凄腕占術に夢中…の6
騒がしい大通りから外れても、活気のない通りなどこの街にはどこにもないらしい。ただ、大通りとこの通りが違うところは、呼び込みの人間が、手を叩いて「そこのお客さん!」と呼び止めるか、「いかがですか?」と訪ねてくるかの差である。
賑やかな中にも落ち着きがあって、大人びた雰囲気だ。ルリはこっちの通りのほうが気に入ったようだ。
後ろ手を組んで鼻歌を唄っている。
「……あの〜」
キーウィが手を上げた。
「なんでしょう?」
キーウィは腹をさすって訴えてくる。
「そろそろ昼にしませんか?だいぶアテもなく歩きましたし。」
「仕方ないですね。」
ごきげんなルリはキーウィの余計な一言にも気づかず笑顔で答えた。リーフレットの地図を開き、食事処のガイドを確認する。
「やはりラルドの特産品は外せない気もしますね…。」
オリーブがよく採れる温暖な気候でこのあたりの料理店はどこも絶品である、とパンフレットには書いてある。
「失敗はできません…」
ルリの目がキリッと釣り上がった。何をぶつぶつと言っているのかと思ったら、呪詛を唱えているわけではなく、ガイドの説明を読み上げていた。お昼の運命はすでにルリに託された。
このあたりには、こねた小麦のそぼろを茹で、豆にトマトペースト、ヒツジ肉や魚を一緒に煮込み、最後にオリーブやハーブ、お好みでスパイスをかけた伝統料理がある。特に近隣の海で取れたロックフィッシュなどが好まれている。良い出汁を吸った小麦そぼろはひと度頬張ると止まらなくなるとか。
「お料理も一緒に載せてくれればいいのに…」
ルリは楽しそうに文句を言っている。
アルバートはクンクンと鼻を引くつかせてこの地に漂う潮の匂いと香辛料を嗅ぎ取っていた。
「ルリ様、場所をこの通りに限定されてはいかがです?」
「あっなるほど、なるほど…」
ルリは地図から顔をあげずにフリティアの助け舟を借りた。
「…立ってんのもなんだしよ、あそこのベンチに行って考えればいいんじゃないか?」
アルバートが指をさした少し先に、海の見える広場があった。答える間もなくルリたちの足はそこへと向かう。
ルリはベンチに腰を下ろしその左隣をフリティアが占領する。キーウィも座りたかったのか少し間を置いてルリの右側に座った。
アルバートは落下防止の柵に手をかけて、白の町の港を見下ろした。オーギも直立で教典か何か本を広げて読み始めた。
(………これ、完全に観光じゃん…。)
多分全員が同じように考えていた。
「ちょっとそこらへん歩いてくるわ。」
アルバートは手を振ってその場から去ろうとする。
「えっ、アル待って。みんなで一緒にいましょう?」
何故かルリが引き止めたのだが、流石にやることがないのも退屈であった。
「ま、四人いれば大丈夫だろ。すぐ見て戻ってくるよ。」
軽い返事をしてからアルバートは街の下へと降りていった。