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スクセの巫女がチョロすぎて…  作者: アホイヨーソロー
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神の試練に果敢に挑む…の4

「あっ、あれは!」

 ルリも老人に気づくと周りに負けじと驚きの声を上げて立ち止まった。颯爽と歩くその姿は老いを感じさせない。歩くたびに長いあごひげが風になびいてきゃあきゃあいう後の女性たちに愛想を振りまいているようにも見える。

(まんざらでもない表情だ…。)

 隠しきれない愉悦をアルバートはかのおじいさんから確かに感じ取った。

「あれが…えー占い師レンリですか?」

「はい!レンリ先生です!」

 ルリは鼻息荒く答える。

「古今東西の占術に精通しておられ、占いの結果は百発百中!明日の天気から、国盗り城攻めまでなんでも占って導いてくださるそうです!」

 ルリの心に呼応しているのか、急に辺りが蒸したように熱くなった。

「国盗りって…」

 今はそんな乱世ではないので当然無用の力であるように思える。

「企業同士の争いとか交易戦略とかそういうものに置き換えることは可能でしょうね。」

「なるほど。」

 女性に囲まれている姿はスターのように見えるが、実際は戦略、戦術におけるとんでもなく重要な人物なのであろう。

「天神様の聖域の入り口を教えてもらうのも可能…とかですかね?」

「キーウィ…」わかってないな、とルリは大げさに肩をすぼめた。

「占いは千里眼みたいな全てを見透かす力ではないんですよ。もの探しを頼むならもっとほかの業者さんです。占いというのは、現在の自分の状態と星の巡りを照らし合わせ過去に追う言うことが起こってきたか、将来はどうしたらいいかを相談するお仕事なんです。」

「はあ。」

 いまいちピンと来ていないキーウィは生返事をしながらルリの占いの説明を聞いていた。

「でもさっき『百発百中』…ってあたたた!」

 余計なことばかり飛び出してくる口をフリティアに強く引っ張られた。涙目になって彼女を見るが冷たい瞳で一瞥されただけで相手にされなかった。

 そうこうしている間に、その老人と取り巻きの女性たちの一団がルリたち御一行の方まで近づいて来る。ルリは慌てて側のフリティアとアルバートの袖を引っ張り道を開けるように促した。袖にはアルバートの神経が通っているはずがないので痛みは感じない。

(手を握られてたら驚いて振り払ってたかも…。)

 握った手を拒絶されたら当然傷つくだろう。

 アルバートは今後そういうことがあったらどう誤魔化すか考えておくことにした。

 ルリは道の端によりながらも、まるで目をそらす気配もなく横切る老人をひたすらにありがたがっていた。信者の領域である。

「むっ?」

 集団の先頭を行く占術師レンリがはたと立ち止まった。

 この辺りに漂う妙なマナの流れを感じ取ったようだ。ルリから発せられる熱視線に気が付いた。くるりと回ってレンリはルリを見止める。

「ほう。」

 一言つぶやくと、様子が急に変わったことに戸惑う取り巻きを置いてルリをめがけてまっすぐ歩いてきた。アルバートとフリティアが咄嗟に間に入る。

「お嬢さん。」

 長年潮風に当たり少し酒焼けしたようなガラガラとした低い声でルリに話しかける。それだけでもうルリは緊張してしまった。

「はっ!はい!?」

「うむ…あなた…」

 なにか特別な存在だということに気づいたのだろうか。

「良きお乳ですな。」

「へっ!?」

 カッと熱風がこの一角を吹き付ける。

「テメェ、ゴラアァ!!」

 主の敬愛する人だろうと関係なくフリティアが吠えた。

「恥じらう顔も由。それでは。」

 レンリはお供の殺気を感じ取り、高らかに笑い、雲に乗ったような速さでさっさと去ってしまった。

 あまりの一瞬の出来事に、その場にいたほとんどの者がぽかんと呆気にとられていた。

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