神の試練に果敢に挑む…の5
あんな発言をしても怒っているのは全く占い師に興味のないフリティアぐらいであった。オーギも渋い顔をしたのは間違いないが、相手も早々に去ってしまったので何事もなかったかのように振る舞う。
「びっくりしました…。」
「ルリ様、お気になさらず。」
「次あったとき、まず引きちぎってやりますから大丈夫ですよ。」
(何をだ…)
フリティアの微笑みに男衆は少し恐怖を覚えた。ルリも、恥ずかしがりつつ皆から励まされてなんとか持ち直していた。
「ひとまず、今日こそ天神様の領域に踏み込みましょう。」
連日何度も天神の社に通っているが、この美しい街並みには珍しく手入れが行き届いていないエリアで、参拝客も少ない。ご利益は占い師の作ったお守りの方にあるとまで言われている。
長い間潮風に吹かれて金属は錆びて汚れが壁にこびりついている。とても管理人がいるとは思えない。
「むむ…こんな風に扱われては神様もやっぱり嫌な思いをしますよね。」
その寂れた社を訪れ改めてルリは現状を嘆いた。占い師の人気はわかるがこの街を見守っている神様なのだからそういう敬意は払わなくてはいけない、とルリは言う。
「ルリ様、ご立派です。」
オーギは平伏した。
「そういやオーギは神官だよな?…どの神さまを信仰してるんだ?」
アルバートはこれまで神官という職業自体に疑問を抱いていたが、オーギの様子を見てふと気がついた。オーギはルリに心酔している。よく崇め奉る。それはいいのだろうか。そもそも神に仕える者として四柱もいますのうちどれに信仰心を寄せているのか。
「…教会や教義は、ルリ様やこの世界創生の神々とはまた別でありまして。」
「他にも神がいるってことか?」
「救いの神への信仰、ですね。主だった姿は持たない、形而上の存在といいましょうか。」
キーウィはぽかんと口を開けている。
「まあ細かいことは抜きにすると、この世を救おうという気持ちに私は敬服しているのですよ。」
だからこそその気持ちを持つルリに協力するのだとか。
「私個人の信条を無視して、回復魔法を使える健康優良児だと思っていただければ。」
子供に見るのは無理がある。
「や、でもわかった。変なこと聞いて悪かったな。」
アルバートは手を振って応えた。