第弐話 ワンタン・スープとステータス
今日も今日とて、皆んなで仲良く”森でお散歩”だ。
現在の俺のステータス
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名前:ラインハルト・フォン・アインスベルグ
年齢:5
職業:男爵家四男
位階:∞
HP:∞
MP:∞
筋 力:∞
敏捷力:∞
防御力:∞
攻魔力:∞
防魔力:∞
能力/スキル
【武芸の極み】
【魔導の深淵】
【知識の頂き】
【神々の加護】
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おお、転生局の端末でやったチート出来てる!
次は魔法っと、その前に
「デリア、お兄ちゃんが今から見せる魔法はみんなに内緒だよ?」
これでオーケーっと、
で、ファイアーボール・・・ヨシ!
次、ウォーターボール・・・ヨシ!
次、ウインドカッター・・・ヨシ!
次、アースバレット・・・・ヨシ!
次、フライ・・・・・・・・ヨシ!
次、エンチャントパワー・・ヨシ!
デリアがきゃきゃっと手を叩いて喜んでくれた。
「ラインにいに、しゅごい!」
「デリア、このことは内緒だよ、これが偉いひとや悪いひとにわかってしまうと、
ラインにいには、さらわれてしまうんだ。だから、ナイショだよ?」
「うん、わかった」とデリアは元気よく返事した。
「あ、兄さんたち帰ってきたかも」と森に顔を向けるとデリアも
「にいにたちだぁ〜」と言って駆け寄っていった。
魔法の実践を確認した俺は次に塩を作ることに尽力した。
塩=NaCl、そう塩化ナトリウムである。
ここアインスベルグ男爵領は痩せ細った荒地が七割を占める内地で、
塩湖もなければ、岩塩の採掘場もない。
兄弟たちが森と言っているのも、
小さな森で鬱蒼とした雑木林に毛の生えた程度のものだった。
食塩はもっぱら輸入に頼っているのである。
これは、生命線を握られているに等しいことでもある。
なので、絶対に塩を作らないといけないのである。
やったことは簡単、土から塩分を抽出して、精製するだけ。
領内の七割を占める荒地の土を魔法で分析、するとどうだろう、
塩分濃度が濃すぎて荒地になっていただけだった。
なら、やることは一つ、
荒地の土をジャブジャブ水に溶いて、塩を析出されるだけだ。
この5歳の俺が、このことを親父に伝えると、びっくりして二・三日寝込んだ。
それからは慌ただしかった。
親父は領内の男衆を集め、荒地の土を川から水を引いて、塩の析出に勤しんだ。
塩の安定供給により、スープが劇的に変わった。
味のしないスープから、ほんのり塩味の、
そして出汁の効いたスープにジョブチェンジした。
そして荒地は塩分濃度の問題が解消されて、荒地ではなくなり、
小麦畑へと変貌した。
然しながら、未だ家は貧乏。
スープをどうにかしたい。
そこで、スープ餃子の簡易版を提案してみた。
皮を薄くして、小麦粉で少しカサ増しした肉をちょこっといれる。
そう、ワンタンである。
雲呑と書けば、広東料理
渾沌が由来する。
渾沌とは、クトゥルー神話の「這い寄る混沌」とは別の神代中国の神の一柱で
七穴のない毛むくじゃらの神様だったらしい。
気のいい神様だから、
ほかの神様をもてなして、七穴がないからって、顔に穴を開けられて死んじゃって、
恩を仇で返される、なんとも「なんだかなぁ〜」な神様である。
時代によって四凶としてあげられたりと散々な神様だったけど、
この際、そんな話はどうでもいい。
要は毛むくじゃらの神様がモデルってことだ。
ちなみに、日本に伝わったときに
「うどん」「ほうとう」「すいとん」に変わっていったらしい。
うどん食いたくなってきが、それはさておき、
ワンタンに戻ろう、
星の戦争に出てくる、チュー○ッカみたいな神様がモデルみたいだ。
そして、ワンタン・ぎょうざ・シュウマイのルーツでもある。
あのつるつるっとした喉越しがワンタンの醍醐味である。
また一品、アインスベルグ家の菜譜に中華料理が増えた。