凄腕占術に夢中…の4
この街にあるといわれる天神の聖域を探すため、5人は街へと繰り出した。砦の喪の寂しさと打って変わって本当の観光地であるこのエリアは活気であふれて歩くだけでも気分がいい。
ルリはそんな大通りをせわしなく首を動かして見渡していた。
「…なんか気になるものでもあったか?」
「!…いえっ?」
声をかけられて驚く。それだけで何に気をひかれていたのかわかりやすい。この街は観光地であるとともに、雑誌や新聞でも有名な占い師がいる街でもある。それ目当てのカップルや占い好きの女性客、将来に悩む若者、そんな人たちがこの街にやってきてみな浮足立っている。当然のようにルリもそのうちの一人であった。
「…ルリ様、行きたい場所は予約で常にいっぱいだとは聞いていますが。」
フリティアもルリの気持ちは十分察していた。
ただ何せ人気の占い師だ。当然である。飛び入り、アポなし、いきなり気軽に占ってもらうことは難しいようだ。
「べ、別に…そういうんじゃないですよ?」
占い師が目当てだと誰にもはっきり言い当てられていないのだが頬を赤らめて否定する。普段からこの旅は修行の一環であって遊びではない、世界を救うための旅である、と言っている手前、ためらいと恥じらいがあるのだろう。水神の社は参拝という建前のおかげで観光ができた。
「しかし何の情報もないですよねえ」
キーウィの言う通り、この街に天神の聖域が存在するという協会からの情報以外は何もわからない。聞き込みをしたいところだが積極的に動きすぎると先刻のような不審な輩を呼び寄せてしまう可能性がある。
「情報得るときはこっそり、まとまらず活動するべきだな。」
アルバートの言う通り一人の方が楽だ。もちろんアルバートは最初に提案した。
ただルリがみんなで街に行こうといったので、みんなもリーダーの意見を採用したまでである。確かにそれぞれが襲われたり、さまよっていたりしていたので、今回は少しばかり休んだ方がいいだろう。ルリも自覚はないがずいぶんと体力を消耗している。
五人はメインストリートの市場にやってきた。緩やかなカーブがこの街の入り口たる海岸まで伸び、今日も何かの特産品を運んできたのか大きな帆船が帆をたたみ港に停泊している。市場と港を行きかう業者、観光客、この町に住む人々の声であふれていた。
「ああーきれいな街ですねぇ。」
「ここは他国との貿易で発展した街ですからね。街の建造物の技術も独自性を保ちつつ諸国の知識を有効活用しているとか。中でも、あちら。」
郊外の岬の先、白いチャペルをオーギが手で示した。その清廉で堂々たるたたずまいは先に三人が来た時も目に映ったが、今日は天気がいいおかげか以前にも増して輝いているようだった。