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マリアとの合流

 メルティ達と別れたアレンは、マリアがいるかもしれないと思い、ギルドの方に移動した。すると、ギルドに着く前に、食料品の入った紙袋を持ったマリアに遭遇した。マリアは、いつもの修道服に身を包んでいた。ベールから綺麗な金髪が溢れている。


「アレン?」

「マリア、丁度良かった。少し話があるんだ」

「私に? じゃあ、これを持ってくれますか? 教会まで運ばないといけませんから」

「うん。お安いご用だよ」

「ありがとうございます」


 アレンは、マリアが持っていた紙袋を抱える。そして、一緒にマリアが住んでいる教会に向かって歩いていく。


「まだ、街にいてくれて良かった」

「アレンの抜けた穴は、決して小さなものではありませんでしたから。それを埋めるために、まずは近くのダンジョンで、色々と試しているんです。アレンは、何をしているのですか?」

「僕は、冒険者の指導員をしてるよ。今日も、その仕事をしてきたんだ」

「指導員……確かに、アレンに向いている仕事ではありますね」


 ニコッと笑って、マリアがそう言った。端整な顔立ちから繰り出されるその微笑みは、向けられた対象でない人をも魅了してしまう。ただ、アレンはそれにデレる事なく普通の顔をしている。これは、何度も見ているからという理由では無く、最初からだった。


「そうかな?」


 周囲が立ち止まってマリアに見惚れている中、アレンは平然と返事をした。


「ええ、アレンは、いつも全体を見ていましたから。新人さん達の事も細かく見て上げる事が出来るでしょう?」

「まぁ、出来ていると良いけどね。一人気難しい子がいてね。そのことで、頼みたい事があるんだ」


 アレンは、ここで本題に入る。いつまでも世間話をしているわけにもいかないからだ。


「そうでしたね。何でしょう?」

「治療をお願いしたいんだ。その子の妹なんだけど、病気で苦しんでいるらしい。その治療費を集めるために、早く強くなりたいだって。ちょっと無謀が過ぎるから」

「なるほど、私を薬代わりにするということですか」


 マリアは、ジト目でアレンのことを見る。アレンは、焦って弁明する。


「い、いや、違うよ。いや、合っているかもだけど……完全な治療が出来なくても、少し病状を和らげるだけでいいんだ。強くなるまでの時間を稼げれば……って結局薬代わりではあるかもなんだけど……

「ふぅん……」


 マリアが、アレンの顔を覗きこんだ。翠緑の眼がアレンの眼を捉えている。


(これは、ダメかな。まぁ、元々ダメだと考えていたけど。さすがに、こっちの都合が良すぎるし)


 アレンが、リックになんて説明しようかと考えていると、マリアがくすっと笑う。


「じゃあ、交換条件で請け負います」

「交換条件?」

「はい」


 マリアが要求するものが思いつかず、アレンは恐る恐るその内容を訊く。


「えっと……条件って?」

「ちゃんと対等なものですよ。アレンのお願いを聞きますから、今度、私のお願いも聞いて下さい」

「それだけ? なら、お安いご用だけど……」


 アレンは、どんなものがくるかと身構えたが、普通の要求だった。いや、考えようによっては、重い要求だとも言える。どんな無茶な願いでも聞く必要が出て来るからだ。それでも、アレンは条件を呑むことを決めた。それが、リックのためになると信じて。


「決まりですね。では、早く教会に行ってしまいましょう。治療する時間も必要ですから」


 マリアは、嬉しそうに微笑んだ。


「ああ、そうだね」


 アレンとマリアは、二人並んで教会へと歩いていく。教会に着くと、沢山の子供達が出迎えてきた。


「アレンだ!」

「本当だ!」


 子供達がマリアと一緒に来たアレンに群がる。


「皆、相変わらず元気だね」


 この教会は、孤児院としても運営している。この子供達は、全員親が亡くなったか親に捨てられたかした子供達だ。


「また、増えたの? 見たことない子供が増えている気がするけど」


 アレンは、マリアの付き合いで何度か教会に来ている。そのため、子供達とも面識があるのだ。


「そうですね。両親を一遍に亡くした子を見つけてしまったので」

「運営は出来ているみたいだけど、資金繰りは?」

「私のお金をほとんど入れているので、問題はありませんよ」


 マリアは何でないかのようにそう言った。冒険者として上位に位置するマリアの資金は、かなり多いが、貰う都度教会に寄付しているということは、貯金はあまりないと考えられる。


(それは、結構な問題なんじゃないかな。多分、普通に寄付するって言っても聞かないだろうから、どこかで隠れて寄付しておこう)


 マリアが少しでも楽できるようにと考えて、アレンはそう決意した。アレンは、あまり散財するタイプでは無いので、お金はかなり貯まっていた。


「おやおや、珍しくお客様が来ているみたいね」


 教会の奥から、教会の主であるシスター・カトレアが来た。


「お久しぶりです、シスター」

「ええ、久しぶりね、アレン。今日は、祈りを捧げに?」

「いえ、マリアに頼みがあって来たんです」

「そう。じゃあ、その荷物は預かるわ」


 シスター・カトレアが、アレンの持っていた紙袋を受け取り、教会の奥に戻っていった。その際に、アレンに群がっていた子供達も連れて行った。


「では、その子の元に向かいましょう」

「そうだね」


 アレンとマリアは、教会を離れて、スラム街に向かった。

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