凄腕占術に夢中…の2
目がさめると、自分が今ベッドの上に横たわっていることにルリは気づいた。クリーム色の部屋に朝日が差し込んできて明るい。
誰かがカーテンを開けてくれたから、その拍子に目を覚ましたのだろうか。
「ん…」
しばらくルリはその場から動かなかった。なにせ驚くほど枕が柔らかく、羽のように軽い掛け布団が暖かくて気持ちがいいのだ。
しかし今はなぜベッドの上にいるのだろうか、間の記憶がなかった。
(たしか、私は…ティアとキーウィと砦の地下に行ったはず…)
ルリは飛び起きた。
「ティア!キーウィ!」
「おはようございます、ルリ様。」
まるで使用人のようにルリの部屋のカーテンを開けてせっせとお茶くみをしているフリティアがいた。
確か、地下に潜り閉じ込められたと思った後、謎の男が現れた。その男の案内に従い、暗闇の中を進んでいるうちに、後ろからついてきていたはずの二人がこつ然といなくなった。慌てたルリが案内された先には…。
(だめ…思い出せない…)
「お目覚めの一杯はいかがですか?」
フリティアが以前と変わらない表情で悩むルリに紅茶をすすめる。
「甘いのがいいです…。」
「かしこまりました。」
フリティアは角砂糖をコロコロとカップに入れ、かき混ぜながら溶かした。
「はい、どうぞ。」
差し出されたティーカップを受け取ってルリは口をつけた。
「…ここはどこなの?」
「ラルドのホテルです。」
いつの間に?ルリは紅茶を飲んでもまだ少し混乱してるようだった。
ベッドから這い出ようとしたとき、自分が着慣れていない寝間着姿なことに気づく。
「……あれ、ティア。私…」
「私の手でお着替えをせさせていただきました。ええ、私の手で。」
清々しいほど爽やかな笑顔で満足そうなフリティアである。ルリは複雑な思いを顔にだしたが、ひとまず彼女も、仲間も無事なことを喜んだ。
「ルリ様、御髪を整えて差し上げますわ。さ、鏡の前に座って。」
「待って、待ってティア。私は自分でできますよ。」
「まあまあ、そんなことおっしゃらずに。せっかく気持ちのいい朝なのですから。」
せっかく、の意味はわからないが、フリティアの意志を汲み取ってルリはちょこんと鏡台の前についた。
フリティアは鼻唄を歌いながら普段斧を奮っているとは思えないほどの細く白くきれいな指を、ルリのつややかな黒髪に通してくる。
「私はクセ毛ですから、ルリ様のようなきれいな髪は羨ましいですね。」
褒められると少し照れてしまう。
「ティアも、その、大人っぽくてきれいだと思いますよ。」
「っう!」
不意の言葉にフリティアは鼻を抑えた。
二人きりの時間を過ごしていると、突然ドアが叩かれる。
「おーい、まだかー」
ルリはその声に驚いた。フリティアの手が一瞬止まってしまったこともあり、ルリがその場から入り口までかけていく。
ルリはドアを勢いよく開いた。
「お、準備できた………いや、まだパジャマじゃんかよ。」
「アル!」
たった2日3日離れていただけなのに随分会っていない気がした。ルリは飛び跳ねる。