凄腕占術に夢中…の1
アルバートとオーギは複数のランプをともし、地下牢の廊下を探索し始めた。
とは言っても、途中で石造りの壁に阻まれておりルリからそれほど離れることなく廊下が終わってしまう。
「この向こうでしょうか?アルバートさんの言われるお二人がいるのは。」
オーギが壁を指でコツコツと叩いた。アルバートはルリの周りで床の石の継ぎ目を探している。
一緒にいた二人が突然消えた、という線で探し回っているのである。そのために考えられるのは、落とし穴など何かの仕掛けが作動したと考えるほうが自然である。聖域に入ったときのように亜空間にとらわれられた可能性もなくはないが、ルリがこちら側にいる以上、魔法を使えない二人もこちら側の何処かにいるはずだ。
這いつくばって石畳の隙間をなぞる。
「さすがに落ちたってことはないか…。」
となると壁である。
「オーギ、さっきの爆弾みたいなもので壁は壊せないか?」
「まだありますが、地下で使えるようなものでは。」
それもそうか、とアルバートは納得した。地道に抜け道、隠し通路を探すしかない。ルリだけがこちらに連れてこられた場合は。
空間転移の魔法道具は存在するらしいが、当然高価なもので、資産家の魔法使いなど地位も財力も実力も何もかも備えているものにしか使いこなせない。あとはそれを作り出した研究員たちだけである。
いよいよ手詰まりになりそうになる。アルバートは悩みながら鼻をすすった。
「…?」
不思議そうにあたりを見渡し始めたアルバートにオーギが気づく。
「何かございました?」
「いや、なんか…」鼻をスンスンと廃砦のこもった臭気の中から何かを嗅ぎ分けるかのように頭をそこかしこに動かす。
「臭わないか?」
意外なことに死臭はそれほどしないのだが、埃っぽくてあまりそういった他の匂いが存在するのかはオーギにはわからない。
「すこし、甘いような…」
「ルリ様のものでは?」
「そんな優しい感じじゃねえよ。」
世が世なら男二人でとんでもないセクハラ発言である。
「んん…」
アルバートはウロウロと動き回り壁に鼻をくっつけた。
「……ここからだ。」
アルバートは大きく呼吸したあとに、頭を抑える。
「オーギ、ここの壁壊すの頼めるか?」
「ええ、お任せください。」
アルバートは彼が爆弾を使うものだとばかり思っていたのだが、そんなことはなく、河の泥を吹き飛ばしたときのような、今まで何度か披露した正拳突きの構えをとった。
「破ァッ!」
まるで自身のように砦全体が振動したようだった。
壁の向こうに小部屋が現れた。