表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒のシャンタル 初稿置き場  作者: 小椋夏己
第一部「第二章 第五節 もう一人のマユリア」(初稿)
22/27

 1 作戦会議・表(初稿)

文字数を2100文字以下にしたかったので、こまこまと変わっていますが、内容はほぼ変わりません。

 その日、トーヤとダルはその後すぐに部屋に帰ってきた。

 

「早かったですね」


 ミーヤがお茶を用意しながらそう言った。


「まあ仕事の内容についてはあの時とそう変わることがなかったからな。まだ話せねえってことが多過ぎる、どうしようもねえ……」


 トーヤがお茶を飲んでホッと一息つきながらそう言う。


「ダルさんはお部屋の方に?」

「ああ、あいつがこっち来たらリルも来そうだからなあ」


 そうなのだ。ダルの世話役を拝命したリルは役がついたことがうれしくてうれしくてたまらないらしく、ダルの姿を見るとどれほど忙しくても用はないかと期待に目をキラキラさせながらやってくるのだ。


「あの人もあんたと一緒で忙しかろうに。ありゃダルがそのうち()を上げるぞ」

「リルはまじめなのです」


 そう言ってミーヤが笑った。


 トーヤはミーヤの笑顔を見ると気持ちが緩んだ。

 そして聞いてみたくなる。


 俺のことを嫌になってないのか?


「なんでそのまんまなんだ……」


 ついボソッとつぶやいた。


「なんでしょう?」

「え、あ、いや……」


(そもそも好かれてるなんてそれが勘違いだ。単に一生懸命に役目を努めようとしてるだけなんだよ、だから態度が変わるわけがない)


 そう自分に言い聞かせようとするが、そうすると思い出す言葉がある。


(命をかけてお守りします)


 トーヤが自分が生贄ではないかと言ったことにミーヤはそう言ってくれた。

 その言葉を信じた。


「なにかありましたか?」

「いや、別に……」


 もう一口お茶を飲む。


 なんとなく沈黙が重くなった頃、ダルが本当に音を上げてトーヤの部屋にやってきた。


「ここからは少し大事な話になるから」


 そう言ってリルと、一緒にミーヤも部屋から出す。


「助かったよ~あの人、ずっと俺の部屋にいるんだよ~用事はないって言ってるのに何かないかないかって、困ったよ~」


 半泣きのダルを見てトーヤが大爆笑した。


「笑うことないだろー」

「すまんすまん」

 

 そう言いつつも涙が止まらないぐらいおかしくてたまらない。


「トーヤも最初そうだった?」

「ん、何がだ?」


 まだ笑いながら返事をする。


「いや、ミーヤさんだよ」

「え?」

「ミーヤさんもあんな感じでずっと用事がないかって聞いてきたかってことだよ」

「いや、そんなことはなかった、かな……」


 思い出してみると最初にいた部屋はもっと広く、それも関係があるのかも知れないが、そんなことはなかった気がする。


「なかったな……でも気を使うこともなかったし、言わなくても足りないことはないようにしてくれてたと思う」

「ミーヤさんはすげえなあ……」


 ダルがしみじみと疲れ果てたように言うのでまたトーヤが大笑いした。


「あ~でも俺も一回そんなことがあったわ」

「ミーヤさんがか?」

「いや、カースから帰った翌日にミーヤが休みになってな、代わりに最初にリルが来たんだが、そんでちょっとまあ、俺の言ったことが嫌だったかなんかで侍女頭のおばはんに交代されたことがあった」

「え、キリエ様がかい?」

「一日中部屋にいられてよお……」

「そりゃあ……」


 ダルがゾッとするという風に自分の両肩を抱き、それを見てまたトーヤが笑った。


「まあ、そういうのはいいとして、とりあえず真面目な話もしとくか」

「作戦会議だな」

「そうだ」


 今の段階で分かっていることをもう一度整理するが大したことはできない。

 カースの村長に聞いた話が気にはなるが、秘密だと口止めされている。

 誰にも言わないと誓ったものの、本当にそれでいいのかどうかすら分からない。ことによると話さない方が重大な間違いということすらありえる、それほどのことだ。


(ダルと、それからミーヤにも話してもいいものなのか……)


 悩んだものの、もう少しだけ情報を仕入れてから結論を出すことにする。時間はまだある。


「ってことはだ、結局今決められることはあの洞窟を通ることと、そこから船でキノスへ行くこと、だけか」

「キノスって?」

「へ、お前知らなかったのか? あの船で行く町の名前だよ」

「いや、町の名前は聞いてなかったなあ。誰に聞いたんだよ?」

「おまえのじいさんに」

「え、そうなの? 俺も聞いたことなかったのに」

「そうだったのか?」


 そう言えばダルは「普通の町」みたいにしか言ってなかったなと思い出す。


「ってか、なんでじいちゃんとそんな話したんだ?」

「そういやまだダルには話してなかったな」


 あの洞窟でルギと出会った時のことを話す。


「知らなかった……」

「ルギもダルは知らなかっただろうって言ってたな」

「なんか、俺が小さい時にあったみたいに聞いた気もしたけどそれがルギだったんだ……」

「それも確かめたくてな、そんでカースへ行ってきたんだ」

「そうか」

 

 少し考えてダルが言う。


「そんじゃあれかな、ルギも仕事の手伝いしてくれるってことなのかな?」

「え?」

「だって宮からの命令でトーヤに付いてたわけだからさ」

 

 考えてみたこともなかった。敵だとばかり思っていた。

 

 言われてみれば嫌なやつではあるが敵対するようなことはしたことがなかった。

 あそこで戦うことになったのもトーヤが斬りかかったからだ。

 もしかしたら何もするつもりもなく、言ってた通りに宮まで連れ帰るだけのつもりだったのか?


「ルギについても聞いてみる必要があるか……」

「だと思うよ」


 こうして第一回目の作戦会議が終わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