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序章
カールは後ろに役者たちを引き連れ、王太子宮の大広間に立っていた。目の前には恐れ多くもアルフレッド国王陛下、アレキサンダー王太子殿下、グレース王太子妃殿下がいらっしゃる。
今はまだ何も知らないが、知ってしまったあと恐ろしくなりそうなロバート様も、今は穏やかな表情で隣のローズ様の肩を抱いている。
一世一代の舞台だ。商人のカールにとって、芝居は夢と憧れだった。そんな自分が、芝居に生きる人々の最大の目標である、王族を前に披露すると言う機会に恵まれたのだ。随分と長いことかかったが、この場に立つと、その過去も一瞬のような気がした。
震える足を踏みしめ、カールはお辞儀をした。イサカの町にいたころ、ロバート様に頼んで教えてもらったお辞儀には自信があるが、夢見心地の今、きちんとできているのだろうか。
ここまできたからには、きちんとやり遂げなければいけない。それが、興行主としての務めだ。
何度も練習した口上を述べるため、カールは大きく息を吸い込んだ。