第壱話 イーガー・コーテル
彼はどこからきて、どこにいて、どこに向かっているのだろう
やってきましたヘルムート王国アインスベルグ男爵領。
秦国隆改め、ラインハルト・フォン・アインスベルグです。
5歳になりました。
うちは貧乏男爵家だが家人は俺も含めて16人の大家族。
先代領主のアントンじいちゃん(60)、デボラばあちゃん(55)、
親父で現領主のオイゲン(40)、お袋エリーゼ(35)、
長兄アウグスト(20)、次兄ベルンハルト(18)、
三男コンラート(16)、俺(5)、
長女アンネローゼ(19)、次女ベアトリス(17)、
三女シャルロッテ(15)、四女デリア(4)、
家宰のハインリッヒじい(60)、一人料理長のヨアヒム(34)
メイド長のマレーネおばちゃん(29)、メイドのアンリエッタ(14)である。
※因みに、ハインリッヒじいの息子がヨアヒムで、
マレーネおばさんはヨアヒムの奥さん。
アンリエッタはその二人の娘。
俺と四女デリアと他の兄弟姉妹と年齢が離れているのには訳がある。
俺が生まれる少し前まで王国と帝国で十年に及ぶ戦争状態だったからだ。
貧乏貴族だからか、家族仲はすこぶる良好だ。
やはり、わかっていたが飯がすこぶる不味い。
家族仲がいいのは、歓迎されることだが、
如何せん貧乏で飯が
非常に致命的に無限級数的に不味い。
黒パンに味のしないスープで一日二食が基本。
一人料理長のヨアヒムが頑張ってくれているのはわかる。
わかるが、味のしないスープってなんだよ!?
腹が減るから、森にお散歩という名の採取に度々、
兄弟揃って出掛けるの家の流儀。
長兄次兄三男が弓矢でイノシシや野鳥をとって、
長女次女三女が野草や山菜、果物を採ってくる。
で、俺は四女デリアの子守をする。
でも、飯のマズさは相変わらずだった。
そこで、俺は現状何ができるか、考えた。
ポク・ポク・ポク・ポク・・・チンっ!
餃子!
中華四千年の代表作、ぎょうざ
今では、在り来りのお惣菜だが、
日本で広まったの言うまでもなく、戦後、引揚者が広めた。
少ない食料で、カサ増しできる。そして美味しい。
元来は中国では、春節や慶事に商売繁盛・子孫繁栄願って
お金の形(馬蹄銀)に似せて食べた。
焼き餃子なんて二日目の鍋貼、余り物なんだとさ
でも美味いから文句ないよねw
材料は、小麦粉・野菜・肉でできる完全食!
兄貴たちに肉を
姉貴たちに野菜(山菜)を
それぞれ提供してもらって
やるぞ!
ヨアヒムにも手伝ってもらって材料を揃えた。
イノシシのバラ肉のミンチ
野草のノビル/ねぎ・ニラの代用
小麦粉
塩
先ずは餡だ!
イノシシ肉のミンチ、塩とノビルの小口切りを混ぜ混ぜ。
混ぜ混ぜ。
混ぜ混ぜ。
5才児の俺には結構キツい量だ。
次に皮を
小麦粉、塩、水を適量入れなが混ぜ混ぜ。
耳たぶくらいの硬さに調整。
塊をピンポン玉くらいにして、めん棒で伸ばして皮に
皮がくっつかないように打ち粉も忘れず
さぁツムツムするぞ!
黙々と餃子を包んでいると
最初はヨアヒムが、デリアもとなりで最初からいたが一緒にツムツム。
姉貴たちもツムツム。
兄貴たちもツムツム。
厨房で賑やかにツムツムしているとお袋とばあちゃんが入ってきて
家族全員でツムツムしだした。
できました餃子。不格好は愛嬌ってことで
フライパンにラード(イノシシの脂)を最初の一個でのばす、
フライパンの全面が脂でコーティングされたら、順次投入
フライパンいっぱいに餃子に大輪の花びらができるw
蓋をして蒸し焼きにする
その間、小麦をゆるく溶いたものを用意して、ある程度皮に火が通ったら
回しかけるようにして、再度蓋をする
最後に水気を飛ばして、皿にひっくり返す。
じゃじゃーん、羽つき餃子の完成だ。
並行して、葉野菜(白菜っぽい)やつを敷いた蒸籠にも餃子を並べる。
野鳥のガラとクズ野菜で出汁を取ったスープにも入れる。
今夜の晩飯、
羽つき餃子、蒸し餃子、スープ餃子の完成だ!
実食!
う、美味い!
羽つき餃子は皮から作ったからか、外はパリッと、そしてモチっとした歯応え。
そして溢れる肉汁。豚でいうと豚バラの部分を使ったから、
旨味のスープが口の中に溢れる。
蒸し餃子はぷるんぷるんの皮がたまらない。
スープ餃子はつるりとしていて、食べごたえ抜群だ。
アインスベルグ家の慶事には餃子が欠かせなくなったことは言うまでもない。
さて、次の話はどうなるやら・・・
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