神の試練に果敢に挑む…の8
昨晩とは打って変わって観光客と冒険者たちで賑わうチャペル周辺。この日はちょうどいくつかのカップルが結婚式場の打ち合わせに来ているのか、幸せそうな二人組がちらほら見える。
「…で、どのへんだった?」
アルバートはルリに詰め寄って静かに訊ねる。
「チャペルの建物のあたりなので外だとは思います。」
「ここから見えるか?」
「それが…どこにも…。」
ルリは困った声を出した。見間違い、ではないと信じたい。恥ずかしさをしのぎ、目を凝らして遠くから捉えたのだ。必ずこのあたりにあるはずである。
(あってもらわなきゃ困ります。)
カッと周囲も熱くなった。
観光に来ている人たちは、景色も楽しまず目をギラつかせている人々がそこかしこにいることが気になっている様子だ。
「すぐには見つかんないのであれば、のんびり探しましょう。悪目立ちはいけませんからね。」
ホクホクと自分の頬をなでながら、先程悪目立ちしたフリティアが何か言っている。
「もう少し何かヒントがあればいいんですけど…」
キョロキョロとルリが見渡していると、丘の先から驚嘆の声が上がった。五人はその騒ぎにひきつけられた。
「あっ!?レンリ先生です!」
ルリもまた他の観光客と同様に驚いて興奮する。
宙を滑りながらレンリが柵の向こう側からふわふわと現れて観光客に挨拶をしている。ここでもその老人はまた大歓迎を受けた。
「んん…?」
「オーギさん、どうかしました?」
「いえ、なんでしょう何か、違和感が。」
「あの靴ですかねえ?」
占い師にあまり興味のないキーウィとオーギが軽い会話をしている。
「ようこそみなさま白の街へ。こちらはご覧の通り、凪の心地よい海街でございます。眼下に広がるは毎日のように諸国から渡ってくる貿易船で賑わうこの街一番市場。それから右手には…」
「ああ、今日はこのイベントの時間だったんですね。」
ルリは観光用リーフレットのイベントスケジュールのページを食い入るように眺めた。街一番の占い師による白の街の観光案内、それにデモンストレーション。空を渡れるあの靴、抜群の宣伝効果であった。