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スクセの巫女がチョロすぎて…  作者: アホイヨーソロー
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危急存亡の秋…の15(終)

 巫女は瞳をとじ、体から力がぬけた。くったりとしてまるで事切れたかのようだが、アルバートが耳を済ますと吐息が聞こえてきた。ひとまずその寝息のような息づかいにアルバートは胸をなでおろす。

 自分もだいぶ体に傷がついた。聖なる加護がこれほどまでに攻撃的になるとは、やはりマナというのは得体のしれない、人智を超えた存在であるようだ。

「……しかし、二人は本当にどこいった?」

 アルバートは暗い廊下を見渡す。ルリが首にぶら下げていたライトのおかげで多少の視界は確保できていた。

(俺が渡したライトか…)

 彼女の身を起こして壁際に引き寄せようとするが意識を失っていても加護によって守られているらしく、少し手に触れただけで激しい痛みがアルバートを襲う。だが先程の荒れているときほどではない。

 しかたない。

 アルバートは倒れているルリの真横に膝を立てて座った。

「ルリ様!トロスさん!」

 野太い声と地鳴りがルリに向かってのまっすぐに近づいてきた。アルバートはナイフの柄をしびれる手で強く握りしめる。

「逃げられたか。」

 オーギが一人でこちらについたことから察することができる。オーギも面目なさそうに頭を垂れた。

「申し訳ない。私が崩した床の瓦礫の山を登られ地上に出ていってしまいました。それで、ルリ様は…」

「気を失った。マナの暴走ってのは体力を食うんだな。」

 ふむ、とオーギもルリの傍によって手を頭の上にかざした。何かを唱えながら手を額におろしていく。

「あっ、あぶな…」

 ところがオーギは痛そうな素振りを全く見せない。それどころか、そもそも加護が発動している様子もなかった。

 しばらくの間オーギは一言一言、アルバートにはわからない言葉をつぶやきながら瞳を閉じる。アルバートは遠くから聞こえてきたのか何者かのささやきを感じて、オーギのなす事を見届けていた。

「うむ。これで彼女のマナの乱れは一通り落ち着きました。」

 オーギはそう言って手を離す。

 ルリは先程よりも静かに寝息を立てていた。

「………悪かった。」

「はい。私も途中からもしやとは思っていましたが、確証が得られず。」

 アルバートが警戒しすぎていなければ、もう少し早くここにたどり着けたかもしれない。

「ですが、トロスさんの判断ももっともです。まずはルリ様をお守りしなくてはならないですからね。」

「……アルバート。」

 オーギはそうつぶやいた男の顔を見た。どこか捻くれているようにも見えるが、心の強い男を感じさせる。

「俺はアルバート・ロス。騎士をやってる。」

「そうでしたか。ようやくあなたの正体がわかって安心いたしました。これからよろしくお願いします。」

 二人はその場で握手を交わした。

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