第零話 プロローグ〈序章〉
平日の昼間、人々で賑わう商店街の片隅で今日もランチを楽しむひとりの男。
「ひゃ〜、くったくった。
今日も来明軒のラーメンランチは美味かったなぁ〜」
いそいそと爪楊枝を口にしながら店の会計を済ませて、
午後のルート営業に向かうのは
秦 国隆四十三歳・独身である。
「次は、〇〇総合病院かぁ〜
あそこに事務長さんしぶちんなんだよなぁ〜」
と営業先の愚痴を溢しながらもしっかりと販売予定の新商品のリストを確認する。
信号待ちの昼下がり、前の辻の信号を無視する一台のトラック。
そして今まさに眼前に子猫が渡っていた。
気付いたら、国隆は身を乗り出していた。
そして子猫を掴んで道の端へと放り投げた瞬間、
「ドン!ガッシャーン!」と大きな衝撃とともに意識を失った。
目覚めると、国隆は雲海を彷徨うように歩いていた。
そして一人の天使が国隆を迎えにきていた。
「あなたさまは天へ召されました。
ここは天界の入り口です。
ささ、私についてきてください。」
そういうと天使は国隆を天界の門まで誘導した。
「私は誘導係りですので、あとは中の係りが案内致します」と
誘導してくれた天使は来た道を戻っていった。
「えっ・・・ちょっと・・・」と言うか言うまいかと逡巡していると
別の天使が現れて
「は〜い、はた・くにたかさんですね〜」とカルテのようなものを見ながら、案内係の天使が国隆に尋ねてきた。
「はい、そうですが・・・」
未だ、状況がわかっていない国隆に案内係の天使が捲し立てるように説明する。
「え〜っと、あなたは秦国隆さん。
享年43歳、死因は交通事故でトラックに轢かれお亡くなりになりました。
はい、これ死因の写真(グロ写真)。
これから、魂の洗浄と再転生の手続きを行って頂きます。
これが洗浄用のフォームで、こちらが転生用のフォームとなります。
あと、何かわからないことがございましたら、
あちらのインフォメーションセンターへお問い合わせください。」
そこまで一気に言うと、案内係の天使は次の魂が到着したのか、
その場を去っていった。
ぽつんっと残された一人。そして、眼前に広がる人々の列。
そう、ここは天界の転生局だった。
取り敢えず、インフォメーションセンターの列にならぶ国隆。
列から転生局の内部を細かく観察していく。
東京ドーム何個分あるだろうか、天界の門を潜ると
そこには空港や役所のようなカウンターがあり、
零番から百二十番まで、どのカウンターにも長蛇の列があった。
インフォメーションセンターでも5つカウンターがあり、そのどれもが長蛇の列。
壁際に端末があり、誰も見向きもしない。
ま、いっぺん死んでもみない限り、皆ここには用がないからなぁと思っていると、
妙に壁際の端末が気になった。
インフォメーションの列から抜け出し、その辺の案内係りを捕まえて、
壁際の端末について尋ねた。
するとどうなったか。
「ああ、使っていいですよ。
最近導入したんですけど、死後もITがあるって思いませんもんね・・・」
何!?
死後の世界もITあるのかよ!?
なら早速使うべし。
壁際の端末、ヘブンズ・ネットにアクセスした。
「え!?これって・・・いける!いけるぞ!・・・ふふ・・・」
あろうことか、国隆は元システムエンジニア、
バックヤードパスを見つけ、システムに侵入。
自分のファイルを見つけると転生先が決まっていた。
転生先は「剣と魔法の世界」の貧乏貴族の四男だった。
ここで国隆の悪い虫が働く。
全パラメータをマックスにして、加護・才能・スキルもマックス。
俗にいう、俺TUEEEEEをしれーっとしてみた。
アラートも出ない、
開発者のフレーバーテキストには「ここまで見るやつ、
そうそういないし、できるならいいんじゃねw」ってw
笑いが止まらないが、周りのひと(魂)には気取られぬように列に並び直した。
零番カウンターで並ぶこと数日、国隆に番がまわってきた。
数日間、妄想を膨らませながら。
「はい、えーっと、秦国隆さんですね。
カチャカチャ・・・えーっと、魂の洗浄は免除と・・・
転生先はアルカディア星系の惑星プラネテス、
ヘルムート王国アインスベルグ男爵領アインスベルグ男爵四男ですね
・・・カチャカチャ・・・
はい、こちらを持って転生門へ行ってください。」
「はい、ありがとうございました。」
ほくそ笑んで転生許可証を持って転生門へと歩みを進めた。
チートは貰うのではなく、いかにスマートにするかがミソである。
さて、次の話はどうなるやら・・・
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