♥ ●ャッキー人形「 夏のホラー2020 」
とある駅のプラットホームに設置されているベンチに置かれている●ャッキー人形。
誰かが忘れて行ったのか──。
誰かが態と置いて行ったのか──。
どんな意図があって、プラットホームのベンチに置かれているのやら。
頭の上に付いている赤いスイッチを押すと声が出る。
如何にも「 押してくれ 」と言っている赤々としたスイッチだ。
スイッチを押すと「 やあ、ボクは●ャッキー。良い子の味方さ! きゃははっ☆ 」と声がする。
だから、面白がってスイッチを押しまくる子供も居るわけで…………。
ある雨の日、1人の男がベンチにドカリッと音を立てて乱暴に座った。
男は機嫌が悪いのか苛々しているみたいだ。
「 ──あ゛?
何だコレ?
…………どっかで見た事があるような…ないような…………。
何だぁ?
このスイッチは??
ふざけたスイッチなんか頭に付けやがって── 」
男は文句を言いながらも、人形の頭の上に付いている赤いスイッチを押してみた。
「 ポチッとな 」そんな声は聞こえなかったが、スイッチを押された●ャッキー人形は、「 やあ、ボクは●ャッキー。良い子の味方さ! きゃははっ☆ 」と声を出す。
「 ●ッキーの台詞をパクってんじゃねーか… 」
男はもう1度、●ャッキー人形の頭にある赤いスイッチを押してみる。
「 やあ、ボクは●ャッキー。君と遊びたいんだ 」
●ャッキー人形から違う言葉が出て来た。
電車が来るまで、待ち時間は十分にあった。
男は暇潰しに●ャッキー人形のスイッチを押して、●ャッキー人形の声を聞く事にした。
「 やあ、ボクは●ャッキー。君の名前を知りたいな 」
「 やあ、ボクは●ャッキー。君の友達だよ 」
「 やあ、ボクは●ャッキー。君は何が好きだい? 」
「 やあ、ボクは●ャッキー。君のパンツは何色だい 」
「 やあ、ボクは●ャッキー。君を迎えに行くよ 」
「 やあ、ボクは●ャッキー。君が大好きだよ 」
「 やあ、ボクは●ャッキー。悪い子も好きだよ 」
「 やあ、ボクは●ャッキー。君はボッチかい? 」
「 やあ、ボクは●ャッキー。君は童貞だよね 」
「 やあ、ボクは●ャッキー。意思カードを記入すると早死にしそうだよね 」
「 やあ、ボクは●ャッキー。君はボクの味方かい 」
「 やあ、ボクは●ャッキー。消したい奴に限って長生きするよね 」
「 やあ、ボクは●ャッキー。ボクと入れ替わってくれるのかい 」
「 やあ、ボクは●ャッキー。君の身体をくれるんだね! 」
「 やあ、ボクは●ャッキー。今から君はボクになるよ 」
「 やあ、ボクは●ャッキー。今からボクは君になれるんだ! 」
男は気持ち悪くなるとベンチから腰を上げて立ち上がった。
男は気味の悪い不気味な●ャッキー人形の足を掴むと、線路へ投げ捨てた。
「 ──何が “ 入れ替わる ” だよ!
粉々に砕けちまえってんだ!! 」
男が悪態を吐くと、プラットホームに音が鳴り響き、電車が入って来た。
扉が開き、乗車していた利用客達が次々に電車を降車していく。
車内が空くと待っていた利用客が次々に車内へ乗車していく。
男も乗車すると空いてる座席に座った。
扉が閉まり、電車が発車する。
電車が発車した後の線路には、男に投げ捨てられた筈の●ャッキー人形が無かった。
●ャッキー人形は何処に消えてしまったのか────。
「 ──あっ、●ャッキーだぁ!
お父さん、●ャッキーが居るよぉ 」
「 んん?
あぁ、ベンチの主か 」
「 お父さん、●ャッキーって、ベンチの主なの? 」
「 ははは、そうだよ。
この●ャッキー人形は、父さんが子供の頃から駅のベンチに座ってるんだよ 」
「 お父さん、●ャッキーって凄いんだね 」
「 あぁ、●ャッキーは凄い人形だな 」
「 お父さん、●ャッキーって喋るの? 」
「 いや、●ャッキーは喋れないよ。
●ャッキーを動かす電池は時代遅れの電池だからね。
何処にも売ってないんだよ 」
「 えぇ〜〜〜。
じゃあ、スイッチを押しても喋ってくれないの? 」
「 残念だけどな。
ほら、もう行くよ。
母さんが迎えに来てくれてる筈だからね 」
「 うん。
バイバイ、●ャッキー 」
少年はベンチに鎮座している●ャッキー人形に手を振ると、父親に手を引かれて改札口へ歩いて行った。
「 あれ?
