ep56 なんだよ錐台って
新たな町………かどうかはまだわからないが、少なくとも私は初めて来た町だ。私がさっきまでいた森と、遠くにうっすらと見える山脈?のような場所に挟まれた位置にある町。
見つけたからには近づいてみるのが道理というものだ。そこが私の知らない町である以上、6番目の町かもしれないしね。
見たところ、このゲームの町にしては珍しく、町の周りに壁や柵なんてものはなく、そのまま家たちが並んでいた。私が抜けてきた森といい、奥に見える山脈といい、周りにモンスターが多そうに見えるけど、必要ないのだろうか。
まあいい、そんなのは考察や世界観が好きな連中がそのうち調べるだろう。今、私にとって一番大事なことはこの町の名前である。もはや恒例となってきた、町にたどり着き初めに目についた人に町の名前を聞く行為を、今回も実行すると。
「?まあ、それくらいなら教えるが…………ゼクスだよ。この街の名前は」
「ッ!」
ゼクス、ゼクスと言ったぞこの男。つまり、この街が私たちが探していた…………いや、言うほど探してはいなかったが、まあ、どこなんだろうな?ってな感じで考えていた、6番目にあたる、ゼクスの町だというわけだ。
「…………ほう」
これは思わぬ大収穫である。フカセツさんあたりに得意げに話せば喜んでくれそうだ。
さて、じゃあ6番目も見つけたところで、あの森の攻略に戻ろうかと思ったところで一つの思考がよぎる。
森を越えればゼクスの町があったわけだけど、その奥の山脈?を越えたらどこに出るのだろう。
「いや、しかし…………」
かなり未知ではある。特に適正レベルなんかは…………「竜眼」使えばだいたいわかるか。…………じゃあいけるか?うん、いけるな。…………よし、いこう!
※
「………………なるほど、こう来たか」
近付いてみてわかったのだが、ゼクスの向こうに見えた山脈は山脈ではなかった。というか、なんだこれは………………絶壁?崖?
まあ、なんというか、岩でできた大きな壁のような崖のようなものが横たわっていたのだ。まったく、がっかりである。モンスターの気配も無いし、雑に、ここから先はいけませんよー、とでも言われているような気がして少しつまらない。
「運営の怠慢でしょ、これは……」
急にフィールドを作るのが面倒にでもなったのだろうか?
………………どうしようか、いっそ登ってみようか。私のステータスならできないこともないと思うが。そう思い周りを少し観察しながら移動していると。
「………………ん?」
壁に穴が開いていた。大きさ数メートルはある穴がぽっかりと………………いや、これは……洞窟?
「おっと?」
ふむふむ、なるほど?つまりあれかな?この壁を抜けたければ洞窟を攻略してみろ的な?よくあるやつなのかな?いやはや、すまない運営よ、疑ってしまった。
「いや、しかし」
そう、しかしだ。しかしながらこの壁が私のステータスをもってすれば超えられてしまいそうなことも事実。というか、洞窟の攻略なんて面倒なことをするくらいなら上から超えるほうが手っ取り早い。
「………………よし、登るか!!」
ここに私は、運営の意向を無視することに決めた!!
「竜化」を発動し、思い切り飛び上がる。岩壁はツルツルというわけでもないが、あからさまな足場が用意されてるわけでもない。よくよく見れば坂のようになっているが、あいにくリアルで登攀の経験など無い私にとってこれを登るのは本来なかなかに大変なことなのであろう。しかし、ここはかなり自由度の高いゲームで、私はそれなりのステータスを誇っている。であるならば
「ふんっ!」
「竜化」によって鱗でおおわれ、鋭くとがった左手を思い切り岩壁に突き刺す。刺そうと思って左手で突いたのだが、きちんと刺さってくれた左手を見て、登りきることができる確信を得る。
そのままザクザクと手を突き刺しながら数分かけて登っていくと、やがて頂上が見えてくる。
「よい、しょっと」
ひょいっと頂上に上った私が顔を上げ、見たものは────一面の海だった。
「………なるほど」
ふむふむ、なるほどなるほど?つまりあれだ。この岩壁に向こう側などなかったわけで、ただただ大陸の端に岩壁が置かれていることを数分かけて知ったわけだ。
というか、上から見るとわかりやすいがやはりこの岩壁は上に行くほど幅が狭く、下に行くほど幅が広い形をしている。台形………いや、こういうのは四角錐台というんだったかな?まあどっちでもいいけど。
若干のがっかり感を覚えながら坂を滑りながら降りる。いや、というかこんなに何かありますよ~とでも言いたげな台形があるのが悪いと思う。何だよこの台形は。自然物にしてはやけに表面が整っている気がするんだが………まあ、ゲームだしいいか。
ああ、というかこの台形には洞窟らしきものがあったな。あとで攻略しに行くとしよう。




