自称勇者は許される…の1
キーウィ・テアロアは悩んでいた。
仲間も増え、巫女の守りも充実している。だからこそ自分はーー
「アルバートさん!アルバートさん!」
夜も更けて。男部屋のベッドに横たわるアルバートを激しく揺さぶる。今日一日探し回って疲れていたアルバートは煩わしそうに手を払い除けた。だがそれぐらいでは引き下がらないのがキーウィである。
「あの、ちょっと相談事が…」
背を向けるアルバートに耳打ちする。オーギはこの時間、窓際でゆっくりと読書をしている。
ジタバタしているキーウィを見て、
「いかがされましたか?」
と訊ねるが、キーウィは何でもないふうに首を振る。あまり自分に聞かれたくない話なのだろうと、オーギは納得して穏やかに読書を続けた。
「……なんだよ。」
明らかに不機嫌なアルバートである。真剣そうに見せかけたって実は大したことな買ったというのはこれまで何度もあった。それゆえの雑な対応である。
今日は天神の社まで行ったのに聖域への扉の場所も皆目検討もつかなかった。一日が徒労に終わったのが疲れを余計に増幅させる。
「いや、ちょっと外で…」
「……内容による。」
「どうしても、なんです。」
肝心の相談の内容をぼかしてくる。よほど聞かれたくないのか、あるいは自分でも大したことない話と自覚しているのか。
アルバートは頭をかいて立ち上がった。
「オーギ、ちょっと出るわ。」
「ルリ様とのお約束を反故にされるおつもりで?」
昼頃の話をしてオーギが笑う。
「行き先ぐらいキーウィから直接ルリに話してもらうさ。」
流石に四六時中一緒、は駄目だと理解したのかどこに向かったか他のものに伝えておけば良しということになった。プレゼントの効果もあったというものだ。
アルバートはキーウィを連れ立ってホテルの部屋を出る。
「……で?」
少し緊張しているのか、手を強く握りながら声を上ずらせてキーウィが話し始める。
「俺、行きたいとこあって。」
「男連れで?」
「はい、その…アルバートさんなら詳しいかなと」
「………ルリにどこに行くつもりかちゃんと言えるんだろうな?」
キーウィは言葉に詰まった。