スラッシュ」や「隠密」を強化しつつ必要そうなスキルをとることにしていた。ステータスは無難にAGIとSTR重視しながら次点でDEXを上げ、その他は全体的に上げている感じだ。武器のナイフだが、武器がないと言ったらロックドラゴンの素材を使って作ってもらうことができた。料金に有り金全部取られたことは許そうじゃないか。
始めたばかりだったので初期金額の3000ゴルドを差し出したらすごく微妙な顔をされた。
・パワースラッシュ
その名の通りスラッシュの強化版。威力は強いけど隙もできるゲームにありがちな奴。
・不意打ち
敵対していない状態で攻撃すると初めの一撃の威力が上がるというスキル。どの程度上がるかはレベルによるっぽい。隠密とのシナジーで選んだ。
・ヒール
やっぱり自己回復の手段は欲しいよねってことでとってみた。MPとINTに全然振ってないから連発できないし効果もそこそこ。
ドーラと一緒に狩りに出掛けていれば嫌でもわかることなのだが、この村………というかこの辺りは確実に中盤以降に来る場所であるということだ。まずこのドゥルグ村は荒野の中にポツンとあり、そこからいくらか歩いていくことで私の初期スポーン地点の洞窟や、初期スポーン地点ではない洞窟があるのだが、そこまでの道のりがかなり過酷なのだ。具体的に言うと……イノシシだ。
「アヤ!来たよ!!」
ドーラが声を上げたことで私も戦闘態勢に入る。といってもいまだに私が戦力になれているのかは微妙なラインではあるが。
ドドドドドドドという地鳴りとともに前方から迫ってくるのはでかいイノシシが複数体。はじめにこれを見たときは驚きと本能的な恐怖で固まってしまったが、もう早くも慣れてきてしまった自分に少し驚きを覚える。私は結構適応力が高い方なのかもしれない。