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黒のシャンタル 初稿置き場  作者: 小椋夏己
第一部「第一章 第三節 動き始めた運命」(初稿)
15/27

12 洞窟(初稿)

文字数を2000文字超えにするのと同時に、洞窟の様子が少し殺風景、もう少し詳しく書きたいと思って書き加えました。

どんな洞窟か、またもう少しイメージしやすくなっているといいのですが。

 ダルがランプで照らした洞窟内は、なるほど人工のものであると分かる作りになっていた。


「足元気をつけてな、暗いしちょっと滑るかも」


 ダルに続いてトーヤも足を踏み入れる。

 2人が並んで通れるぐらいの幅と、立って歩いてもまだ十分な高さがある。もしかしたらやはり馬も一緒につれて入ることも考慮されているのかも知れない、そのぐらい高さだ。


「思ってたより大きいな」

「だろ?馬に乗っては無理だけど引いてならなんとか行けるから、王宮から馬連れてどこかから出て乗って逃げることもできるかも」

「こりゃ案外本当にそうなのかもな。だったらなんで使われなくなってんだろうな」

「さあねえ、でもまあシャンタリオは平和だからな。単に必要なくなって忘れられただけかもしんねえな」

「そうしてカースの男たちの役に立ってるのか、愉快なことになってんな」

「全くだ」


 2人で笑いあった。


 ランプの灯りではあまり遠くまで見えないが、最低限足元を照らして歩くのに問題はなさそうだ。


「よく踏みしめられてるな、こりゃみんな結構使ってんじゃねえの?」


 トーヤが冷やかすように言う。


「だから使っててもそういうところ行くだけじゃねえってば」


 またダルが居心地悪そうにそう言うのでトーヤが笑う。


「もしも使ってアミちゃんに知られたら困るもんなあ」

「ば!」


 暗闇の中でもダルの顔から火を吹くのが分かるようだった。


「まあまあ、まかせとけって、トーヤ様がうまく取り持ってやるってば」

「いいってそんなの!」

「遠慮することねえって、親友じゃねえか」

「いいから、行くよ!」


 前を向いてとっとと歩くダルの後ろ姿にトーヤが笑って付いていく。


 思った以上に歩きやすい道であった。カースの砂地を歩くよりよっぽど快適に進める。

 

 しばらく歩くと進む方向の先にうっすらと洞窟の中とは違う暗さが見えてきた。


「ほら、あそこが海だ」

「うん」


 さらに進むと夜の闇が次第に大きくなってくる。潮風の気配もしてきた。

 

「ここまでだよ」


 ダルが言って洞窟から外を覗く。

 すぐ足元から波の音が聞こえる。


「今夜は新月(しんげつ)大潮(おおしお)だ、すぐそこまで水が来てる」


 ダルが言う通り洞窟の入り口のすぐ下に打ち寄せる波のしぶきが足元まで飛んでくる。


「引き潮の時にはそこの」と洞窟の入り口の横を指差し「階段みたいになってるとこから下に降りるんだけどね」


 トーヤは言われたように洞窟から首を出して右側をのぞいてみた。

 崖を削って海の中まで階段のようにつながっているのが伺える。


「なるほど、こっちも本格的に作ってあんだな」

「そうだな」


 階段のすぐ横に小さな船が2(そう)(つな)いであり、波に乗ってゆらゆら動いている。


「この船で行けるのか」

「俺は行ったことないけどこれで行けるって」

「そうか・・・」


 小さな船だがこれで行けるぐらいの場所に他の町がある。

 そしてその町からつながっている可能性があるのだ、トーヤの故郷まで。

 

 トーヤは顔を上げて右の崖のずっと向こうを見た。

 (かす)かに灯りのようなものが見える気がする。


「あれ、あそこでちらちらしてるのがその町か?」

「そうだね、多分」

「そうか・・・」

 

 トーヤにはそれがやっと見つけた暗闇の先の灯りに見えた。


 ざぶーんざぶん、波の音だけがこだまする。永遠に続く。


 トーヤがじっと町らしき灯りを見ていると突然ダルが言った。


「行っていいぜ、トーヤ」

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