ep20 We are 強きゃら
「epic of murder」それはCko二大PKギルドの一柱であり、それなりに有名なプレイヤーである「無限の性癖」氏がリーダーを務めるギルドである。彼らはもう一方のPKギルドとは違い、何となくかっこよくて楽そうだから、という理由でこのギルドに所属しているものが大半であったし、このギルドのホームである建物もツヴァイの町の治安が悪い地域の雰囲気が何となくかっこいいからという理由でそこに建てられた。
そして、そのギルドは今、壊滅の危機にあった。
「くそっ!!なんだよ一体!?!?」
余談ではあるが、このゲームはギルドシステムを成立させるにあたってギルドの「ホーム」と「フラッグ」が必要になってくる。もちろんそれらが無くてもギルドを名乗ることはできるのだが、アイテムの共有や分配などのギルドを運営するうえで便利な機能は使えない。
「くそがぁぁあああ!!止めろ!誰でもいいからこいつらを止めろッ!!!」
「ホーム」とはその名の通りギルドの拠点のようなものである。そして「フラッグ」とはそれぞれのギルドのシンボルであり、ギルドの心臓である。このゲームではまだ行われた前例がないが、ギルド同士の戦争である「ギルド戦」はフラッグをめぐる争いとなる。また、このフラッグはそれぞれ好きにデザインすることができ、各ギルドメンバーたちのセンスが問われることにもなる。
「………ふむ」
エピオのギルドホーム、その最奥にあるギルドフラッグが置かれていた部屋まで来た私とリュティ。それまではギルドメンバーたちの妨害こそあれど私たちからすれば大した障害にはならなかった。レベルは20以下がほとんどであるし、統率もあまりとれていない。ちなみに、リュティはレベルが28だった。そこそこ強いプレイヤーをPKすれば経験値もそれなりに入るらしい。
だがしかし、ここにきて一番の障害が私たちの前に立ちふさがっていた。
「び、美少女………ロリ………かわいぃ………」
そう、変態である。
リュティによって破壊されたエピオのギルドフラック、その前で歴戦の暗殺者といった風貌のアバターが舐めるように私たちを見ている。
「きもち、わるいっ!」
リュティの振るうスキルのエフェクトを纏った大剣がその変態を真っ二つにし、キル判定が出る。
しかし、これで解決すれば私たちはこんなに苦戦してはいない。それはこの、部屋のベッドから起き上がってきた今さっき倒した変態を見ればわかるだろう。そう、この変態はこの部屋をリスポーン部屋にしているのだ。
このゲームにはデスペナルティとリスキル対策がある。
まずデスペナルティだが、死んだプレイヤーは所持しているアイテムをランダムでドロップしたのち一定時間ステータスが減った状態でリスポーンする。
そしてリスキル対策、これは一日に同じ人間を三回以上キルするとキルした方のステータスが一定時間半減するというものだ。また、PKを繰り返したプレイヤーがPKされると通常よりも重いデスペナルティが待っているので、ステータス減少がメインというより、ステータスの減少によって狩る側が狩られる側に回ってしまうことがメインのペナルティだろう。ちなみに今のが三回目のキルであるため、リュティのステータスは半減していることだろう。
そんなリュティに私は先ほどから疑問に思っていたことを告げる。
「ねえ、思ったんだけどさ?ベッドを破壊するのはダメなの?」
「………あ」
「え?」
私のその言葉に二者がそれぞれの反応を見せる。片方はその手があったかというような顔、そしてもう片方は絶望を湛えた顔。
「ま、待ってくれ!待ってください!!お願いします!何でもしますから俺を踏んで………じゃない、俺を仲間に………………いや、まずフレンドになってください!!!」
土下座だ。きれいな土下座である。傍から見たら歴戦の猛者風な大人の男が幼女二人に土下座をしている光景なわけだが、ふむ。なかなか面白いな。誰か絵にしてくれないかな?
なんだろう………私からは何か仲間を増やすフェロモンでも出ているのだろうか。行く先々で仲間志望者が出てくるな。桃太郎フェロモンとでも名付けようかな?なんてどうでもいいことを考えていると大剣を振り上げるサイコロリが一人。
「まあ待ちなよリュティ。なかなかに面白い土下座を見せてもらったし、話くらいは聞いてあげない?」
するとリュティは不機嫌そうな顔をしながら渋々といった様子で大剣を下ろしてくれる。
「えぇ……なんかこの人嫌………」
そんなリュティに感謝を伝えつつ頭をなで、男に向き直る。
「さて、君はさっき何でもすると言っていたけど、具体的に私たちにどんなことができるんだい?」
口元に微笑を浮かべながらそんなことを言う私は相当悪役っぽい気がする。おかしいな、私たちは悪を討滅する正義の使徒のはずなのに。そして土下座男はどうしてそんなに嬉しそうなんだ………?
「何でも……何でもです!あなた様方の奴隷になります!!奴隷にしてください!!踏んでください!!」
「うわぁ………」
おっと思わず声が出た。リュティもすごい顔をしてドン引いている。いやしかし、なるほど、この現実では確実に味わえないような状況を面白く感じている私がいるのも事実だ。
「ふ、ふふふ……。いいよ。では君は今日から私たちの奴隷だ。よろしく頼むよ、奴隷君?」
横でリュティが凄まじい抗議の視線を向けているが、いったん無視する。あとで機嫌を取りに行こう。
「じゃあ、追って連絡するから、取り合えず今日は帰るよ」
そう言い残し私たちは元エピオギルドホームを去っていくのであった。すぐに立ち去ったのはもちろん強キャラムーブをしたかったというのもあるが、あの変態とフレンドになるのはちょっと………まだいいかな?と思ったからである。




