ep57 予期せず……いやまあ予期してた方が少ないんだけど
「竜の息吹」
私が発見した、大陸の端に置かれた巨大な台形。そこにぽっかりと空いた穴。そこはまあ、ゲームだし当然と言えば当然なのかもしれないけど、ダンジョンであった。
「竜の息吹」
驚くべきなのはそのダンジョン………洞窟ダンジョンとでも呼ぼうか。その洞窟ダンジョンに出てくるモンスターの強さだ。この洞窟とはゼクスを挟んだ反対側に当たる、私がつい先ほど突破してきた森に出てくるモンスターよりもはるかに強い。恐らく攻略するとなるとレベル100は欲しいところだろう。
「竜の息吹」
まあ、私はレベルが100を超えているし、「竜化」によるバフや「暴食」によるチートじみた追加ステータスをもってすればかなり余裕をもって攻略をすることができた。いや、まだ攻略自体は途中なのだが。
正確には、かなり余裕をもってボス部屋までたどり着けたと言った方がいいだろう。
「竜の息吹」
そう、このダンジョンにはボスがいた。いや、まあそれはいいか。ボス部屋までたどり着いたのはいいが、これがなかなか厄介なボスだったのだ。
2体のゴーレムのような敵だったのだが…………おそらく、それぞれ魔法と物理に高い耐久を持っていたのだ。
ゲームによくある、物理に強い敵には魔法で、魔法に強い敵には物理で攻めるといった攻略を想定されていたのだろう。
あくまでも、「おそらく」と言ったのは魔法に強いと思われるゴーレムを瞬殺してしまったことと、今現在物理に異様に強いゴーレムに凄まじい苦戦を強いられていることからの予測であるからだ。
「竜の息吹………………って本当に硬いな君はッ!?!?」
私に魔法は使えない。いや、回復系統は最低限覚えているが、攻撃はからきしだ。さて、では今の私がこのゴーレムにダメージを与える場合、最大効率の方法はなんだろうか。これがおそらく「竜の息吹」である。
いや、もちろん検証なんてしていないし、あくまで感覚なのだが、普通にバフをかけて殴るよりも雑にビームを当てるほうがダメージが通ってる気がする。というより………「竜の息吹」に含まれる爆破属性か何かが聞いてるのか…………?
まあ、そういうわけでさっきから何度も何度も「竜の息吹」をぶつけているのだが、そろそろ死んでくれてもいい頃じゃないだろうか?
正直、「竜化」に「憤怒」を乗せた黄金コンボでろくにダメージが入らなかった時点でちょっと萎えているのだ。さっさと倒して帰りたい。いや、と言うかそれ以前にそろそろMPが尽きる。一応買っておいたMP回復アイテムももう底をついてしまったし、そろそろ倒れてくれないといよいよ打つ手が無い。
「竜の息吹」
ゴーレムの攻撃を危なげなく躱し、もう何度目かもわからないブレスをぶつける。
「竜の息吹…………お!」
ゴーレムが爆炎に包まれてポリゴン片となり、消滅した。
「やっとか………」
ずいぶん時間をかけさせてくれたものだ。
ドロップアイテムは………何もないか。まあいい。このダンジョンの報酬はそこではないのだろう。台形の洞窟ダンジョン最奥にあるこの部屋、そのさらに奥にある台座。二体のゴーレムに守られるようにして存在していたそれの上に何やらあったのを私は見逃さない。というか、初めにそれを触ろうとしたら、急に台座が引っ込んでゴーレムが動き出したのだ。
「これは…………布?」
台座の上にあったのは、たたまれた黒い布のようなもの。肌触りはなかなかに心地いいが、これでただちょっと高価なだけの布だとしたらかなりショックなのだが。
そんなことを思いながら布を広げてみると、どうやらフード付きのコートか何かのようで。
【《神聖武器:神装ユーケイ》を獲得しました】
「…………………なんだって?」
神聖武器…………武器?武器かこれは?
いや、まあいい。いやよくないが、とりあえず置いておこう。神聖武器と言えばあれだ。例の聖剣と同じ類の装備で、私たちが探していたものでもある。なんだか予期せず入手してしまったが、そうアナウンスされたのだから間違いはないだろう。
にしても、武器……いやこれは武器ではないだろう。どちらかというと装備の類な気がするのだが………。
「はあ……まあいいか」




