5話
屋敷 大広間
目の前には気絶した二人が転がっている。けど何か忘れてるような気がするのよね…って
「情報聞き出すのに気絶させちゃダメじゃない。ほら起きて。起きなさいよ。」
勢い余って気絶させちゃけど起こすのに揺すってみるがまったく起きる気配がない。
「駄目だ。こっちも当分起きそうにないな。取り敢えず縛っといてほか探索しに行くか。」
本当はこいつらから情報を聞き出せれば早かったんだけどしょうがないわね。
「そしたらアザールお願いしていい?私もう木使い来ちゃって帰って補充しないと蔦出せないのよね。」
こんな事になるなら木属性のガジェットをいくつか用意しとけば良かったわね。いやそうするとまたお金が…。
「たく、しょうがねーな。」
そういってアザールが氷で拘束しようとしたら
「その必要は無いね。小童ども。」
部屋の奥のドアから妖艶な女の人が出てきた。そして広間を見渡したかと思うと。
「はぁー。愚弟共と来たらこんなガキどもにいいようにやられるとは…。情けないったらありゃしないね。あんた達人様の屋敷で相当おいたしてくれたみたいじゃないの。無事に帰れるとは思わない事ね。」
そう言いこちらを睨みつけてきた。
「どうするアザール。さっきの奴らと違ってなかなか手ごわそうよ。」
あの人、武器は持ってないけどさっきの二人とは格段に威圧感が違うわね。いくらこっちは二人とはいえ連戦だし…。
「どうするもクソも逃してくれそうじゃない以上やるしかないだろ。」
「あらこの私を前にしてお話とは随分余裕ね。私好みに木が生えてる事だし仔馬座のキタルファの本領魅せてあげるわ。」
言い終わるやいなやキタルファが薄いオレンジの光に包まれた辺りに霧が漂ってきた。
「一人で加護を使えるとか。オースターのやつ見つけたら小言の1つや2つじゃ許さねぇぞ。はる、ガジェット1つ空にしたみたいだけどまだ行けるか?」
「大技出さなければなんとか、ね。」
とは言ったものの私自身の魔力もそんなにないし長期戦は避けたいわね…。
「そう言うアザールは?」
そう言いつつ辺りを警戒しながら空のガジェットを新しいのに取り替える。
「俺ははると違って燃費がいいからな。
後ろだ!」
アザールの声に反応し咄嗟に剣を後ろに回す。その瞬間ちょうど剣を構えたところにキタルファの拳が振るわれた。
霧のせいで反応が遅れた。
「あら運がいいわね。次はこうも行かないわよ。」
反撃しようとするがすぐに霧に紛れて姿が見えなくなる。
「大丈夫か?」
「うん。けど想像以上に霧が厄介だわ。」
視界の狭さにやきもきしながらも背後をつかれないよう背中合わせになる。
「あらあら必死になって探しちゃって。見えない恐怖に怯えるといいわ。」
「そこか。アイスバレッド!」
声を頼りにアザールが氷の弾丸を飛ばす。
「ふふ。ハズレこっちよ。」
聞こえた声とは逆方向の所から今度は蹴りが飛んでくる。
「声とは反対側から、どうなってるの。」
困惑しつつも辺りを警戒してるとかすかに人影が!
