凄腕占術に夢中…の10(終)
「店の外に出るだけだ。あんまり他の奴らに聞かれると恥ずかしいからな。」
ルリは宣言通り他のみんなに行き場所を告げて咲きに行ったアルバートを追いかけていく。フリティアがうらめしそうに窓の先見えるアルバートを睨みつけた。何かしでかしたら、ここからでも飛びかかってやろうと意気込んでいるようだ。
入り口をゆっくり押しながらルリは外に出た。伏し目がちにドアの側に立つアルバートの様子を探る。
「ん、少し歩かないか。」アルバートは静かに近づいてきたルリに気がついた。
「あっ…えっ…でも…。」
何度も何度も見た姿なのに、こう改めて呼び出されるとどういうわけだが緊張してしまう。
答えられずに俯いているルリをあまり見つめすぎないように、アルバートは返答を待つ。
そんな落ち着いた姿がルリは余計に気になってしまう。
「……えと。さっきのを、謝ってくれる…んですよね。」
しかしルリ自身も何に対して謝ってほしいのかわからなくなってきている。勝手に単独行動をすることを怒ったつもりだが、お腹も満たして落ち着いてみるとそんなに怒るほどのことでもなかったように思える。
「ルリがよ。」アルバートが話を始める。
「仲間と離れ離れになることを恐れ始めてるのがわかる。」
アルバートはゆっくり通りを歩き始めた。是非もなく、ルリはその後を追いかける。
「ここのところメンバーがバラバラに行動して両方とも厄介事に巻き込まれてたからな。自分の知らないところで自分の知っている人たちが危険なめに遭うのに心を痛めてる…そうじゃないか?」
アルバートがちらりと振り返ってくる。
「……」
ルリは黙ったままうなずいた。自分の思いが無茶な要求になっているのに気付かされる。
「…だからこれを用意した。」
潮風に吹かれてルリははっとする。
足元に海岸の見えるすぐ近くの展望台までやってきていた。
アルバートの手の平に一つの銀のリングが置かれていた。藍色のクリアストーンがキラリと輝く。
「あの…アル…これは?」
「ん、離れていてもまた相手を呼び寄せるお守りだよ。この街の占い師の祈祷済みだとさ。」
重すぎる商品名は伏せる。意味はだいたい一緒だ。このリングはアルバートの願いも込めているようなものだ。
アルバートはこれを買うために離れていたのか。
(わ、私の考えは全部お見通しだったんですね…)
自分の子供っぽい願いを見透かされていたことに少し恥ずかしさを覚えた。
ルリがそっとその指輪を取る。
小指にはめるとほのかな魔力を感じた。