ep53 北へ
「さて、ゲームの攻略を進めるといっても、今は他の人はどこまで行ってるんだろう」
当面の目標を立てた次の日、リュティと二人、仮のホーム(仮)三号にて話をしていた。
「わかってるのは、多分、まず始まりの町のアインス、そこから東に行ったところにあるのが、今私たちのいるツヴァイ。ツヴァイの北、南、東にドライ、フュンフ、フィア。あと、アインスから西にずーっと行くと、ズィーベンがある……………らしい?」
「ふんふん、なるほどね」
「それで、ズィーベンとフィアが海に面してる………っぽくて、だからアインスを中心にするなら、そこが西の端と、東の端……………ってフカセツが言ってた。あ、あと、モンスターの最高レベル、は、ズィーベン周辺のレベル70前後…………らしい」
「なるほどねぇ、これをよく開拓されてるととらえるべきなのか、まだ全然開拓されていないととらえるべきなのか……………まあ、自分たちでやってみたらわかるかな。じゃあ、とりあえず────」
「その前に」
「ん?どうしたの?」
「んと、アヤは第二回イベント……………でるの?」
「え?そりゃまあ、一応?出ようとは思ってるけど、なんで?」
「んーん、なんでもない」
「?そう?」
なんだというのだろう。何か言いたいことがあるなら言ってくれた方がモヤモヤしなくていいのだが…………。私が第二回イベントに出るか出ないかで何かが変わるわけでもあるまいし。
あ!あれかな?私と一緒にイベントに出たいとかかな?なんだよそうか、可愛い奴め。
「リュティも出るでしょ?一緒に出ようよ」
「ッ!うん」
?なんだ?リュティの表情が私の想定していたものより、こう…………邪悪な気がする。
まあいいか。気のせいだろう。そんなことより開拓である。
「さて、推定東の端と西の端が既に発見済みならば、行く方向は二択だ。北か、南か。リュティはどっちがいい?」
「いま、攻略の前線組は南に行ってる……………ってフカセツが言ってた」
「なるほど、じゃあ北だね」
「ん」
これは決して逆張りではない。南の情報を余所から仕入れ、北は自分たちで開拓することでより早くこの大陸の全貌をつかむことができるという作戦なのだ。
……………誰に言い訳してるんだ私は。
「今一番北側にある町はドライだったよね?とりあえずそこまで行こうか」
新しく購入したフード付きのコートを羽織り、フードを深くかぶる。角は流石に目立つからね。
ツヴァイの町からドライの町までの道のりは特に語ることはない。軽く振ったナイフの一撃で沈む雑魚モンスターを適当に狩りながら走っていたら着いた。それだけだ。
そして、到着したドライの町はツヴァイの町と比べると、こう……………
「田舎だね」
「………うん」
ツヴァイの町のような立派な城壁もなければ、きれいに舗装された道もない。一面に広がるのは畑と畑。奥に見える民家もツヴァイのように2階以上の建物はまずなさそうだ。
「えと、ここからさらに北に進むと、レベル70越えのモンスターが出てきて、西に行くとモンスターのレベルは50を少し超えるくらいだけど深い森が広がってる……………ってフカセツが言ってた」
「……ありがとう」
凄く解説してくれるのはありがたいのだが、その最後のやつは取った方がいいと思う。いや、実際フカセツさんの受け売りなんだろうが、それは別にいう必要はないというか……………いや、まさかツッコまれるのを待っているのか…………?
というか、まわりの敵のレベル、全然ツヴァイよりも高いじゃないか。なんであそこはあんなに立派な壁があるのにここにはないんだ。一体全体、ツヴァイの町は何から守ろうとしてるんだよ…………。いや、ゲームにそんなことを言っちゃいけないんだろうけどさ。
「うーん、とりあえず北かなぁ。一度端っこまで行ってみたい」
「わかった」
ドライの町に滞在することなく、そのまま通り抜け北へ向かう。
やがて草木が少なくなり、岩肌が目立つようになってきたところでそいつは現れた。
「あれは…………馬?」
「ん……あれは……………」
一言でいえば、赤い馬である。ドライから出て、雑魚モンスターを狩りながら進むこと数十分。地形にも明確な変化が現れたし、おそらくあれがレベル70越えのモンスター、なのだろう。
まあいい。70程度ならどんなモンスターであれ、何とかなるだろう。「隠密」を起動し、赤い馬に近付き、流れるように首を切り裂く。
「ブモォォォ!?!?」
断末魔を上げ、倒れる。クリティカルとはいえ、推定レベル70を一撃とは私も強くなったものである。ああ、そういえばこの新モンスターはどんなドロップアイテムを────
ドォォォン!!
「!?!?!?」
倒れた赤い馬が、爆発した。何を言っているかわからないと思うが、私もビビってる。というか、痛い。結構ダメージくらったんだけど。なにあれ?
「アヤ、あれは倒したら爆発する」
トテトテと近づいてきたリュティがそんなことを言ってくる。
「へえ、ありがとう。でもできればもう少し早く知りたかったな」
「だって、言う前にアヤが倒しに行ったから……………」
「……………ごめん」
それは確かに私が悪いかもしれない。
「他にもいろいろモンスターがいるらしい」
「……………おーけー、慎重にいこう」




