凄腕占術に夢中…の3
ラルドの白の港街。その大通りから外れた少し安い出張者向きのホテル。リゾートホテルに入るにはボロボロになりすぎていたので、ある程度グレードを落とした結果である。
ルリはホテルを出てアルバートが連れてきた新しい仲間とついに対面をはたした。
「巫女様、お会いできて光栄です。私はオーギ・アエロ・ハルピュ・ド・モーキンです。縮めてオーギ・ド・モーキン。今までは巡業をしていました。これからは私の力をぜひご活用ください。」
ルリを縦横2倍にしても足りないぐらいに見える大男のオーギがお辞儀をすると、ルリの目線の位置まで頭が下がる。二人目の魔法を使える者だ。
「オーギさん、こう言っちゃなんですが…」
あの砦の地下でフリティアとセットで発見されていたキーウィが手を上げて彼に問う。
「神官の割にはなんだか、戦士のような体つきですね。」
アルバートが彼の正体に気づく前に激しく抵抗しなかった、その場から逃げ出せなかったのにはこの理由がある。オーギは自身を神官だというが、どう見ても筋肉が有り余っている。贅肉など微塵も感じさせない密度の濃い筋肉が鎧のように彼を包んでいる。一般的な神官見習いは魔法の扱いに長けた、線の細いおとなしい者が多い。
「いやぁ、すごい。」
キーウィが感心しながらオーギの筋肉を不躾に叩く。オーギの方は特に気にする風でもなくただ穏やかにキーウィの疑問に答えた。
「回復役、衛生兵というのは他の誰よりも健康でなくてはないですからね。医者の不養生なんて言っていられませんよ。」
健康的過ぎる。
ようやく四人目のお供が揃った。この街にある聖域を探さなくてはいけない。
がその前に。
「そういえばティア、私達が探していた人たちは?」
「俺たちが見つけておいたよ。」
ーー一箇所に閉じ込めておいて、室内に睡眠ガスを流し込む。即効性はないのであの男は時間を稼ぐ必要があった。三人一度に捕らえると脱出されてしまう可能性もあったので、抵抗されても問題なさそうなルリを残し、二人の戦士と遠ざける作戦であったようだ。
だが結局のところルリの秘められた力が暴走し、別のところにいた仲間を呼び寄せてしまい、自分のしでかしたことも一部は暴かれてしまった。
男は逃げるしかなく、ほどなくしてアルバートとオーギは囚われた人々を見つけることができた。キーウィは眠りこけていたが、フリティアは這いつくばって朦朧としていた。
砦の地下はあの男がやったのかところどころ改造されていて仕掛けが用意されていたのだが、ルリのお供たちは彼女が寝ている間にそれらのほとんどを力技で解除した。それだけ暴れたので人が集まってきて事件が発覚したのは言うまでもない。こっそりルリをフリティアに任せて、男三人と若者たちは警吏から事情聴取を受けていたーー。
それが昨日までのことのあらましである。
「よかった。」
ルリは他人の無事をきいて、ほっと胸をなでおろした。
「お前が危ない目にあっちゃ意味ないだろ。」
「そもそもこうなったのも、もとを正せばあなたが他のパーティにちょっかいを出したからでしょう。」
フリティアは呆れているアルバートに挑みかかる。
「お二人共。結果的に私も合流できましたし、皆無事に戻ってこれたのですから。」
過去のことは水に流そうと、オーギはおおらかに語った。