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第二話 ここはどこ

「とりあえず…なんか面白そうな事態だってことだけはわかるな」


陽向がニコニコでいう.陽向はみんなから人気があって,こいつがしゃべり始めるとみんな耳を傾ける.六金だけはペンで指を刺して遊んでいた.何やってんだ?あいつ


「全然面白くない!」

「何言ってんだ,さっきから水で遊んではしゃいでたくせに」

「あ,いや…それは」


楽間水希は水の魔法が使えるらしい.部屋の片隅が濡れているのは水希のせいだ.


「でも,あんまり楽観していい状況じゃないと思うな.私は半径500m以内の興奮してる生物を探知できるんだけど,ここから200mくらい上は生物で埋め尽くされてる.みんな興奮してるみたい」


尾城結衣が言う.尾城が手を前に突き出すと,そこには半透明の球が表示された.球の上のほうの赤い点が興奮している生物なのだろう.1000は超えている.そして赤い点の下方,球の中心に青い点が一つ.これは尾城本人だ.青い点は動かないが,赤い点は団体で素早く動くものや止まって動かないもの,入り乱れているものなど様々だ.


「喧嘩でも起こってんじゃねえの」

「ここで議論してても仕方ないから,上を見に行かないか」


海人の提案にみんなが賛成する.海人は自分専用の剣を召喚できる.自分は武器があるからと率先して先頭を行った.その後ろに陽向,俺と続く.ホコリ一つない石の螺旋階段は無機質で不気味だ.


「はぁー,何段あるんだこれ!」

「200m上までいかないと生き物いないんだろ?少なくとも,それだけの距離上らないといけないな」

「だっっっっっる!」


ん?何か聞こえる.後続の文句に混じって,何か雄たけびのようなものがする.


「何か聞こえない?」

「俺も思ってた」

「俺も」


陽向と海人も聞こえていたようだ.


「ほんとに喧嘩してるのかもな」


浩一の冗談が現実味を帯びてきた.だけど,尾城が『興奮した生物で埋め尽くされてる』と言ってた.本当だとすると,喧嘩じゃなくてヤクザかなんかの抗争かもしれない.


「警戒はしておこう」


海人が剣を強く握った.もし本当にヤクザが抗争していたなら,剣は無力な気がするけど大丈夫か?


階段を一段上るたびに喧騒が大きくなる.怒号や悲鳴,爆発音のようなものも聞こえる.そして,ついに出口の光が見えた.奥はまぶしすぎて様子がわからない.後ろを振り返ると,みな真剣な表情で息を殺していた.200mも階段を上っていたはずなのだが,誰も汗一つかいていない.まさか,スキルに加えて体力まで向上しているのかな?デブの土谷智樹まで普通にしているのは異常だ.


「おいデブ,疲れてないんか?」

「デブ言うな!」

「しっ!静かにしろよ.その反応で疲れてないのは分かったから」

「す,すまん」


「私,索敵してみるね」


尾城が名乗りを上げる.目をつむり…そして倒れた.尾城の彼氏の浩一がすぐさま受け止める.まだ意識はあるようだが,明らかに体に力が入っていない.


「お,おい!?」

「あ…ごめん.なんか,おかしいなぁ」

「なにがあったんだ?」

「スキルで,私たちの周りに何万人もいるってことがわかって…そしたら,力が…」

「何万!?えげつないな….数が多すぎて,脳がパンクしたんじゃないか?」


確かに,そんな量の情報が一気に入ってきたらキャパオーバーになりそうだ.地下で索敵した時にパンクしなかったのは,おそらく索敵範囲が球状になっているからだろう.


「さっきみたいに,マップで表示できないか?」

「ちょっと無理そう…」


さっき地下で見たマップでは,俺たちの直上には赤い点がなかった.つまり,出口のすぐ近くは安全かもしれない.少数で様子を見に行くべきだ.


「俺と一緒に少人数で,外に出てみないか?海人にはとりあえず来てほしい.ほかに来たい人がいれば」

「当然行く!」

「俺は結衣と残る」

「私も怖いから残りたいな」

「吾輩,興味あるでござる」

「私も見に行きたいなあー.なんかあっても,私が傷を治すから」


浩一と楽間水希は残り,陽向と武藤雄樹と不藤亜美がついてくることになった.不藤はみんなの役に立って好感度を上げたいだろうから来ると思ったが,武藤まで名乗りを上げるとは思わなかった.反応のないほかのメンバーは居残りで良いだろう.


「マイケル氏,見てるでござるよ…ドロー!モン〇ターカード!」


武藤が突然手を高く上げた.その手には,そこから持ってきたのかスライムの絵が描かれたカードがあった.


「スライムを召喚!」


言い終わると同時に,カードが光の粒となって武藤の前に移動しスライムになった.大きさは1mくらいか,結構でかい.


「こいつを盾に進むでござる」

「なんだこいつ,気持ち悪いなw」

「馬鹿にしないほうがいいでござる」


陽向に気持ち悪いといわれたスライムは,まるで怒っているかのように陽向にまとわりついた.


「うわっ!げぇ!やめろ!」

「スライム氏,その辺にしておくでござるよ」

「あっはははは!べとべとじゃん!」


武藤に諭されたスライムは陽向から離れたが,陽向の服はべとべとになってしまった.

そして海人が不満げな顔でこっちを見ていた.


「おい,早く行こうぜ?」

「そうだね,行こう」


スライムと海人を先頭に光に向かって進む.


「うー,まぶしい」


不動の言う通り,地下から上がってきたせいでとてもまぶしい.

何度か瞬きをしているうちに,ようやく周囲の様子がわかってきた.


「教会…?いや,神殿?」

「うおー!なんだここ!すっげえ!」

「こんな場所,画面の中でしか見たことないでござるよ!」

「とりあえず…危険はなさそうだね,よかった.」


ここは大きな四角い部屋のようで,天井にのみ窓がある.俺たちが出てきた場所は台の上で,奥に扉が見える.扉から今いる場所まではカーペットが敷かれていて,その両脇には柱が何本もたっている.壁には50人ほどの人の顔が彫られていて,発光している.

ここは陽向の言う通り,教会かなにかのようだ.

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