凄腕占術に夢中…の8
アルバートは戻ってくるなりいきなりその場に正座をさせられた。なんでもルリの住んでいる地域では誠意のこもったかしこまった座し方らしい。
「アル、いつも守ってくれてありがとう。」
ありがとう、というお礼を言うにはいささか厳しい瞳をしている。彼女の取り巻きはいまにも笑い出しそうであった。
「ですが勝手な行動が多すぎます。」
(それか。)
いよいよ自分の身分がバレたかと肝を冷やしていたところである。正体が暴かれるようなヘマはしていないが、オーギは勘が鋭く、フリティアは抜け目なく、キーウィは何をしでかすかわからない。
とはいえ今回はそれではなかったので、ほっと胸をなでおろす。
「なんですか!その態度は!」
安堵の息をため息だと思われたのか、ルリは怒りを露わにする。
「アル、ここからはみんなで一緒に行動すべきです。何故だかはわかりますね?」
「ここ最近でなんどもみんなが離れ離れになったから…か。」
ルリはうなずいた。
「そう、我慢してください。」
みんな一緒、をルリから強く望まれた。欠員が出れば協会が代わりのものを手配をしてくれるというのに、ルリはそれを良しとしていなかった。
「これからお店に行きますよ、みんな心配してたんですからね。」
フリティアは特にそういう素振りをしていない。
「アル、みんなに謝ってください。」
ルリは普段、アルバートからよく注意をうけていた反動からか、ようやく自分から彼のことを注意できて、今少し満足そうな顔をしている。
アルバートは頭をかいた。
決して、彼女の思いを理解していないわけではない。だが、なんというか、すぐにはうんと従うことができなかった。というのも、海神の社で離れ離れになったきっかけについては十分反省している。そのお詫びの用意をアルバートはこの空いた短時間を利用して戻ってきたのだ。その行為が裏目に出るとは思いもしなかった。
「…アル?」
「や、悪かったよ。」
アルバートはなんとか軽く謝った。ただそれでは全然足りないようで、ルリは頬をふくらませる。
「……むー……アル。あなた本当に反省してます?」
「まあまあ、巫女様。アルバートさんはこういう方ですし。悪いとは思ってますよ。ね。」
なんとキーウィが間に入ってアルバートをかばった。擁護の仕方がいまいち適切だとは言い難いが。
「わかりました、私ももう大人ですからね。ここはそういうことにします。」
「さすがルリ様ですわ。アルバートは上手く頭を下げられない子供のようなものです、放っておきましょう。」
フリティアはルリの肩に手をかけて、彼女のことをなだめた。
「ははは、アルバートさん、ルリ様を怒らせてしまいましたな。」
「ま、怒っても荒れないだけマシだよ。」
アルバートは空を見上げる。
「本当に心配されていたんですよ。」
「……そりゃ光栄だ。」
ルリはフリティアに押されながらまっすぐ歩いている。両腕を力強く振るいながら。
アルバートは本当はここにいるような人間ではない。だが、一目惚れをしてしまって嘘偽って駆けつけた以上は、彼女をなんとしても射止めないと割に合わない。
(チョロいと思ったんだけど…)
はじめはそうだったが、仲間が増えていくたびに彼女は、少女から巫女へと変わっていっている。このままではいずれ手の届かないところまで持ち上げられてしまう。今回のことでアルバートは内心焦っていた。