「見えた!サンダー!」
すかさず剣先を向け、一筋の雷を放つ。
「また見事に騙されちゃって。どこ狙ってるのかしら。」
すると今度はいきなり目の前に表れて掌打を放ってきた。
「ここまで気配を捉えられないって、霧のせいだけじゃないわよね。」
「あぁ多分な。直前にやつが使ってた加護がなんか関係してんだろ。」
「あら。よく気づいたわね。そう私の加護、仔馬座は隠れるのが主としてるのよ。ただそれに気づいたとしても私を捉えるのは不可能よ。」
話してる間にも霧の中から突然現れては消えてのヒットアンドアウェイを繰り返してくる。
「種明かしとは随分と親切じゃねーか。」
「今はなんとかガードが間に合ってるけどこのままじゃ…こうなったら、魔力量が不安だけど
サンダーボール。」
周囲に満遍なく魔法を放つ
「そんな苦し紛れの攻撃が私に当たるとでも。」
「それがただのサンダーボールだとでも。からのスパーク!」
サンダーボールが一斉に辺りに電撃を撒き散らす。
「きゃぁぁぁぁっ」
よし。当たった。いまのは確かに手応えが
「ナイスだはる」
「なんて言うと思ったかしら。当たりはしたけど器用貧乏の地球タイプの魔道士の小手先の範囲技じゃねぇ。それにだいぶ消耗してるみたいね。込められてる魔力も少なかったわよ。」
一部霧が晴れたかと思うと服が多少煤れはしてるもののほほ無傷のキタルファが出てきた。
「やっぱり魔力を節約したせいか威力が…。」
「このままじゃ分が悪い。一旦仕切り直すぞ。ウォーターハザード!」
アザールもこのままでは勝ち目が薄いと判断したの盤面をリセットする為に大量の水を生み出した。けど
「ちょ、2階でそんな大量に水を出したら…。」
屋敷 地下牢
side オースター
「うぎゃーいってー!あいついきなり人の頭を後ろから叩きやがって!!あれ?ここ何処だ?」
たしか出前の振りして潜入しようとして、そしたらでぶっちょからいきなり
「うがー。しかも料理も取られてお金も貰ってないぞまだ。今すぐ取り立てる」
ここから出る為に牢屋の割には明らかに貧弱そうな入り口に向かってタックルする。
するとバチッっと大きな音がして後ろに弾かれ服に小さな火がついた。
「うぎゃ!あちあちあちあち。」
ごろごろ回って慌てて火を消すと今度は慎重に改めて入り口を観察してみる。
「うーん。扉が魔導具に…いや、これは結界が張ってあるのか?火が着いたって事は火属性…。」
・・・
「あーもう。めんどくさい!なんでもいい。殴ってぶっ壊す。これくらいの結界なら魔力をちょっと込めて、どっせい!」
手に魔力をこめて殴るとあっさり扉もろとも結界がこわれて自由に外に出れるようになった。
「なーんだ。初めからこうすりゃよかったのか。けど外に出たけど広い牢屋だな。はしが見えないぞ。これはどっちに進むべきか。」
扉の破片を手に取ると地面に立てて手を離す。
「うん。左に倒れたから右に行くか。」
・・・
・・
「あれ?行き止まりか。くっそ大人しく倒れた方に進んとけばよかっt…って何だこりゃー!!」
目の前には先程の牢の結界とは比べ物にならない厳重な結界が張られていてその奥には狼っぽい何かが居た。
「お前、狼か?」
するとそのつぶやきから聞こえたのか狼から返事が帰ってきた。
「おい、ここの屋敷の者じゃないな。ならなんでもいい取り敢えず後で説明はするから屋敷の何処かにある結界の鍵を持ってきて俺をここから出してくれないか。」
「なんだお前悪い狼じゃないのか?
たしかに、ここの奴らに捕まってたって事は良い奴って事だよな。」
じゃなきゃギルドに依頼が出るはずがないしな。ここの屋敷の奴らにとって都合の悪い事を知ってるかもしれないし…。よし、じゃあ助けるか。
「そうだ。とにかく鍵を…。」
「そんなもん必要ないぞ。この強度の結界だと、ちょっと集中するから静かにしてくれ。」
かなり厳重だから一発で決めないとな。ミスったときの反動が怖い。ここは多めに魔力を集めて。
「すこし離れとけよ。はぁぁ…どりゃ、しゃ!!」
結界目掛けて勢い良く拳を降るとガラスが割れる様な音と共に結界が砕けちった。
本作を応援したい、楽しかった、続きが気になる
という方がいらっしゃれば、ブックマークへの追加や評価の方をしてもらえると励みになります。
評価は画面下の「☆☆☆☆☆」をワンタップ(ワンクリック)するだけで可能です。