4話
屋敷 大広間
兄と呼ばれてた背が高い軽装の男と体格のいい弟と呼ばれてた重装備の男と対峙する。
弟とか言われてた頭の悪そうなデブの方はオースターが呼び掛けたときに出てきた男よね。こいつなら何か知ってるかも。
「オースターを何処やったか教えてくれたら手加減してあげてもいいわよ。」
なんて言ってみたけど教えてくれるわけないわよね。
「おうおうおう。自分たちの立場が分かってないみたいだな。お前らなんか軽く捻り潰してくれるわ。なぁ兄ちゃん。」
「そう熱くなるな弟よ。我ら不屈のコップ座兄弟相手に軽口叩いていられるのも最初のうちだけよ。」
そう言うと弟の方が盾を構えて一歩前に出る。
やっぱそうなるわよね。まだ全然使ってないし木のガジェットのままでいっか。ちらりとガジェットにチャージしてある魔力の残り残量を確認するために剣の柄を見るとほとんど減っていないメモリが目に入る。
「コップ座なんざ聞いたことないな。先手必勝。いくぞはる。」
アザールの声に合わせて魔法を発動する。まずは軽く牽制で
「オッケー。木枯らし。」
「む。」
兄弟がいた場所に風が吹いたかと思うと次第に強くなっていき木枯らしか吹き荒れる。すると弟の方は盾を構えて受けたが、兄の方は大きく後ろに飛びぬいたため分断に成功する。
「そんな見え透いた攻撃に当では…そう言うことか。弟よ。」
狙いに気づかれた。けど気づいたところで
「アザール!」
「分かってるよ。アイスバレッド。」
素早く氷の弾丸が兄の方に向かって飛んていく。
まずは一撃。入ったわね。
「ぬぅ…この程度でアイアンウォール。」
そんな声が聞こえたかと思うと木枯らしを切り裂いて、大きな鉄の壁が表れて氷の弾丸が受け止められた。
「随分と強引ね…けどあのサイズの金魔法なら魔力消費もそれなりに。!!アザール上!」
すかさず大きな盾の上を飛び越えて剣を振りかぶりながらアザールの方に向かってる兄が見えた。慌てて木の柱を地面から伸ばすが一瞬の時間稼ぎにはなったものの、すぐ切り裂かれ花びらに変わってしまう。
けどこの一瞬があれば
「ナイスだはる。アイスソード。」
アザールが氷の剣を作り出して受け止める。
「そのまま足止めしといて。花吹雪。」
木の柱を兄に切り裂かれた時に辺りに散っていた花びらが妖しく、幻想的な光を放ちアザールと兄の周りを舞う。
「こ、これは一体。むぅ…」
すると突然うめき声をあげ剣も落とし膝をつく。
そこへようやく木枯らしを脱出した弟が盾を大きく振りかぶりながら兄の近くに立ってるアザールめがけてやってくる。
「大丈夫!?兄ちゃん。フルスイング。」
「い、いかん。来るな弟よ。」
弟の突撃に合わせ氷の剣だけ残しアザールがバックステップで隣に戻ってきた。残してきた氷の剣は盾での一撃を受けてバラバラに砕け氷の欠片が飛び散る。
「まさかここまで思った通りにいくとはな。」
隣に戻ってきたアザールがつぶやいて、手を前に突き出して閉じると氷の欠片が一斉に弟目掛けて飛んでいき衝撃で煙が立ち込めた。
煙が晴れると未だに花びらの幻惑が効いて立ち上がれない兄と先程のダメージで満身創痍の弟がいた。
「ふん。どんなもんよ。」
「大人しくオースターの居場所を吐くならこれで見逃してやってもいいぞ。」
「あとついでに重要な書類が保管してある場所もね。」
ダメージが深そうな二人を見てこれ以上は無理だろうと判断し、必要な情報を聞き出そうと投降を促した。
「「その必要はない。」」
しかし不敵な笑みを浮かべそう言うと辺りに美しい音色が流れると同時に男たちが薄いオレンジの光に包まれた。
「な、何よ。急に。」
「気をつけろ。あの光、奴ら星座の加護を使う気だ。」
