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スクセの巫女がチョロすぎて…  作者: アホイヨーソロー
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危急存亡の秋…の12

「見えた!」

 騎手は急かされ荷馬車は砦を目指す。

 激しい揺れももろともせず、男たち二人は天幕から顔をのぞかせながら上空に広がる暗雲の下を捉えた。

 もはやアルバートは、オーギが何者であろうとかまっている暇はなくなった。一度激しい空の乱れがあったが、今度はもっと深刻な様子である。

 アルバートが運転手に行き先の急変更を告げるよりも先に、オーギが身を乗り出して手を前へ差し出した。

「行き先はあちらへ!急いで!」

 鞭がしなり馬車は加速する。

 二人はお互いの目的もはっきりとしないまま、同じ地点を目指していることに気づいた。だがお互い多くは語らず、ただ黙って馬車に揺られて行く先をじっと見つめていた。

「砦前まで突っ込んでくれ!」

「お客さん、そんな無茶な!」

 にぎわう市場を突っ切れ、と客から脅された運転手。この男、存外肝の座った人物だったようで、相手の必死さと引く気配のなさを感じ取ると手綱を握り直し、ムチを奮った。

「往来の皆々様!そこのけそこのけお馬が通りますよ!」

 馬車は眼前の不吉な砦に向かって一心不乱に進んでいった。

「馬車がつける限界まで近寄ってくれ、駄賃はここん中においとくぞ!」

 運転手は言われたとおり、馬車をギリギリまで寄せてUターンさせた。アルバートとオーギは袋に入った金貨を残し、荷車の後方が砦を向いた瞬間、飛び出していった。

 このときの出来事を受けて、この馬と荷車の間に乗り越え防止用の柵が作られたのは言うまでもない。

「なんと禍々しき…急ぎましょう!トロスさん!」

「とっくに急いでるよこっちは!」

 ここまでくると二人は薄々気づいていた。お互いの目的が全く同じことを。だからなんの言葉もかわさないにも関わらず、凶兆の出処を一瞬で突き止められた。

「この下か!」

 アルバートは下階に降りる階段を探して駆け出す。だがオーギはそこでアルバートの肩を掴んだ。

「っ何!?」

 あまりの握力に上半身が瞬時に固定され、走っていた足だけがふき飛びそうになる。

「時間がありません、ここから行きましょう!」

「はっ!?」

 オーギが懐から取り出した小型の丸い物体。マジックアイテムよろしく、きちんとどこかの企業のロゴが入っている。

誰もいない部屋の床に狙いを定め二、三個その球体を転がした。

「離れて!耳を塞ぎ床に伏せていてください!」

 オーギが叫びその豪腕でアルバートを押し倒す。

 爆発音が廊下の端まで響いた。

 二人が中を確認すると煤と煙が充満していて、床が少し崩れていた。

「壊せてないじゃねえか!」

 焦ってアルバートが叫ぶがオーギは冷静であった。

「いえ、ここまで崩せたのなら!」

 崩れた床のそばに立ちオーギは拳を構えた。

 ゆっくり腰を落とし深い呼吸をする。

「破ァッ!!」

 床が轟音を立てて抜けた。アルバートはそれと見るとオーギよりも早く下の階に飛び込んだ。オーギもそれにすぐ続く。

 荒ぶる半狂乱の巫女。

 二人が探していた人物が無数の朽ちた骸骨の中心で叫んでいた。

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