7話
屋敷 食堂
「きゃ。痛っ~。もう服がびしょびしょじゃない。」
上を見上げると天井に大きな穴が空いていてさっきまでいた部屋が見える。
そりゃ2階であれだけ大量の水を出せば耐えきれなくて床抜けるわよね。ただでさえ木でだいぶ負荷かかってたのに。あれ?てことは半分くらい私のせい?
「いやいや。そんなこと無い…はずよ…。」
「おーこれはまた見事に穴がいたな。」
アザールが瓦礫を払いながら言う。
「なんでそんな呑気なのよ。まったく。もう少し使う魔法考えてよね。」
「けど霧も晴れたし仕切り直しにはなったろ。」
たしかにあざの言うとおり霧は晴れたしキタルファとやらの姿も見えないからいいって言えば良いんだけどね。
「もうちょっとねぇ…。
ところで落ちるときにオースターの声が聞こえた気がするんだけどアザールは聞こえた?」
「お、やっぱはるも聞こえたか。てことはこの部屋の何処かに居るってことだよな。とは言え…。」
瓦礫やら何やらが散乱してる部屋を見渡す。
「まぁ通信魔法で呼びかけて見るか。」
アザールが通信魔法で呼びかけようとしたら、瓦礫の一部が吹き飛んだ。
「うがー!アザールのやつ部屋の中で大量の水、ぶちまけるなんて何考えてんだあいつ!」
「オースター!て何その変な格好は?どこで拾ってきたのよ。」
吹き飛んだ瓦礫の下から変な格好をしたオースターが飛び出してきた。
「うへぇ。な、なによ。」
オースターが怒りながらこっちに向かってくる。変な格好って言ったから?そんなに気に入ってたのあれ?
と思っていたら横を通り過ぎていき
「おいアザール、部屋の中で何考えてんだ。」
「はっ、こっちはお前が居ないせいで大変だったんだぜ。お前こそさっさと捕まって何考えていやがる。」
またいつものが始まった…。
「ほらあんた達まだ敵を倒した訳じゃないんだから。喧嘩してる場合じゃないでしょ。」
「人の屋敷を随分と派手に壊してくれたわね。にしても私を前に随分と余裕じゃないの。」
「ちぃ。もう戻ってきやがったか。」
「3人揃ったからにはあんたなんか楽勝なんだから。」
もう戻ってきた。けどさっきは苦戦したけど実際あの霧がどんな効果があるのかは解かんないけど、回避主体である以上3人揃った今ならいけるはず。
「さっきまで手も足も出なかったくせに一人増えた程度で随分と大きく出るじゃないの。」
「な、なんた急に霧が。」
また霧が出てきてキタルファの姿が見えなくなる。けどねこっちだって
「そういう能力なのよ。それよりオースター行くわよ。アザールもいいわね。」
「俺はいつでもオーケーだ。こっちは待ちくたびれてんだよ。」
「なんかわからないけどいつものだな。」
「「「おおいぬ座の加護のもとに!」」」
そう胸に手を当て宣誓するとあたりが白い光に包まれた。
「ま、まさか一等星の加護持ちだったとはね。ただいくら一等星と言えども私の位置を見つけられなければ…。」
「残念だったわね。オリオーンの猟犬は必ず獲物を捕まえるのよ。チェイスサンダー!」
剣を掲げると剣先からおおいぬ座の加護を受けて必中の効果を帯びた一筋の雷がキタルファに向かって飛んでいく。
威力はあれだけど一瞬動きを止めさえすれば
「捉えた。アイスロック。とどめは任せたぞオースター。」
アザールが雷が飛んでった方向に指を向け魔法を唱える。
「な、なによこれ。体が冷たくなって動かない。」
「ムリフェイン、ど派手に決めるぞアルティマソード!!」
「嘘よ。こんなガキともに弟共たけしゃなく私までやられるなんてっ…」
オースターの手が巨大な大剣に変わったかと思うと建物もろとも切り裂きながら振るわれた。
「一件落着ってね。」
するとキタルファが倒れたことで術の効果が切れたのか霧が晴れていった。
そして気づいたらオースターが元の姿に戻ってて
「オオカミっ!」
「うおっ。どっから出てきやがった」
となりに腕を組んだオオカミが浮いていた。
