凄腕占術に夢中…の7
アルバートがどこかへ去ってから、少しそわそわ店選びも手につかなくなり始めたルリ。彼女の側を離れないフリティアはそんな変化を見逃さない。
「すぐ戻りますよ、あの男は勝手な行動が好きですからしょうがないです。」
「そう、なんですけど……。」
巫女はなにか不安そうな様子。
「じゃあ俺が呼び戻してきましょうか?まだそんな遠くに行ってないだろうし。」
「いや…それは。」
煮えきらない態度だ。
彼女の懸念を見抜いたのはまだ合流して間もないオーギである。
「ルリ様はバラバラに行動されることに不安があるようですね。」
ルリはひと呼吸おいてからうなずく。
「この頃。」手に持った地図を膝に置いた。
「みんなが離れ離れになることが多くて、その度に危ない目に遭って…怖いんです。みんなが私の知らない内に危険に見舞われるのが。」
ほぅ、とフリティアがうっとりため息をはいた。
「でもこの街はきれいだし安全ですよ、多分。」
ルリはそういうことが言いたいのではないのだが、キーウィなりの心遣いである。
「戻ってきてから叱ればいいのですよ。『こっちは早々にお店を決めていたのに勝手な行動をするな』と。ルリ様が怒ればさしものアルバートさんも反省するでしょう。」
オーギの言うことには一理あった。ルリは三人から励まされて気を取り直し、再びパンフレットに目を落とした。
そのアルバートは。
この街は貿易の街、各国の物品雑貨、貴重な道具が運ばれてくる。
(さて…)
決してはしゃぎたくて観光客でごった返す大通りに戻ってきたわけではない。他に用事があった。彼としてはそれを後回しにはできなかった。
目当ての店を探す途中に一人の男性が目に入る。キョロキョロあたりを見渡して、静かに、誰にも気づかれないように、息を潜めながら路地裏に体を滑り込ませていた。
そういった動きには十分慣れているアルバートだけは見逃さなかった。
(ま、関係ねーか。)
上等そうなローブをまとっていた小柄な男だが、それはそれ、各人の事情というやつであろう。突然跳ねるようなスピードになって消えていったが、巫女の騎士たるアルバートはそれを追いかける理由がない。そのまま店をあさり始めた。
「お嬢さん、ちょっといいかな。」
「はい、いらっしゃいませ。」
一つの魔具店の店先にいた女性に声をかける。
「探しているもんがあるんだがな…」
身振り手振りであるかどうかもわからない品物をアルバートは説明した。女性は明るい営業スマイルでアルバートを店内へと案内した。