●ャッキー人形が無いね 」
「 本当だね。
昨日は居たよね? 」
「 うん、居たね 」
「 捨てられちゃったのかな? 」
「 えぇ〜〜捨てたら呪われそうじゃん? 」
「 それだ!
誰かを呪いに行ったんじゃないの? 」
「 えぇ〜〜〜。
ないない。
電池も入ってない人形だよ。
喋れないのに動けるわけないじゃん 」
「 だよねぇ?
誰かが “ お持ち帰り ” したのかな? 」
「 しないって。
誰が小汚ない●ャッキー人形を持ち帰るって言うの? 」
「 実は高額なお宝だったりして? 」
「 ないでしょ〜〜 」
「 まぁ、無くても誰も困らないよね 」
「 そうそう。
寧ろ、邪魔だった●ャッキーが無くなって、スッキリしたって感じ? 」
「 きゃはは!
●ャッキーが居たら、秒で呪われるんじゃない? 」
ベンチの前で喋っていた女子高生達は雑談をしながら改札口へ向かって歩き出した。
「 おっ、●ャッキー人形じゃんか。
あれぇ……でも、何で谷夂舮駅にあるんだ? 」
「 確か…架景駅にあったんじゃなかったっけ?
誰かが持って来たのか? 」
「 おぉっ?
●ャッキーだな。
オレは梯波駅で●ャッキー見たけど? 」
「 小汚ないのは相変わらずだな 」
「 良く捨てられないよなぁ? 」
「 捨てられる前に移動してんじゃないのか? 」
「 電池も入ってないのにか? 」
「 電池を入れても動かないって。
中身がブッコしてんだからさ 」
「 へぇ?
そうなんだ? 」
「 もう、行こうぜ。
先輩が待ってるよ 」
「 そだな。
先輩を待たせると後が面倒だからな 」
雑談を終えた男子学生達は、改札口へ向かって走って行った。
「 お姉ちゃん、●ャッキー人形だよ!
●ャッキー人形が居るよ! 」
「 こら、指を差すんじゃないの! 」
「 いい?
●ャッキー人形には触っちゃ駄目よ 」
「 何で? 」
「 “ ばっちい ” からに決まってるでしょ!
それに、触ったら身体を取り替えられちゃうんだよ。
だから、何があっても絶対に触っちゃ駄目なの 」
「 ふぅ〜〜ん? 」
「 ほら、行くよ。
お祖父ちゃんとお祖母ちゃんが待ってる 」
小学生と中学生の姉妹は手を繋いで改札口へ歩いて行く。
「 やあ、ボクは●ャッキー。君に会いたいな 」
「 やあ、ボクは●ャッキー。君の最寄り駅を知りたいな 」
「 やあ、ボクは●ャッキー。君に会いに行くよ 」
「 やあ、ボクは●ャッキー。君の最寄り駅を見付けたよ 」
「 やあ、ボクは●ャッキー。君の家に行くよ 」
「 やあ、ボクは●ャッキー。君の家を見付けたよ 」
「 やあ、ボクは●ャッキー。君の身体を貰いに来たよ 」
「 やあ、ボクは●ャッキー。悪魔の人形さ 」
「 やあ、ボクは●ャッキー。今日からボクが、巨宮昌博だよ 」
「 ──昌博!!
こんな汚い人形、何処で拾って来たの!
今から行けば未だ間に合うからゴミ収集車に持っててもらいなさい!! 」
「 ──わぁったよ!
( ボクは長い間、●ャッキー人形だった。
“ 人間になりたい ” ってずっと願っていた。
その願いが漸く叶ったんだ。
ボクを線路へ投げ捨てた乱暴な男。
ボクはその男の身体を手に入れたんだ!
ボクは人間になって、巨宮昌博は●ャッキー人形になった。
ボクが巨宮昌博として生きる為には、この●ャッキー人形は処分しないといけないんだ。
さよなら、ボクを線路に投げた人。
ゴミ収集車の中でペチャンコになりな〜〜〜〜 )」