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スクセの巫女がチョロすぎて…  作者: アホイヨーソロー
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危急存亡の秋…の13

 その男は管理するのが好きだった。持ち物には全て名前を書き、取り出した道具は必ず同じ場所に戻す。両親から10歳のプレゼントでもらった初めてのペットのハムスターも、専用のケージを買い環境を整え、エサは尽きることなく惜しみなく与え続けた。

 だがしかしこのハムスターは2年目持たずに死んでしまう。彼は別れの寂しさと悲しみを覚えたが、すぐにこの時の失敗を考察し次に生かそうと決意した。こうして次にはお金のかからないその辺りからとってきた昆虫を飼い始める。

 小動物が昆虫に、昆虫が小型犬に、小型犬から熱帯魚に、熱帯魚からカメに、カメから…とにかくいろんなものを飼って、管理を楽しんでいた。そして馬を飼ったのち、突如として子どもを飼いたいと言い出した。だがこれが難しい。飼わせてくれる人の親がいない。誘拐などはもってのほかだ。彼は管理がしたいわけであって罪を犯したいわけではない。両親は結婚すればいいと助言を与えたが、そうではない。結婚したら管理するものが増えすぎてしまう。子どもが管理できればいいのだ。そして彼は教師になった。

 だが、これが思った以上にうまくいかない。初等教育の段階の好奇心旺盛な子どもたちを自分の力では制御することができなかった。

「もう少し賢い生き物がいい。」

 そうして彼は教師の資格を投げ捨てて街を飛び出した。途方に暮れていたところに、ある者から新たな助言を授かる。

 彼は制御しやすい若者を飼うことを選んだ。好奇心は旺盛だが、知能もあるので聞き分けはいい。そのくせ撒いた餌に食いついて簡単に誘導できる。しかも反応は多種多様で、管理のし甲斐があるというものだ。なに、失敗しても次に生かせばいいだけだ。

 ハツネは管理が好きであっても、下手であった。

「…これは…。」

 オーギはその薄暗い部屋で茫然とする。

 あまりにも多くのしゃれこうべ。山積みにされているわけではなく、一つ一つきれいに床で一列にさせられていた。

「ルリ!ルリ!落ち着け!」

 あまりにも異様な光景を目の当たりにして絶叫し続ける救世の巫女。自分と一緒に来た男は間違いなく彼女の名を叫んだ。

「トロスさん!あなたは彼女を連れて別のところへ!ここは私が引き受けましょう!」

 オーギは先端の丸い鋼鉄のついたメイスを片手に構えた。

 自分に向けられた敵意に目の前の腰の曲がった男はすくみ上ってしまう。

「なっ、なんです!?あたしはここの管理を任されてるものです!突然天井突き破って、役所に届けますよ!」

 このドクロの葬列を見て平然としていられる男が、なぜまっとうそうなことを言っているのか。

「ルリ!しっかりしろ!キーウィとフリティアはどこだ!?」

 一緒についていたはずの二人が見当たらない。巫女は今にもすべてを無に返しそうな邪気を放っている。憤怒と慟哭が同時に彼女を襲っているようであった。アルバートは、ルリの体を抱きとめる。

「がっ!」

 一段と邪悪を払いのける力が強い。身構えて飛び込まなかったら失神してしまいそうなほどである。だがまずは彼女をここから引き離さなくてはならない。聖なる守りが自分の身をどれほど痛めつけようとも、アルバートは奥歯を食いしばりながら彼女を奥へ、遠くへと押し込んでいく。当然のように暴れ、アルバートの全身が切られたような細かい傷だらけになっていく。いまだかつてないほどの巫女の力であった。

 オーギは砦の管理者を名乗るハツネと対峙していた。男はどうして自分が責められているのかわかっていない様子であった。

「仔細はまた後ほど。今私はあなたを取り押さえねばなりません。」

「なぜです?そんないわれはございません!」

 明らかな人骨の群れを前にして、これについて何の事情もないなどは通用しない。オーギはすり足をしながら震える男へとにじり寄っていった。

 確実に部屋の隅に追い詰め、相手が慌てている。だが、男にも対抗策はあった。

「それっ!」

 懐に持っていたライトをオーギの目元に向けて照射する。しかしオーギは瞬き一つせず、鬼の形相でメイスを振りかぶった。

「我歩むところ光あり!目くらましなど効きはしません!はああああっ!!」

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