自称勇者は許される…の5(終)
キーウィは近くにあった落下防止の柵に手をかけて、ため息混じえながら街を見下ろした。時々街から笑い声がかすかに聞こえてくるようだ。
(そんなに行きたかったのか…)
あまりの彼の落ち込みように憐れみすら覚えてしまう。それがルリの目にはどう写っていたのかというと。
「なんでしょう…キーウィが黄昏れてます。」
夕日はとうに海に沈んでいる。
頭の中では本当にしょうもない、煩悩まみれの夢が駆け巡っていることであろう。
「普段、楽天的に見えてもなにか悩みがあるんでしょうか。」
「……しらね。」
ルリがキーウィの隣に並び立った。
「キーウィ、あなたもなにか悩み事を…抱えていらしたんですね…。」
「ええ…まあ。」
確かに元気がない。猥雑な店に行けなかっただけでこんなことになるとは。でも確かにいこれまで立ち寄ったどの街でもそういったことは意識的に避けてきた。なにせ女子連れの旅だ。
「仲間が増えて…チャンスも増えたかと、思ってたんですがねえ。」
護衛を他のものに任せて自分は遊ぼう、という話である。
「チャンス…」ルリは顎に手を当てて、キーウィの悩みの種を探し出そうと考える。
(キーウィは目立ちたがり屋のところがありますが…最近変わったところと言えば。)
フリティアが合流したおかげでルリの身支度などがスムーズになった。だがそれはキーウィは関係ない。
オーギがようやく加わり、怪我や疲労の治療が用意に行われるようになった。だがそれもキーウィはかかわらない。
(キーウィは誰かに頼られたい、感謝されたい…のでしょうか。私も最近、リーダーシップを発揮できるようになってきましたし。)
なってはいない。
「あの、キーウィ。」
「へぇっ!はい!?」
突然、ルリからまっすぐ視線を向けられてキーウィの肩が一瞬動いた。
「キーウィの悩み、もしかしたら、私もわかります。」
「えっ、嘘?」
ルリは首を横に振った。
「一つお聞きしますが、キーウィの悩みの根幹には目立ちたいという願望があるのではないですか?」
「……そ、そう言われればそうです。」
やはり。と今度は縦に首を振る。
「…キーウィは正直無神経なところがあります。ですが、その気にしない力こそがあなたの原動力。何でもやってやろうという活力になってると、私は思います。」
(……おいおい。)
「私はリーダーとして、そのお悩みを解決しましょう!」
「ホッ!?本当ですか!」
キーウィがルリの手を取っても痛がる様子もなかった。