神の試練に果敢に挑む…の7
アルバートが脚立の提案をする前にオーギとフリティアが結託して巫女様を担ぎ上げた。
なんと言ってもすごいのはオーギの身体能力である。肩から腰をすべて使って子どもと大人の女性二人分の体重を難なく支えている。
(ああ、至福…)
脚立のほうが安全だし苦労も全くないことぐらいフリティアもわかっている。
だが強行した。下履き一枚隔てて、ルリのふっくらした腿に頬を挟まれるのだ。この機を逃す術はない。
(絞め殺されてもいいです…)
惚けた顔をしながらもフリティアはルリを支えて微動だにしなかった。
だがわずかにルリが震えだす。
「ルリ様、下を見ないように。支えておりますので。」
フリティアはにこやかに脚の熱を感じながらルリに声をかける。
「そ、そうではなくて…。」
高くて怖いのも多少はあるがそれ以上に、下を見なくとも視界に入る他の冒険者たちの姿がルリは気になってしょうがない。
向こうもルリのことが気になってしょうがない。突然三段重ねの肩車が始まったのだから否が応でも注目してしまう。
「恥ず…」
「旅の恥はナントカですよ!」
赤面するルリに向かってキーウィの無責任な声援が投げかけられる。
幸い目立ちすぎた、というほどの人数には見られていない。そのためルリは精一杯目を強く瞬いたり、必死に空を見上げて空間の歪みを探したり自分のなすべきことに集中しようもいう様子であった。
「あっ!」
天高くからルリの驚嘆の声が降ってくる。
「何かありましたか!」
ルリの声につられてフリティアの声のトーンも上がった。
「チャペル!チャペルの方に今何か見えました!」
この街を見下ろすように丘の上にそびえるチャペル。ルリは確かに不思議なゆらぎを捉えた。
「早速行きましょう!」
はやるルリを安全に降ろした頃には社に来ていた他の冒険者のすべてがチャペルに向かったあとだった。