危急存亡の秋…の14
オーギの一撃は空を切った。ハツネは思った以上にすばしこく間一髪で逃れる。オーギは追撃を続ける。この男は動けなくして捕らえる外ない。
流れるような身のこなしでするりと窮地から抜けでてしまう。ただ何か動きに不自然さがでていた。
オーギは丁寧にドクロを避けながらハツネとの距離を詰めていく。だがあと少し、というところで必ず高速で逃げられてしまう。捕らえられないほどの速さ。この逃げ足を生み出しているのは何なのか。
「ぬうっ!」
捉えたと思ったらもうその場にはいない。まるでイタチのようにチョットした隙間を見つけて逃げてしまう。
遠くの暗闇から叫び声が聞こえてきた。
「ルリ…!」
アルバートは彼女に正気を取り戻させようと試みている。顔に水筒の水をかけたり、チカチカとライトを当てたり、じたばた暴れるルリに、身に降りかかる苦痛をなんとかこらえながら懸命に声をかけ続けていた。
いつものちょっとした感情の高ぶりではない。
「…大丈夫。もう大丈夫だから。」
アルバートはボロボロになりながらおとなしく話しかけた。キーウィとフリティアに何かあったに違いない。二人を見つけなくてはこの叫びは止まないかもしれない。
「二人は俺が見つけるから。大丈夫だ。」
巫女の頬に涙が伝った。
「二リ…ドこカニ………」
「たぶん直前まで、一緒だったろ?」
暗雲が立ち込めてからそれほど時間は経っていない。
「なら、そんな遠くない。二人を見つけてこんなとこ出ようぜ。やることないだろ。」
一人合わせたいやつもいるんだ、とアルバートは笑った。オーギは味方だった。アルバートはようやく察せた。さっさとわかってたらこんなことにならなかったのだが…。
「……アル…?あルバーと?」
目に光が戻ってくる。
「待たせたな。」
アルバートはしびれる手のひらをルリの頭に乗せた。