「地下牢で拾った。」
「拾ったとは随分な言い草だな。にしても随分と派手にやったなオースター。屋敷の中なのに空が見えてるぜ。」
何でも内容に拾ったっていうオースターとさっきのオースターの攻撃で切断された屋敷を見て笑ってるオオカミ。
「そんな犬を拾ったみたいに。いやでもオオカミだから犬で合ってるのかしら…。」
「てかそもそもオオカミなのか?明らかにオオカミじゃねーだろ。」
・・・
・・
・
統括ギルド本部 道中
「なるほどな。そしたら俺もムリフェインと合体できんのか。」
「波長が合わないと無理だからアザールとは無理だな。」
「だってよ。残念だったな。アザール。」
「なんだと。」
「はいはい。喧嘩しないの。」
帰り道も説明してもらったけどほんと不思議よね。こんな生き物今まで見たことないし、魔力の感じが若干他の生き物と違う…。
「な、なんだはるよ。そんなじろじろ見て。」
「じっくり調べてみたいわね…。取り敢えずまずはこれに魔力を注いでみてくれないかしら。」
「それは帰ったらな。はるも人の事言え無いじゃねぇか。」
「むぅ…。」
アザールに無理やり後ろに引っ張られる。
「まずはさっさと本部で依頼の報告するぞ。」
そう言ってギルド本部のドアを開けて入ったアザールがすごい慌てた様子出てくる。心なしか顔も真っ青に見える。
「や、やべぇ。」
「どうしたのよ。さっさと中に入りなさいよ。」
まったく何をそんなビックリするようなことが。
アザールを押しのけて扉を開けたら鎧を着た女の人が怒気をはらませ仁王立ちしていた。
「こ、これはまずい。セラン完璧に怒ってるじゃない…。」
「はるもアザールも何言ってんだ。セランがここに居るわけ…。」
オースターが意気揚々と本部の中に入って行く。よし私はこの隙に…
「どこに行くのだ。はるにアザールよ。」
「ひぃ。」
その声に釣られて後ろを振り返ると目の前にセランがいて、奥の方にオースターが簀巻にされて転がってた。
「私を前に逃げるとはいい度胸ではないか。」
統括ギルド本部 会議室
「すまぬな急に無理を言って会議室を借りてしまって。」
「い、いえ!S級魔道士様のご要望ならいつでも。そ、それではごゆっくり。」
そういって案内をしてくれた受付の人が会議室のドアを閉めて帰っていく。あぁ最後の希望が…。
「さて、お前たちがどうしてこうやって正座をさせられているか分かってるな。」
「おい、なんで今回のクエストがセランにばれた。」
隣に正座させられてるオースターがヒソヒソ話しかけてくる。
「あんたが初めの受付の時にギルドカードを出したからでしょ。あそこで学生証にしとけばバレなかったのに。」
「私語をするとはとういう了見だ。」
「「い、いえ!」」
「まあいい。それよりお前たち。学園をサボって任務に行ったらしいな。それも泊りがけでだ。なにも任務に行くなとは言わん。けどだなそれにはきちんと正当な手続を踏んだ上で……。」
「で、でもだな今回は緊急で申請を出してる余裕がだな。」
セランが一息着いたタイミングでアザールが反論する。怒ってるセランに反論するなんて。けど今なら
「そ、そうよ。そのおかげで沢山の禁制の魔導具とか見つかった訳で…。」
「たしかにその点だけ見れば評価できよう。だがな、手柄以上にお前たちが今回の任務中に壊した物の値段がどれほどになるか分かって言ってるのか。むしろよく弁償代が発生しなかった位だ。だいたい……。」
「てことは、まさか依頼料は。」
そんなウソよ。あれだけ頑張ったのに、頑張ったのに…
「無しに決まってるだろ。はぁ今日はもういい。ただ今度の学院の卒業試験覚悟しとくんだな。わかったな。」
そんな…そんな。依頼料無し……。
「返事はどうした。」
「「「はい!」」」
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