神の試練に果敢に挑む…の1
今朝も早くからオーギは体を動かしている。仲間の内で最も健康的な彼であり、ルリはそんな姿を見てからというもの朝は目覚ましを早めにかけて、一緒に運動をしている。
「…あれはいいのか?」
それからしばらくして他の三人も起き出し準備を整えてから食堂で一堂に会する。
「何がです?」
フリティアが朝食のパンをちぎりながら首を傾げる。
「いや、俺がルリと二人きりになろうとすると、お前怒るじゃん。オーギはいいのかって話。」
「おや、神官相手に嫉妬ですか。」
フリティアは意地悪く笑った。
「不公平だろって。」
そういうのは取り合わないアルバート。
「……ふっ…だってオーギは神官ですから。」
それがアルバートには信用ならないのだが。それというのも、アルバートが見てきた神官、という生き物は立場を利用し貧民から搾取したり、女性をいいように扱ったり、とにかく、鼻持ちならない連中ばかりだったからだ。
まあ確かにオーギはそこまで表裏のある人物には見えない。そこはアルバートも認めているところである。
「あなたと違って妙な気を起こすはずもありませんし。」
「俺も起こしたことはないだろうが。」
「さて、どうでしょうかね?」
フリティアはアルバートの実力などはともかく、男としては信用していない。キーウィは間違いなく無視して大丈夫。オーギはさきほど言ったように聖職者なので大丈夫。女性との距離感が妙に近いアルバートこそ不倶戴天の怨敵である。
「そんなに気になるなら御本人に聞かれては?」
「なにを。」
「『お前、ルリ様のこと好きなの?』って。」
「思春期か!」
アルバートはフリティアに嘲笑われて腹を立てながらも、彼女の言うとおり聞くのが手っ取り早いと踏んだ。幸い、オーギからの信頼は得ているはずである。何気ない会話から聞き出してやろう。
アルバートがルリを食堂の一角で休ませているオーギに近づく。彼はアルバートに気づきにっこり笑った。
「席は?あちらですか。」
「おお。」
ルリはオーギからカップを手渡されて、ぐびぐびと一心不乱に水分補給をしている。大したオーギは全く汗をかいていない。
「ルリ様、これを続ければきっと体力も付きますよ。」
「はひぃ…」
息を吐きながらルリは答えた。
彼女の運動不足は深刻なようで、軽い体操とランニングで息が乱れてしまっている。
「いや、しかし立派なものです。」
オーギは感心して頷いた。
「足手まといではいけませんからね…。みんなをまとめるために、私、頑張ります。」
今この場でオーギにする質問ではないと思い、アルバートはルリの呼吸が落ち着くのを待ってから、二人をフリティアとキーウィのいる席まで案内した。