あの明るさから見て等級は低いから理不尽な初見殺しはないと思うけど…
「ここまで使ってこなかったからないと思ってたけど、二人で発動できたとはね。」
「俺らはオースターがいないと使えないっていうのに。あのバカはどこいんだよ。」
「俺らが不屈って言われてる理由を思い知るがいいさ。なぁ兄ちゃん。」
「そうだな弟よ。等級が低いからと侮っていると痛い目に合うと思い知らしてあげようではないか。」
音色の激しさが増してくると床から葡萄のツルが勢い良く生えてきて逃げる間もなく捕まってしまった。
「こんなもの氷らせて…って何!」
アザールが氷らせてツルから逃げようとしたが氷らせたそばから新しいツルが生えてきて、むしろ初めより厳重になっている。
「私達を捕まえたって自分達が動けなきゃ意味ないじゃないの。」
「強がりはよすんだな。」
そう言うとあいつらの近くに生えていたツルにみるみるうちに立派な葡萄がなっていき、そこにいつの間にか手に持っていた青銅の耳飾りのついたコップを近づけると並々とワインが注がれた。
「ごくごくごく。ふぃー。これで形勢逆転だなぁ。」
「奴らはもう何もできまい。ゆっくりといたぶるとするか、弟よ。」
「ウソだろ…。全快だと。」
「それどころか状態異常まで解けるなんて。」
ワインを飲む事でダメージを完全に回復した二人が笑いながらゆっくり近づいてくる。
ちらりと手に持った剣のメモリを見るとまだガジェットにチャージしてある魔力が3分の2位残ってるのが確認できる。
これを使い切ったら帰るまで木属性は使えなくなるけどそんな事言ってる場合じゃないわよね。
「花は桜木、人は武士!!」
そう叫ぶとメモリが一気に3分の1以上減り剣に大量の魔力が注がれた緑色に発光する。
「今更何かやったって遅いんだよ。なぁ兄ちゃん。」
「そのとおりだ弟よ。何人たりとも我らの拘束から逃れることは…」
しかしそんな二人をあざ笑うかのように一際、剣が明るく光ったと思うと辺り一面に生えていた葡萄のツルが枯れていった。
「なんだと!兄ちゃん。」
「慌てるな弟よ。これでまだ振り出しに戻っただけだ。」
「まだこれで終わりじゃないわよ。アザール!」
すると今度は葡萄のツルに生え変わるように木が生えてきて満開の桜の花を咲かした。そして風が吹き、桜の花が散ったかと思うとアザールのもとに集まっていく。
そして次にアザールの姿が見えた時には淡い桜色の鎧に身を包み氷で出来た刀を手に持っていた。
「振り出しに…なんだって?
一気に、切る!」
一挙どうに刀の届く位置までアザールが踏み込んだ。だがかろうじて反応出来たのか弟の方がギリギリで盾を差し込むが盾を切り上げて真っ二つにし返す刀でその丈夫そうな重厚な鎧ごと袈裟に斬りつけた。
だがそのすきに背後に回った兄が切りかかった。
「見えてるんだよっ!」
アザールもすかさず反応するが、たださすがに刀で攻撃する余裕はなかったらしく蹴りつけた。
「けどその場所はドンピシャよ。」
蹴りつけられた事により兄が桜の木目掛けて飛んでくる。
「桜の樹のしたには屍体が埋まっている。
やちゃってアザール!」
桜の木の下からが表れて飛んできた兄を掴みそのまま拘束する。
「このままでは、なんたる力。振り解けっ」
「観念するんだなコップ兄弟。
追風。」
餓者髑髏の拘束から逃れようともがく兄のもとへ駆けつけその勢いのまま餓者髑髏ごと横に切りつけ間を置くことなく上から下へ切り下ろした。
敵が倒れると同時にアザールが着ている鎧も桜の花へと戻り散っていく。
「勝負ありってな。」
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